噴火直前
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『キィィィンッッッッ!!!!!』
大河の一刀目は敵によって綺麗に封じ込まれた。
(まずは一つ、俺の動き、剣の出についてこれるということ。 更にもう一つ、まるであわてふためいてないこと。 敵は冷静沈着。 であれば…………)
「大地!」
大河が合図を出す。 大河が敵の裏に回る………と同時に、敵の正面から大地が照準を合わせて引き金を引く。
(もし自らの命を懸ける場面において、至近距離と少し離れた位置の二手に危機が迫っていた場合、大抵の人間がまずは近いほうを見る。 つまりそれは今の場合は俺だ。 敵の武器は剣1本。 俺の攻撃と大地の攻撃、両方は受けられないということになる。 こいつは戦闘が始まってまだ一歩も動いていない。 さて、どう動く………? )
「…………ふん。」
敵が防ぎにいったのは大地の銃弾。 つまり大河の方は無防備な状態だった。
『キィィン!!』
「はぁぁあ!!」
敵が弾を防いだのと同時に、大河が背中を切り裂く………と、大河は思ったが、そう上手くはいかなかった。
「はっ!!」
敵がはじめて動いた……といっても、太刀を避けるためだけに体をひねってかわしただけだったが。
「次はこうだ!」
『バンッッ!!』
間髪いれず、大地がもう一度同じ場所から敵を狙い撃つ。
(さっきと同じじゃ意味がない、どう動くか、俺がこいつを試す!)
大河は縦に斬るのではなく、太刀を横に振った。
(もし相手がまだ体を大きく動かさないなら、この太刀筋なら確実に入る……。 次はどんな動きをする!)
「でやぁぁあ!!」
「!?」
これまで静かだった敵が突然大声をあげて動いた。 敵は大河の想像よりかなり大きくその場で跳躍し、銃弾も大河の太刀もかわした。 それまでのほとんど動かない敵を見ていた大河は、 その動きの変わり様に一瞬立ち止まってしまった。
(どちらにも対応が出来なくなっらその場から消える。 普通に考えればごく自然なことだが、俺は心のどこかで何故かこいつが同じ場所に留まると勝手に頭で思い込んでいた………。 だが、浮いてるならこっちのもの!)
「はぁぁぁ!」
「ふんっ!!」
『キンッッ!!』
大河が敵の真下から切り上げた太刀と、敵が防ぎにきた剣が再度ぶつかる。
(よし!)
大河は、かなり高い跳躍ができる身体能力から、敵は真下からくる太刀も防ぐことを予測していた。 そこからつばぜり合いへと持ち込む。
(そういうことか、大河……)
『バンッ! バンッッ!!』
合図を出さなくとも、大地は大河の意図を把握したらしく、二発続けて撃ってきた。 当然、敵は弾をやりすごすためにまた避ける。 そこが二人の狙い目だった。
(まだ見せてないし……初弾くらいかかってくれるだろう!)
大地が撃った弾は直線でとんできておらず、左右両方に曲げていた。 つまり、どっちに避けようが当たる可能性を作ったのだ。
(敵は大地がどこに撃ったかを見れていない。 つまり、銃声がしたなら、必然的に自分にとんできてると考えてどこかに避けるはずだ。 ジャンプして避けるなら、この距離なら俺が斬る。 左右なら銃弾があたるはず。 策にハマれ……!)
「はぁ!!」
敵は大河の太刀を受け流しながら、左に跳んだ。 ぴったり銃弾の飛んでいく方向………!
「!?………ふんっっ!!!」
一瞬自分にとんできた弾に驚いた様子を見せたが、大きな体に似合わぬ俊敏さで、綺麗に弾いていた。
「………貴様ら、なかなかよい動き、よい連携をする。 戦闘は経験が少ないときいているが。」
唐突に敵が口を開いた。 その場に流れていた勢いが収まる。
「ああ。 実際に戦いにくるのはこれが初めてだ。」
二人も一度動きを止め、大河が口を開く。 この戦いでの疲れはまだ全然なかった。
「その様子からすると、私の動きを観察していたと見てとれる。 しかし、そんな時間は貴様らにあるのだろうか?」
「なに? まだ二分だ。 急がなきゃいけないのは確かだが、切羽詰まってる状況ではない………」
「大河、急いで逃げろ!」
大河が残りの時間を話していると、宗次郎の焦った様子の声が聞こえてきた。
「どうした、宗次郎。」
「噴火活動の挙動を見せたときには残り時間が多少あるように見えたが、火山がもう爆発する! 早く走れ!!」
「なに!?」
それまで戦闘に集中していた大河が改めて火山を見る。 噴火口からはもうもうと煙が立ち込めていた。
「ちょっと待て、もう間に合わねえ!」
「そいつとの戦闘を切り上げて、早く戻ってこい! そいつも死にたくはないはすだ。 話せばなんとかなるかもしれない!」
宗次郎も今出せる限りの案を出す。 今から助けに向かっても噴火に巻き込まれて救助どころではない。 離れたところで話すしかない自分を、宗次郎は恨んでいた。
「ああ、くそ! 分かった。深く考えてもこの状況じゃ何もできねえから、こっちで無理やり何とかする。そっちから助けよこすなんてするなよ!」
「………すまない大河、頼むぞ。」
最後は少し暗い口調の宗次郎との会話を終わらせ、敵と向かい合う。
「じゃ………話し合いといきましょうか。 絶体絶命の環境下、で。」
~ほぼ同時刻~
「ちょっと! どういうこと!?」
二人と離ればなれになってしまった後、襲ってくる敵を倒していた裕希は、凛からの連絡にかなり驚いていた。
「突然のことでよくわからないかもしれないけど、 そこの火山はもう爆発する。 だから、早いとこ敵をやり過ごして脱出して!」
凛も時間の無さから、単刀直入に結論を話すしかなく、それが余計に裕希を混乱させていた。
「待ってよ! まだ大河たちと合流できてないから、二人を探さなきゃ!」
二人の行方を知らない裕希は、二人の安否が第一に心配だった。
「二人なら別の場所で戦ってる。 二人は今地上にいるから、裕希たちも早く地上に出てすぐにそこから逃げて。」
「二人を置いていけない! そっちに向かうって伝えて!」
「大丈夫だから。 それに、二人の居場所が正確にわかってなくて、裕希たちを案内できない。 だから、素直に戻ってきて。」
「でも!!」
「裕希!! …………助けにくるなっていうのは、大河の意思でもある。 分かって。」
時間がない、味方の居場所も、助かるかもわからない。 そんな現状が、二人の会話から余裕を奪い、ただの強い言い合いになってしまった。
「………分かった。 私たちは抜け出し次第、そっちに戻る。 噴火がどの範囲までか分からないのなら、凛も注意してね。」
「うん、大丈夫。 無事に戻ってきて。」
会話を中断。
「はぁ………。」
裕希の口から一つため息がこぼれた。
「桜、凛の声、聞こえてた?」
裕希が今のやり取りを共有しているのかどうかを問いかける。 時間の無い今、もう一度内容を確認するかしないかは重要になる。
「う、うん。 聞こえてたよ。 とにかく、早くここから出よ?」
「そうだね。 大河たちも心配だけど、私たちも人のことばっか言ってられないから。 」
二人が話していると、新たな敵の小隊が出てきた。
(一つ一つ、 切り抜けなきゃ!)
裕希は、自分の取り柄である明るさを無くしたくはなかった。
35話を読んでいただきありがとうございました。
もう少し続きますので、よろしくお願いいたします。




