タイムリミット
『バババババババババッッッッ!!!!!!』
「くそっ! 結局いるのかよ!」
各自バラバラに跳び、敵の奇襲をなんとか凌ぐ。 どうやら敵は下から見上げた時の壁の死角にいたようだった。
「皆!一度通路にもどれ!壁の上なら降りてこれない!」
「逃がすな! ここで撃ち殺せ!!」
大河が皆に声をかける。 と同時に、敵の追撃を指示する声も聞こえてきた。敵の銃撃は止まらず、俺らは防戦しながら一度退くしかない。
「裕希!今だけ全力だして走ってけ! 桜! お前も剣伸ばして逃げられるんだから、先に行け!!」
「「了解!」」
『ババババババババッッッ!!!!!』
未だに降ってくる銃弾の雨を避けながら、二人は通路に戻る。 ここで私たちも戦うなんて言われなくて良かった、と大河は少し安心する。
「大地!俺が弾を防ぐから、弾曲げて上の奴等撃ち殺せ!」
「お前が簡単に防げないことぐらい分かってるが、俺だって簡単に曲げて倒せねえんだ! やってやるけど!」
残ったのは大河と大地。 まるで裕希と戦ったときのようだった。
「敵二人逃走! 残り二人の殲滅に入ります!」
「二手に別れて全員仕留めろ! ここで終わらせてしまえ!」
上からは部下と、壁の上で仕切っているであろう声が聞こえる。 普通に考えればかなりピンチなこの状況でも、大河は不安を感じていなかった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
『キンッッッ!!!!!!』
刃と銃弾の当たる時の鋭い金属音が広い空間に響き渡る。
「敵は弾を簡単に防いでくるぞ!あの作戦に移るまで足止めだ!」
(あの作戦……………?)
大河はその言葉がひっかかった。 大地を見ると、同じく不審に思ったらしく、少し悩んでいる様子だった。
「大地! 攻撃しながら後退していけ! 俺もそれに合わせながらお前を守る!!」
「了解。 それより、この状況、退くに退けねえな……………はっ!」
『バンッ……………ギュルルルルルルルル!!!』
「うっ!………ぐぁっ……………」
大地が一呼吸いれて弾を放つ。 大河と大地からの角度だと、下から直線的に撃っても当たらないが、曲げると当然当たる。 本人からしたら難しいのだろうが、端から見たら、いとも簡単にこなしているように見えた。
「残り四、五人か。 大地、通路に戻る前に倒しちまおう。」
大河はその様子を見て、この場をすぐに終結させた方が良いと思った。 大地に提案したが、大地は少し苦い顔をした。
「お前、とことん人に厳しい条件を……。 俺だってやりたいけど、角度がきついんだよ!」
『バンッッ!!バンッッッ!!!』
大地が銃を撃った時、敵の声が聞こえなくなった。
「………いなくなったか?」
大河が敵の気配がなくなったことを警戒しながら聞く。 大地もまだ銃を構えたままだった。
「どうだろう。 途端にいなくなったから、裕希たちを追ったと考えられるが……。 でも、さっきは二手に別れてって言ってたんだよな。 どうしたんだろうか……。」
『ウィーーーン! ウィーーーーン!!』
二人が考えていると、突然巨大なサイレン音が響きだした。
「くそっ、次はなんだ!?」
「考えるのは後だ大地! 通路まで引き返すぞ!!」
『………バンッ!』
二人が走って引き返そうとしたが、その目的地は固く閉ざされてしまった。
「閉じ込められた!?」
大地が動揺を見せる。 普段は大河より冷静な大地が先に叫んだというのは、かなり焦っている、と大河は理解した。
『………ガシャン!!!』
大河、大地が周りの出来事に反応出来ていない中、更に謎の動きが起きた。
壁にあるドアが開き、謎の人物が入ってきた。それと同時に、大河たちが立っている場所が動き始め、地上に向かい始めた。
「なんだ? 地面が動いてる!?」
「これは………天井で潰されるのか? いや、なんか変な奴も一緒にいるから、それはないか……。」
二人が更に戸惑う。 お互い少しでも冷静さを保とうとするが、次から次へと起こる現象についていけていなかった。
「大地、落ち着いていけよ。 ここまで集団で攻めてきたのに、あの敵は一人だ。 恐らくここのトップなんだろう。」
大河は先程からかなりの動揺を見せている大地を落ち着かせるため、敵がどんな人物なのかを予測して伝える。
「あ、ああ。 少しは落ち着いた。 見た感じ普通の男だが、一体何がある………?」
大河が声をかけると、少しは冷静さを取り戻したのか、大地はいつもの様子に少し戻っていた。 既に銃は両手にある。 大河も太刀を離さなかった。
「大河!」
二人が敵の動きに警戒していると、凛から連絡が入った。
「そっちは今どんな状況?」
大河は敵の様子を今一度探ってから、返事をした。
「とりあえず桜、裕希と二手に別れる形になっちまってる。 それと、なんかよくわからねえことが連続して起きてる。 立っている場所が上昇して地上に向かってるし、俺と大地だけじゃなくてよくわからない男も一緒にいるし。 今どうなってんだここは?」
「人が一緒に……………? どういうことだろ。 とにかく、先におじいちゃんから伝えなきゃいけないことがあるらしいんだ。 変わるね。」
凛が告げると、これまで気配もなかった宗次郎の声が聞こえてきた。
「大河、覚えてるだろうが、その場所は活火山のすぐ隣。 その火山、昨日までは反応がなかったのに、いきなり噴火活動が始まってる。 それもかなり激しくだ。 簡単に言うと、強制的にタイムリミットが設けられた。」
「嘘だろ!? 噴火って、後どんくらいだよ?」
大河がこれまでよりも更に大きく驚く。 敵を倒す倒さないの前に、早く逃げないと危ないということが分かり、大地以上に戸惑っていた。
「後、十分足らずでそこは危ないだろう。 この急激な活動は、明らかに自然だけの動きじゃない。 恐らく敵は、火山の噴火をコントロールしている可能性がある。」
「噴火をコントロールって、それやって意味あるのかよ。 相手だって逃げられなくなるし、ここら辺の住民逃げられねえじゃんか。」
大河は動揺しながらも、少しでも冷静に頭を働かせる。 一緒にいる相手を見るが、まだ動いていなかった。
「多分、噴火をコントロール出来るくらいなら、もしかしたら噴火で出る煙は難しいにしても、岩やマグマ等の形のあるものまでコントロール出来てしまうかもしれない。」
宗次郎は少し考えにくい仮定を出す。 宗次郎からしても非常に信じがたいものだが、今、敵が他の住民に危害を加えず、何かできるとしたらそのくらいだった。
「いや、それは考えられねえよ。 岩なんて飛び出したら、何処にいくか分からないだろ?」
大河も当たり前のようなことを言う。 これに関しては、普段勉強しない大河も、流石に受け入れにくいと理解できていた。
『ウィーーーン! ウィーーーン!!……………ガシャンッッッ!!!』
二人が話していると、いつのまにか天井は開き、大河、大地と謎の男の三人は地上に出ていた。
「どっちにしろ、今は目の前にいるやつを何とかしないと帰れそうにない。 桜と裕希に、片付き次第すぐさま帰れと伝えてくれ。」
「了解。 そっちの音声は届いてるから、また何かあったら呼び掛けてくれ。 それまで、その周辺がどうなっているかを確認しておく。」
「ああ。 頼んだ。」
宗次郎との会話を一度中断する。周りを見渡すと、どうやら地下だけでなく、地上もその周辺はただの広い空間となっていた。
「貴様ら、私に歯向かう気か。」
突然一人いる敵が大河たちに喋りかけてくる。
「そういうお前はどうなんだ。 俺らを殺す気か。」
大河の手によりいっそう力が入る。相手の冷静さから、これまでの敵と明らかに違うものを感じた。
「そうだな、貴様らが今すぐ降参するなら、私も手を加えなくてよいのかもしれないな。 だが、もし貴様らが何かするなら……」
敵は羽織っていた服の内側から剣を引き抜いた。その後は何も言わない。 俺がとっている行動が答えだとでもいうかのように。
(こいつも武器は普通の剣………? 考えにくいが、実際は……?)
「答えはひとつだ。 こんな最初に立ち止まってられないんだよ、俺たちは。 やらなきゃならねえことがある。 その為にお前を倒さなきゃならねえなら……………こういうことだ。」
大河も太刀を構え直す。それと同時に、大地も銃を片手のみに戻した。 どうやら、大河の援護に回ることを決めたようだった。
「………ならば、来い。」
敵も手にした剣を構え直す。三人の間に、この地で一番の緊迫感が流れた。
「行くぞ、大地。」
「ああ、やつを倒そう。」
大河は一呼吸入れ、敵を見据えた。
34話を読んでいただきありがとうございました。




