初交戦
「よし、こっちだ……………。 静かに動け。 大地、裏はどうだ?」
「異常なし。 進んで大丈夫だ。」
「了解。 凛、こちら施設入口。 これより地下施設内に入るぞ。」
「うん。 入ったらすぐにいるかもしれないから、奇襲に気をつけて。」
特に何事もなく地下施設入口へ。 本当に気づいてないのか、それともわざとおびき寄せているのか。 とにかく進むしかなかった。
「よし、入ろう。」
さらに警戒しながら、施設へと一歩を踏み出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ジェーダ様。 やつらが攻めてきましたが、いかがいたしましょう。」
「そうだな………………これほどまでに素直にやって来てくれるとは思っていなかったが、こうなれば好都合だろう。 あれの用意ができ次第使用して、終わらせてやれ。 私がいるのだから、間違ってもここまで辿り着かせるなよ。」
「承知いたしました。 私にお任せください。 それでは。………………………作戦開始だ。 奴等を仕留めろ。」
謎の男は確認だけとり、部下に連絡した後、一礼して去っていった。
(大河………………………この男、本当にやってくるとはな………………ふっ、でもすぐに終わるだろう。)
「ふふ…………ふはは………ふはははははははは!!!!!!!」
敵のボスと思われる男、ジェーダの高笑いだけが、その広く暗い部屋に響いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よっ……………………と。 しかし、本当に暗証番号一つで入れちまうとはな………………。 セキュリティが出来てんのか出来てないのかわかんねえな………………。」
その頃、大河たちはいとも簡単に入り込み、順調に歩を進めていた。
「今のところまだ見つかってない………………訳はないんだろうが、特に襲われる様子もない。 このまま進むな?」
「うん。 大河のお父さんたちがいるって確証も、いたとしてもどこに捕らわれてるのかも分からないから、隅から潰してくしか方法がないけれど、なんとか頑張って。」
定期的に凛と連絡を取りつつ、施設のより内部へと入っていく。各々に緊張の面持ちが見てとれる。 特に普段騒がしい裕希が静かだと、全体がより静まって感じられる。
(ここまで静かだと、逆に警戒するな…………………。 相手もそんなに奥深くに入れたくないんじゃ。 いや、もしかしたら奥に罠があるとも考えられるか……………。 いまいち読み取れないな…………………。)
大河が少し怪しく思ってきたその時………………
「敵発見! 合計四名! これより殲滅に入る!!」
通路に相手の部下と思われる者が現れた。 その数正確には把握できないが、通路のためそこまでの人数がいるとは考えられなかった。
「来た! やるぞ皆! 伝えた通り、俺と裕希が前に出る!」
大河が最後の伝達を短めに終わらす。
全員がそれぞれの武器をとった。
「了解! 各自のバックアップ、かつ回り込まれないかの確認は任せろ!!」
「私は大地につく! 何かあったら叫んで!!」
大地、桜も、各自の仕事を伝える。 誰が、何をしているかを理解しておくのはその後の行動にかなり影響してくる。
「凛!聞こえたろうが、戦闘開始だ!!」
「分かった。 敵勢力を把握でき次第伝えるから、さっきいった通り暴れて!」
「了解………………にしても、やりにくいなこの微妙な広さは!」
それぞれ位置を確認する。 大河、裕希が前、その裏に桜、更にもう一歩引いて大地が控えていた。
「いくぞ、裕希!!」
「うん! 任せて!」
少ない口数で息を合わす。 今後も先陣を切るのはこの二人だと決めていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
裕希が戦闘モードになる。 物凄い速さで動き回り、敵の目を撹乱していた。 広いとは言えない通路のため、すばしっこい動きはどうしても捉えきれてないようだった。
「くそっ!なんだこいつ。 速すぎるだろ!?」
「うろたえるな!この程度の速さは想定に入れていただろ! とにかく一発入れろ!!」
「そんなこと言ったって、速さは想定したけど動きまでは…………………う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
『ザシュッッ!!バシュッッッッッ!!!』
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
裕希の連撃が面白いように入る。 敵
が裕希にこの速さを与えたので、速いってのは当然知っていたのだろうが、速度より裕希の動きにうろたえている様子だった。
「まだまだこれから!!!」
「総員、退くなよ!?上からの命令だ。 絶対にここで食い止めろ!!」
「そのレベルの連携で私たちを止められるわけないでしょ!! 私たちだって無駄に引き込もってたわけじゃないんだから!!」
「そいつ一人ぐらいならなんとかなる!!残りの奴等をそっちでたの……………………ぐあっ……………」
「…………………………誰がそっちは頼んだ、だ? 思い通りに運ばせる訳ねえだろ。」
大河の太刀一閃。 敵は声を出す間もなく崩れ落ちていった。
「そこだ!裏が空きまくりだぜ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
大河の背後から敵が斬りかかってきた。 大河はガードの姿勢すら見せない。 それもそうだ。 剣が横から伸びてくるって分かっているのだから。
「な、なんだっ…………うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
桜に斬られる……………というより、貫かれて、その男は少し遠くに吹っ飛んでいった。
「サンキュ、桜。」
「大丈夫。 背中は任せてね。」
(にしても敵の武器……………………あれはボルトニックじゃないな。 ここには無いのか、もしくは使えない理由でも…………………。)
敵と交戦しながら、大河は敵の武器に対して考えを巡らせていた。 敵の武器は予想と違いこちらと同じ普通の銃や剣。 大河の予想としては、もう少しガードが堅く、少人数で撃ちまくってくるものだったのだが、どうやら違ったようだ。
「大地、敵の武器、何故だと思う。」
一度退いた大河が聞いた。 正直今の戦闘は大河が出る幕も無く、裕希と桜でなんとかなってしまう状態だった。
「そんなの簡単だろ。」
「え?」
「いや、この狭さで撃ったら敵すら感電だ。ちょっと照準ミスったらお仲間同士でパーだろ。」
「なるほどな。 敵って、防護服とか無いのか?」
「あるんだろうけど、あんまりそれも出したくないんだろ。 こっちに倒されて服持ってかれちゃ技術がバレるわけだし。」
「ああ。 そう言うことか…………………で、合ってるか、凛?」
大地とも話をしつつ、情報を集めるべき存在の凛にも話を振る。 凛とは音声だけ繋がっているので、敵の状態等はこちらから伝えなければならない。
「まあそれしか考えられないよね。 これからも狭いところは普通の銃や剣で襲ってくると思うよ。 …………………でも、服の技術もなにも、もう少ししたらこっちでも作れちゃいそうなんだよね。」
「あ、そうなのか。 あの施設も何をどうやって作っているのかよく分からないな………………。」
「ふふっ。 そこら辺は後で話せるかもね。 だから、早いとこ片付けちゃってね。」
大河が少し苦笑いしながら返すと、凛も笑って返してきた。 今更ながら、初めて会った時とは大違いだな、と戦闘中なのに少し思い出していた。
「じゃあ、またいってくるな。 大地、頼んだぞ。」
「任せろ。 後ろは気にすんなよ。 俺だって、前から突っ込んでくるのはお前に任せてんだから。」
「よし、了解…………… 桜!裕希!そろそろここを締めるぞ!」
「「了解!!」」
それまでずっと前で戦ってくれていた二人が反応する。 まだまだ元気で、大河は安心した。
(特に裕希は自分のスタミナを気にしてほしいな……………。)
「いや、やっぱり裕希は退け! 体力残しておけよ? …………桜!」
「うん!」
大河が二人のいる場所まで戻ってきた。 敵の数もかなり減っており、もう二人でなんとかなる様子だった。
「そっちだけで話を進めてんじゃねえ!! ここで死んでもらうぞ!!」
「やってみろよ!」
「私たちを止めようと思うなら……………」
「「もう少し強くなって戻ってきな!!」」
大河が突っ込み、桜が少し裏から剣を自由自在に操る。 敵は撹乱させられているどころか、もはや口だけで動きが備わってなかった。
「抑えろ!抑えろぉ!!!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
大河も裕希ほどじゃないが、十分に素早い。 だが、桜が剣を伸ばして敵をぶった斬った方が多くの敵を倒していた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
この通路に残っていた敵が全て崩れ落ちた。 最後の一人まで倒れたのを確認した大河は、一度武器をしまった。
「…………………………戻ってくる命がねえか。」
目の前で倒れた敵を見ながら、大河が一言呟く。
「あっ、大河、今のつまんないよ?」
後ろから休んでいた裕希が冷やかしをいれる。
「はっ。うるせえよ。 ……………………俺らだって他人事じゃねえぞ?」
「……………………………………そうだね。 先に進も?」
「ああ。」
初めての敵との交戦は、それぞれの動きをより理解しつつも、何気にあっさりと終わっていた。
32話を読んでいただきありがとうございました。
もう少し九州編は続きます。




