それぞれの夜を
「そういえば二人で夜までいるなんてほとんどなかったな。」
各自の部屋に戻ると、大地は飲み物を取り出しながらそう言った。
「ああ。 そんなに一緒にいても仕方なかったしな。 あっちじゃ特訓で疲れてたとこもあったし。」
そんな大河は反応を返すも、少し声が低かった。
「……………………どうしたんだ、大河。 お前らしくない。」
「ん? いや、なんでもねえ………………ともいえないな。 てか、そういってもお見通しなんだろ。」
大地には隠しても仕方ない。 そんな諦めの気持ちが混じっていた。
「いや、そのな? 俺たちは明日の夜、また全員でここまで戻ってこれてんのかなって。 当然怖じ気づいてる訳じゃない。 ここまできたからにはやらなきゃならないし、そうしないと何も変わらない。 だが、明日どうなってるかを不安に思うのはある意味当然だろ?」
「まあ妥当な考えだよな。 それに関しては否定しない。」
その考えは大地にもあったらしく、特に驚く様子でもなかった。 だが、その不安によって静かになるような様子でもなかった。
「俺もここに来るまでは不安の方が強かった。 明日からどんな風に動くかも分からなかったし、何よりもうここからは起こったことが全て。 施設のようにシミュレーションはできない。 一発限りの勝負が続いてく。 そこでやらかしたらこの世界とはさよならな訳だ。 特に俺なんか元々向こう側だったんだし、余計に怒りを買ってるんじゃないか? それでもやるしかない。 そうお前とも約束したからな。」
「不安要素は全く同じか………………ははっ。 似てねえようで俺らはどっか似てるよな。」
日頃は前線に立つ組の中心として少し気を張る事が多い大河も、昔からの友達である大地の前では素が出せた。
(他の皆と仲が悪いわけじゃないけど、やっぱり共に過ごしてきた時間が長いと自然とこうなるよな…………)
「おい、どうした?」
「いや、なんでもねえよ。」
そっけなく返した大河の顔は、少し微笑んでいた。
「長く話しても仕方ない。 明日に備えて寝るか。」
「そうだな。 おやすみ。」
今更二人して話し込む話題もなく、自然に眠りに入っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あーーー!お腹いっぱい!たくさん食べちゃったよ。」
「裕希、明日それで動けるの? 一番動けるあなたが動いてくれなきゃ、こっちとしても大変だよ?」
「大丈夫! 寝たら戻るから。」
「そのうち太るよ……………」
部屋に入るなり布団に飛び込んだ裕希と、それをあきれた感じに見つつ静かに椅子に座った桜の何気ない会話に、凛は少々驚いていた。
「裕希はそんなに変わらないけど、桜は裕希相手だといつもと変わるね。」
「そうだね。 基本的に女の子相手だとこんな具合になるかな。 色んな人がいるところとかだと少し落ち着いた感じで話そうって気持ちになっちゃって。」
「私からしたら、今の桜の口調の方が普通だから、大河達の前にいる時のほうが少し違和感あるんだけどねー。」
「私の方が、いつでもどこでも騒がしい裕希よりましでしょ?」
「まーたそこだけ突っ込んで。 私は元気なのが取り柄なの! って、何回も言ってるけどね。」
「でも、なんで学校でも一緒だった大河達の前でも丁寧な感じなの?」
その様子を見ていた凛が考えていたことを聞いた。
「あれ?そういえば…………………なんで私、大河達の前でもああなってたんだろう。」
「なーんだ。 あの二人の前の時は無意識になってたんだ。 私の前みたいにすればいいのに。」
「私自身が考えてなかったからなぁ。 前みたいにしようかな。」
「あっそうだ。 ねえ凛?」
「えっ?どうしたの?」
二人の話をただ静かに聞いていた凛は、突然話をふられて変な声かでてしまった。
「凛ってさ、大河があの施設に来たときどう思ったの? 大地もいない訳だし、大人以外は凛と大河だけになっちゃってたけど。」
「うーーん………………大河にも似たようなこと言ったんだけど、この人正気かなって。」
「本当は失礼なのに、誰が聞いても正しい反応に思えちゃう。」
「でしょ? だから最初は、少し大河とも距離があったっていうか、私と考えが違うんだろうなぁって。 だから、大河に私の過去を話す時も少し冷たく当たっちゃった。」
「ん?凛、昔なにかあったの?」
「あ、話してなかったっけ。 あのね……………………………」
凛は二人に 自身の過去を話した。 二人はかなり暗い表情を見せながら聞いていた。
「凛、そんなことがあったんだ………………。」
「その、なんかごめんね。 私だけ家族がなんだって騒いで…………。」
「そんなに深く考えないでよ。 確かに私も前は塞ぎこんでるとこがあった。 でも、ある意味殻に籠ってた私を少しでも解放してくれたのが大河だった。 大河の言葉に私は救われた。 そこから私は、大河を私より1つ上の人だなって思ってる。 さっきのこいつ正気か?って方じゃなくて、色んな人を救えるんだなって方でね。 あ、でもこんな風に思ってるなんて大河に言わないでよ?」
「別に言おうとは思わないよ? でも、大河がそんなことを出来るなんてね……………って思ってさ。」
「それ、大地も言ってたんだけどさ、大河って学校じゃどんな奴だった?」
「ええっとね………………別に誰かを見下していたとか、何かあっても助けないとかじゃなかったんだけど、とにかくなにかと動いてて、上の人の話は聞かずに、勉強なんかはテスト前のみ。 皆とよく話してたから、周りのことを考えられるのはそこからきてるんじゃないかな。 凛の心も楽にできたみたいだし。 でも、色々と分析してる今の大河を見ると、変わったんだなって私でも思うな。」
「そうだったんだ……………誰から見ても、色んなとこが変わってるんだね。 私もちゃんとサポートしなきゃ。」
「そうだよ! 凛、明日はサポート、期待してるからね!」
「でも、あんまり無理しないでね。 サポートだって色々大変だろうから。」
「ううん。 大丈夫。 精一杯やってみるから。」
凛は桜や大河から話を聞き、逆に桜と裕希は凛の過去を知り、お互いの仲が更に良くなっていった気がした。
「多分向こうも寝てるよね。 私たちも寝ようか。」
「そうだね。 おやすみ、裕希、凛。」
「おやすみー。」
「うん。 おやすみ。」
(友達と同じ部屋で共に過ごす、一緒にご飯を食べたり、理由はあれだけど遠くに来たり………………………これができたのも大河のお陰。 ありがとう、大河。)
電気が消え、部屋が暗闇に包まれるなか、凛の心はほんわかと暖かくなっていた。
30話を読んでいただきありがとうございました。
次話、遂に戦闘です。




