決行前夜
「よっと。」
裕希が最初に機体から降りた。 活発な性格だから、というのもひとつあるのだが、当然それだけではない。 降りたところで隠れてた奴等に狙われた場合、一番逃げられるからだ。
「どうだ?」
宗次郎が聞く。 初めて降り立つ場所で、敵の状態がまるで理解できていない。 少し心配性になっても仕方ないだろう。
「うん。 大丈夫…………………みたい。 やっぱり、隔離エリア外ではなにもしないのかな。」
「さて、どうだろうな…………っと。」
気にかけながらも、大河も降りる。 大地、桜、凛、宗次郎と、それに続いて九州の地を踏んだ。
「それでこっから俺らはどう動けばいいんだ?」
大河はもう一度自分の太刀を見ながら聞いた。いくら交通網が発達したといっても九州には来たことがなかった。 初めての地では対応も難しい。
「そうだな。 今日はもう昼だ。 なるべく相手が隠密に動きやすい夜は避けたい。 明日、朝一番に仕掛けるから、今日はこの近くでこちらが準備してある場所で泊まりだな。」
「この近く? 宗次郎さん。 今日はどんなところで泊まるの?」
裕希が動きたそうに体を揺らしながら質問した。 いかにも見たことのないとこにきた小学生のようで、いつも通りだな、と大河は軽く微笑んだ。
「ん?そうだな。 裕希も喜ぶかと思って、動ける場所も、露天風呂も用意してあるぞ。 というか、普通の旅館を貸しきっただけだからなんだけどね。」
「ホント!? やったー!早くいこうよ!」
(普通の旅館に動けるところは用意されないだろ……………)
大河は苦笑いしながらそう思ったが、裕希がこの調子ならいいか、と思って流した。
「それで、そこまではどのくらいかかるんです? 場合によっては自分がバックからカバーしながら行きますけど。」
次は大地が距離に関して質問した。 まだ少ししか経ってないはずなのに、その言葉にはしっかりと責任を感じられた。
「ここまでの様子を見ると、それに関しても問題はない。 君たちも気づいてるかも知れないけど、実はもう周りにうちの者がいる。 なにかあったらすぐに凛に通知が来るようにしてある。 それまでは普通に歩いてて大丈夫だ。」
「分かりました。 僕なんかよりもよっぽど楽に安全が確保できる状態ですね。」
それだけいうと、また銃をホルダーにしまう。 やけに静かだった。
「じゃ、少し歩こうか。」
そういうと、宗次郎は皆の先頭にたち、大河達を誘導した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はい、着いたよ。」
「おお!おっきいですね! ここならすぐには見つからなそう!」
やはりこれもまた裕希が始めに反応し、次に桜、大地と歩いてきた順に反応を見せる。 大河は結局周りに味方がいると分かっていても、気を抜けずにここまで最後尾で確認を続けていた。
(まあなにもなかったか………)
そう思いつつ、大河も気を抜く。
「それじゃ、とりあえず部屋は決められたところで頼むよ。 なにかあったらすぐに集まってもらうからね。 後はどのようにしてもいい。 あ、部屋は大河と大地、女子たちは女子たちでまとまっておいてよ。 女子たち三人が泊まっても十分な広さだから、夜の間に明日からのことに対して話したいことを話しておいてくれ。」
「そのほうが色々と便利だし、夜まで一緒にいることもなかったしな。 それでいいんじゃないか。」
大河がその意見に乗り、皆もそれに賛成する。
「よし、じゃあ、夜に一度呼ぶまでは自由。 てことで荷物はロビーにおいてもらって、その後は解散! 明日からに備えてゆっくりしといてくれ。」
「はい!」
裕希の声が誰よりも響いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(ふぅ………………流石に明日実戦でのんびりしてられねえよな。)
大河がトレーニングを終わらし、時計を見るとはや7時。 宗次郎に夕食の時間だと伝えられており、それが集まってくれといわれていた時間だった。
(皆のことを見ていないけど、なにしてたんだろうな。 後で聞いてみるか。)
そう思いながら集まる部屋へと移動すると、すでに皆は集まっていた。
「大河、遅いよ! 動いてお腹すいてるんだから。」
「ああ。 悪かったよ。 というか、裕希はどこいたんだ?」
「ん? ええとね、私は大河とは違うところで体を動かしてたよ。 思ったよりちゃんと動けて良かったんだ。」
「そうだったのか。 とりあえず、明日に備えられたみたいで良かった。」
「はい二人とも、一旦ストップな。 とりあえず明日の予定を全員で確認しよう。」
宗次郎が二人の会話を打ちきり、本題にはいる。 全員が夕食の手を自然に止めた。
「いや、ご飯はそのまま食べてていいんだが、話をちゃんと聞いといてくれ。 少々長くなるからな。 まず明日は正面からいく気は当然ない。 この旅館から相手の場所にいくと上手いこと裏手に回れる。 しかし、うちの者が見た感じだと、あまり地表には出ていないみたいだ。 つまり向こうにいったら地下に移る訳なんだが、一応地下でも凛と私に通じられるような通信設備は整えてあるが、もしなにかの影響でだめになったら各々の、特に大河の意見に沿ってくれ。 そして次に厄介なのが隔離エリアの場所だ。 かなり火山の近くにある。 最近は活発になってるようには見えないが、もしかしたら、の場合がある。 その時は、出来ることであれば即座に離脱。 無理でもどこかに避難してくれ。」
宗次郎は画面に写したマップや文章を見せながら説明し、それを全員が真剣に話を聞いている。 裕希は食べながらだが、話は耳に入っているようだった。
「 とにかく生き延びることを先決に考えてくれ。 そして、地下といっても広さが分からない。 絶対に個別で動くな。 四人が固まって、しっかりと連携をとりながら進んでくれ。 もし敵が攻めてきても、落ち着いて対処するんだ。 今の君たちならそこら辺の奴等よりよっぽど強い。 だが、君たちを凌駕する力をもつ者もいるだろう。 君たちだけで対処できたらいいが、無理ならこちらにその時の様子を伝えてくれればできる限りバックアップする。 そのためにも、凛。 凛はしっかりとエリア付近の地形を把握しておくこと。 前線にでない分、そこら辺を任せるぞ。 」
「うん。 そこは任せて。」
凛は自分のPCの画面を見ながら頷いた。 誰も死なせやしない、そんな表情で。
「誰かが怪我をしたら無理をせずに退避だ。 当然素直に返してくれる訳がないが、そこはなんとか耐えるんだ。 とにかく明日は初戦。 何があるかは全く読めないが、敵としてもこちらの仕上がりは分からない。 と、まあこんなところまでが説明だ。明日は全員で上手いこと乗りきるぞ!」
「ああ。 やってやる。」
遂にこちらから乗り込む。 その事実が大河を奮い立たせていた。
29話を読んでいただきありがとうございました。




