着陸
「よし、準備はできたか?」
宗次郎を含めた六人は二台の戦闘機が並んだ飛行場にいた。一台は荷物や武器用。 もう一台は単純に皆が乗る用だ。
「ああ、俺らは大丈夫だ。 荷物を積んだ方は大丈夫なのか?」
大河が全体を見渡し、準備ができていることを伝える。荷物の準備の他にも、各々の心の準備も含めてだが。
「荷物も準備万端だ。 これはステルス機能も搭載しているから、そう簡単にはやられないはずだ。 移動手段にも細心の注意を払うので、移動時の不意打ちは食らわないだろう。」
「にしても人が増えたからヘリを出すって…………………本当にいろんなことができますね、ここは。 少しでも心に余裕ができますよ。」
大地が戦闘機の中を見回しながら言う。 それだけこの二台の戦闘機はしっかりとしたもので、見た目からして簡単には落ちないと思わせるものがあった。
「凛、ステルスはもう出せるかい?」
宗次郎が確認をとる。操縦士は用意しているが、飛行中の周囲の確認やその時々による戦闘機の機能の展開は凛が任されている。 当然、ステルス機能も凛によって使ったり使わなかったりするのだが、ほとんどステルスを外すことはないだろう。
「うん、使えるよ。 少し飛んだら展開するから、今はこのままで。」
この戦闘機…………………に限らず、世の中の戦闘機の性能は素晴らしいものだ。 昔に比べ消費する燃料も減り、長時間の飛行が可能となった。 より安定した操作もでき、長時間同じ場所にとどまることも容易である。 更に今、凛が展開しようとしているステルス機能は、いわゆるレーダーに写らなくなるだけのものではなく、その場からいなくなる………………正確には、その場にはいるが完全に見えなくなり、よっぽどの詮索技術がなければレーダーでの追跡も不可。 当然視認もできないので、今後かなり有用性のある乗り物だ。
「でも、こうやって実際に乗ってみるといよいよって感じだよね。 」
「ええ。 まさかこんなに高性能な戦闘機が普通にあるとは思ってなかった。」
裕希と桜が互いに言葉を交わす。 それぞれ見慣れないものに多少興奮しながらも、心のなかでは落ち着きを保っていた。
「こんぐらいしとかないと普通に撃ち落とされても仕方ないからな。これだって完全に安心できる訳じゃないしな。」
「分かってるよ。 でも実際にこれで移動するんだなぁと思ってね。」
裕希は明るい性格からか、元から多い口数はあまり減っていない。 桜もいつも通りの落ち着いた雰囲気で、両者とも心配なかった。
「大地、調子はどうだ?」
大河が少し心配だったのは、どちらかというと大地だった。 大河よりも賢く、なにかと頭が回るので、色々と考えすぎていないだろうかと思っていたのだった。
「俺なら大丈夫だぞ。 銃も点検したし、弾に関しても今持てるだけ持ってる。 不安なのは、今の手持ちだけで何時まで弾がもつかくらいだな。」
「それなら大丈夫だ。 既に日本各地にうちの者を配備させてある。 足りなくなり次第現地で補給。 その間にここから弾を現地まで運んでもらうという形をとるから、大地はそんなこと考えずに出来る限りの射撃をしてくれ。」
二人の会話が聞こえたのか、宗次郎は大地の質問に答えてくれた。 お互いに必要な情報をすぐに渡しあう。 コミュニケーションもしっかりととれていて、チームの中には既になんの壁もなかった。
「あんまりここで長居してても仕方ない。 離陸してくれ!」
「承知しました、これより離陸いたします。」
操縦士が合図をだし、六人は空へと飛び立った。
「みろよ大河、あれだけの人が俺らを見送ってくれる…………………あの施設にあれだけの人がいたんだな。」
大地に言われて下を見てみると、飛行場には恐らく全員であろう研究員の皆が手を振ってくれていた。
「この声援、無駄にしないようにしなきゃな。」
「ああ。 当たり前だ。」
その声援に答えるため一度にこやかに笑った二人だったが、機体の中に体を戻したときにはその顔は真剣なものへと変わっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なあ凛、これってもう外からは見えないのか?」
大河は戦闘機の状態が気になったので聞いてみた。
「うん。離陸してすぐにステルス状態に移行してあるよ。 そのお陰かは分からないけど、なんの追跡もなしだよ。」
「そうか、ありがとう。宗次郎、でもどう思う。 あいつらは少し位はなにかやってきてもいいんじゃないか?」
凛にお礼を言いつつ、今の状況に対して宗次郎に質問する。 少しでも思ってることがあったら聞いてみる。 大河はこれを心がけていた。
「確かにな。 でも、このヘリの性能的にも相手が追えないのは無理もない。 特になにもないのであればそれにこしたこともないし、いまはこれでいいだろう。」
「でもさ、私たちってもしこの状態で攻撃されたらどうすんの? 逃げ場なくない? この状態から攻撃できんの桜と大地だけだし。」
「いや、こいつは今私たちが調査した武器のどの衝撃にも耐えられるようにしてある。 エンジンも極力やられにくいところにつけてあるし、『ボルトニック』にやられても大丈夫なように電気も逃がすコーティングを加えてある。 現段階で日本の一、二くらいにタフな乗り物だ。」
「それは凄いですね。 そこまで強固なものだとは思いませんでしたよ。 この戦闘機。」
大地が驚きと共に声を出す。 確かに見た目からもしっかりと作り込まれてるとは思っていたが、まさかそこまでとは思っていなかったので、ただ純粋に驚いた。
「というか、今俺らはどこにいってんだ? 場所を全く知らないぞ。」
「私の予定のなかでは、大河の父さんたちが捕まってあのビジョンに映るまでの時間を考えると、関東付近が一番かと思ったんだが、配備した研究員から怪しい動きがあったとの報告を受けた九州に向かってる。 九州の桜島付近に唐突に封鎖エリアができ、明らかに怪しい挙動があったとのことだ。
それがうちの狙いかは微妙だが、普通に企業が何かするのであれば報道もされるし、それがなく報道陣もその周辺にいないのであれば確率はかなり高いだろうな。 どっちみち私の想定より少し遅く出発になったため、少しずつあいつらの動きを探っていく感じでいいだろう。」
「なるほどな。 ホントに場所までも狙いがついてたとは、流石だぜ。」
「そしてもう九州に入ってたりする。」
「はぁ!?まだ一時間ちょいたったばっかじゃねえか!?」
次はその速度に大河が驚いた。 大河はあまり機械に興味があるわけではないのだが、流石にその大河にもこの速さが異様だということは理解した。
「もうそこに関しては言わんぞ。 性能でまとめるからな。」
「あ、ああ。 まあそんだけかったい機体なら速度がおかしくてもなんでもないよな。」
「後五分で着陸だ。 流石にこの付近は多少速度を落としながら飛行するから、そろそろ準備をしておいてくれ。
特に大地。 降りてすぐに敵がきたら一番にお前の銃で足止めしてもらう。 頼んだぞ。」
宗次郎が最後の確認をとる。その言葉を聞き、全員の少し緩んでいた空気が瞬時に変わった。 互いに視線だけで合図をとり、極力集中した状態となる。
「はい、わかりました。 任せてください。」
「よし、さっきもいっておいたが弾はどんどん使ってくれ。 銃も拳銃以外にも用意してある。 使いたいものがあったら適当に持っていってくれ。」
「そうでしたか。 でしたら、場合によっては使わせていただきます。」
「ああ……………………………さて、そろそろ着くかな?」
「はい。もう着陸です。」
「よし、皆装備を整えてくれ。 降りるぞ。」
揃って頷いた。
28話を読んでいただきありがとうございました。
次話、ようやく施設付近以外での戦闘です。




