再出発
「んん…………………うぅ~~~~~~…………………はぁ。」
裕希、桜との戦いから二週間。 いったいここにはどんな医療技術があるのかまるで訳がわからないが、既に全員元気だった。 正直技術だけでどうこうなるものとは思えないが、治ってるならそういうことなのだろう。
大河もそれに例外ではなく、体には傷一つ残っていなかった。
「大河、おはよー!」
部屋を出て水をのみにいくと、後ろから裕希の声がした。 戦った後は物凄く疲れていて元気の無かった裕希も、今ではすっかりもとに戻り、高校にいたときのような普通の日常を送れるようになっていた。 無論、特訓はしているのだが。
「おはよう。 裕希もすっかり元通りだな。」
大河はそんなちょっとした会話ができてることも少し不思議だな、と感じていた。 そう考えると、自分が戦った相手だというのにも関わらず、こうして元気になってくれて有難いと思った。
「そりゃ当然!私の元気がなくなったら私じゃなくなるもんね。元気にいかなきゃ!」
「まだ朝なんだからテンション考えろよぉ~。」
完全に眠気が覚めた訳ではなかったため、大河は欠伸をしながら元の目標通り、水をのみに向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
水を飲んだ後、大河はそのまま顔を洗いにいった。
「よ、大河。」
そこには恐らく同じ目的できてるであろう大地がいた。
「おはよう。 裕希、朝からやかましいな。」
大河が軽く苦笑いしながら話すと、大地も同感だ、というように頷いた。
「あのくらいのムードメーカーがいてもいいんじゃないか? この先どうなるか分からないしさ。」
「嫌ではないけどよ。 よくもまああそこまで朝から元気だなぁ、とな。」
「確かにな。 かなりの早起きでもしてるんじゃないか? 体調悪くならなきゃいいだけだ。 じゃ、また後でな。」
「大地、ちょっと待ってくれ。」
顔を洗い終わり、その流れで部屋から出ようとした大地を呼び止めていた。
「ん?どうした。」
「あの作戦は、上手くいったと思うか?」
「あのって……………………裕希に大河を仕留めたって伝えるやつか?」
「ああ。それ。」
そう。二週間の中で一つ大きな動きをしていた。 それは二人との戦いの後に考えていたあの作戦。 あれを決行していたのだった。
「う~~~~んとなぁ……………一応こっちに残るってのは許可が降りたわけだから、多少は騙せてるかもしれないけれど、完全に上手くいったとは思えないな。」
「だよなぁ。 まあでも、とりあえず戻ってこいなんて言われなくてよかった。 あの二人をこっちに引き入れたことには変わらないわけだし、多少の時間稼ぎって役割は出来てるかもな。」
「そもそもあれは一回か二回の戦闘を多少楽にするくらいにしか効果ないしな。 お前がいるってわかったらそこでバレる訳だしな。」
「確かにそうだな。 深く考えるほどじゃないか………………………ま、そんだけだ。」
会話が終わり、大地はそのまま部屋を出ていった。
(敵が変に疑ってなけりゃいいけどな……………)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
様々な身支度と最後の体調確認を終わらせ、大河、大地、裕希、桜、凛の五人は集まっていた。
「よし、二週間も遅れをとってしまったが、そのぶん強力な二人を加入できた事は嬉しい誤算だ。 これから出発する。 皆、準備は大丈夫だな?」
「はい。」
「大丈夫!」
「ええ。」
「うん。」
「よし。 正直二週間で治って動けるまでに戻ると思わなかったんだが、うちの研究員達に感謝だな。」
「いゃ、ちょっと待ってくれ。」
「ん?大河か。 どうしたんだ?」
皆が出発に意気込んでいるなか、大河だけが何か出来ていないようだった。
「どうしたもなにも俺の武器渡してくれてないじゃん。 戦えねえよこれじゃ。」
「あれ、渡しておいてと言ったはずだったんたが…………………。 ええと………………………………ああ、すまんすまん。 普通に私の荷物と一緒になっていた。」
宗次郎が荷物を確認すると、そこには布に包まれている一本の太刀があった。
「あれ、また一本なのか? スペア用意しとくはずだったんじゃ………………」
「いや、ちゃんと三本あるよ。 でも、大河に渡す太刀、ようはスペアじゃなくてメインのやつは他のとちょっと仕様が違うんだ。 そのぶんだけ製作にも時間がかかってね。 メインと同じ構造のは他に作れなかったんだよ。 だからそのメインだけ渡しておく。 後、なかなか壊れない素材で作りはしたから、多分折れないとは思うよ。」
「おいおい。 仕様が違うって言われてもどんなのか知らないぞ? あんまりにも変なのとか入れてないだろうな?」
「大丈夫だよ。 ヒントを与えると………………桜の上位互換みたいなものだ。」
「武器も私のより強くなっちゃったの? それじゃあ私はもう大河には絶対に敵わないわね。」
桜が冗談混じりにちょっとした弱音をはく。実際に大河と戦ったからこそ現時点での大河の強さを理解していた。
「桜のももう一度直してより素早く伸縮できるようにはしておいた。 どうしても手首の機械は必要になる構造になっていたから、それは切り離せなかったんだけどね。」
「あら、治していただいただけでなく、いつの間にグレードアップしてたんですね。 ありがとうございます。」
しっかりと頭を下げてお礼を言う。 そんな桜だってこの二週間なにもしていなかったわけではない。 大河みたいに敵が全員剣を使ってくるわけではないため、 バーチャルを使って大地と戦ったり、動きが速い相手に対しても反応できるように裕希の動きに慣れておいたりした。
(こんな私だってなにもしていなかったわけじゃないです。 次は味方として、大河たちの役に立ちますよ!)
「こいつがあるなら俺も準備はできた。 宗次郎、行こう。」
大河が声をかける。 二週間ぶりに実戦をしなければならないことや、裕希の作戦など、多少の不安要素は残っているがそんなこと言ってられない。 覚悟を決めた。 ここからの長い戦いに乗り込んでいく覚悟を。
「大河がその状態なら心配ないな。 よし、じゃあ出発しよう。大河と裕希の家族を助けにいくぞ!」
六人は出口に向かって歩きだした。
27話を読んでいただきありがとうございました。
投稿の間隔が多少空いてしまいましたが、また頑張っていきます。




