先への不安
「おっ、戻ってきたか、大河。 ……………………その様子を見る限り、決着がつき話も終わっている感じだな。」
研究所内に戻ると、準備を進めていた宗次郎がこちらをむいて話してきた。
周りの研究員たちも見送ったかと思えば二人増えて戻ってきたので、もう少しここでの生活が送れるように動いてくれている。 なんだか自分の家にまだいられる、と思うと、大河はなんだかんだで少しほっとしていた。
「ああ。 とりあえず二人をきっちり倒して、これからのことも少しはまとめといた。 ただ、俺と大地もだが、桜と裕希の疲労やら怪我やらが大変だから、少しは休ませた方が良いな。 まあ、なるべく早く出たいのは当然なんだけどな……………」
その言葉を聞き、宗次郎は桜と裕希の様子を見て、研究員に治療の指示を出していた。 かなり慌ただしく動いているため、大河は少々心配になっていた。
「宗次郎、なんで俺らが出る前よりこんなに慌ただしいんだ?」
「研究所の防衛の強化、そして私たちが向かうところに敵はどの程度いて、それらの装備はどうなってるのか、そして強いのか、その戦闘にどの程度時間をかけられるのか、等を見てくれている。 相手は大地を送り、その後、桜と裕希を送った。 しかしその二人も戻ってこないとなれば、次は大軍を送ってこないとも限らない。 であれば、こちらができることはここの強化と、出発したあと、より敵の戦力を警戒することだ。 まあ、逆に言えばこちらとしては出来ることはそんなもので、結局圧倒的戦力差は変わらないんだがな。」
「つまりは、桜と裕希の復調期間もそんなに長くはないって訳か…………………あっ、そうだ宗次郎。実は裕希にこんなことを提案したんだが………………………。」
大河は自分が出した案を宗次郎にも伝えた。 当然大河たちだけでは決められるようなことでもなく、大河も元から最終的な判断は宗次郎に任せようと思っていた。
「……………………なるほどな。 大河はよく頭が回るな。 そんな判断力も後々必要になるかもしれないから、大切にしとくといい。 その案だが、まあ今の状況を乗りきるのはそれしかないだろう。 しかし、当然ながら次の奴等との接触で大河を殺したというのが嘘だとばれる。 そうなった場合あいつらは内密に家族を殺し、裕希にだけ伝える可能性はないか?公にするのではなく、裕希個人のみに。」
「宗次郎もそう考えるか。 まあ色々と不安要素のある案だって事は重々承知の上の相談だ。 しかし、裕希個人にいっても裕希がもう大地抹殺に動かない、と言えばそれは向こうにしたらマイナスで、もし殺してしまったとしても、あいつらの最終的目標は変わらない。そしてあいつらの目標達成には裕希は必要だろう。 恐らくだが、裕希がいなくなる、なんて方向にはもってかないだろう、と考えてだがどうだろうか?」
「なるほど。 それならその案を許可しよう。 だが、いつ家族が死んでもおかしくない、という事を裕希に伝えておくべきだ。 本人は心のなかでは理解しているだろうが、実際に他人から言われるとまた感じるものがあるから。」
宗次郎と話を終わらせ、大河も治療スペースに向かった。大河も裕希の心配をしたり、今できる最善の策を考えたりしているが、冷静になって考えると、今は抜いているが桜との戦闘時にかなりの傷を負っていた。 しかし大河としては、自分の傷なんかよりも一緒についてきてくれる仲間の事のほうがより気になっていた。
◆◇◆◇◆
大河が治療スペースにいくと、既に桜、裕希、大地は治療を受けていた。 当然ながら部屋は男女別々なのだが、二人がどこにもいないため、そういうことなのだろう。
「大河、お疲れ様。今回もお前に助けてもらった。 前回とは違う意味でな。」
大河が部屋に入ると、大地が体を起こしてお礼をいってきた。 こういった律儀なところは大地が前からもっているものであり、大河も少しは見習わなきゃな、 なんて思っていた。
「いや、今回は助けてもらったのは俺のほうだ。 そもそも大地がいなかったらあの二人を俺一人で相手していたわけだからな。 とてもじゃないが無理だ。 しかし、二人を相手にしただけでこの有り様じゃ、俺達こっからどうなんだろうな……………。」
「おいおい、大河がそんなにネガティブになってどうすんだよ。 俺らに一緒に来てくれって言ったのは大河だろ? まあ、俺だっていくら四人になったからといって、こっから先ちゃんと進んでいけるかは不安だけど。」
互いに素直に思ったことを言いあう。両者ともかなりの不安を感じている。 しかし、だからといってもう引き返しはできない。 そんなことは分かっているので、二人ともより不安になっていた。
「とりあえず動かなきゃいけないわけだし、まずは傷を治そう。 俺らだって肩とか脇腹とかを怪我してるんだから。 じゃあ、また後でな。」
大地はそう言うと、また別の部屋にいった。 かなりの傷だったため、少し安静にしていなければならないらしく、できるだけ静かなところのほうが良い、ということだった。
(俺も少しは休んどくか。 よく見たら俺の体もボロボロじゃねえか…………………それに今回は相手が剣だったからよかったけど、これ相手が大軍で、ほとんどが銃だったらどうすんだよ…………………………まあ、そこら辺を考えるのも後にして、今はゆっくりと、だな。)
ちょっとした考えをまとめてから、大河も安静にできる部屋に向かった。
25話を読んでいただきありがとうございました。




