二人での初陣、終結
「大河、お前今なんて……………?」
大地が聞き返すと、大河は続きを言った。
「いいな、その言葉。 そっくりそのまま返してやるよ、裕希。」
「え?……………………」
大河の言葉に、裕希は少し戸惑いを見せた。
「いや、俺もお前も家族が捕まってるんだろ? それでお前は家族を守るためにそっちについた。 別にそれは悪いことじゃないし、俺を殺しに来たってことにも何の恨みもない。 でも、正直に言うとあいつらは素直に返そうなんて思ってないだろうな。」
「なんでそう思うの?」
大河の言葉に、裕希は疑問を投げ掛けた。
「そんなの当たり前だ。一度送り込んできた大地がやられ、次に送り込んだ裕希が俺を命令通り殺してみろ。 向こうからしたら邪魔者をしっかり仕留めてくれる良い盾ができた、ぐらいにしか思わない。 そんな使える奴をすぐさま離すかよ。 使えるだけ使って、何か反抗したら家族を殺す。 それだけやっとけば、裕希は従わざるを得ない訳なんだからな。」
「そっか…………………………」
裕希はそんなところまで考えてなかった、とでもいうかのような表情でただそれだけ呟いた。
「………………………………だからまあ、やってやれないことないんだが、お前の家族を守りつつ、お前がこっち側にこれる方法も無くはない。 だが、その方法もすぐにバレるけどな。 」
「どうやるの?」
大河は一呼吸置き、自分のなかでもう一度考え直してから、その内容を説明した。
「まず裕希が俺を殺したってことにしとけ。 だが、大地を逃した為まだこっちで潜伏する、と言うことも伝える。 向こうとしては俺が排除できたなら当然ありがたい話だし、俺を殺したら解放してやる、とも言っていたんだろ? であれば、裕希の要求も少しは通る可能性がある。 そこで、裕希の家族が捕らえられているのを公にする事を条件に出すんだ 。 この作戦が上手くいったとしたら、どこまでの期間かはあまり分からないが、裕希の家族を少しはそのままにしておける。」
「大河、でもそれをやるとさ…………………」
「ああ。 言いたいことはわかってる。」
大地が質問したそうに話しかけたが、大河はその内容もお見通しだった。
「そんなに人を捕まえてるという事を公にすると、流石に国家が動いてくる。 その結果むこうは一つの手段として家族を殺すかもしれない。 そう言いたいんだろ? その可能性はほとんどないんだけどな。」
大河はくるであろう質問にたいして先に結論を言った。まさにその質問をしようとしていたのか、大地は少し驚いてからまた大河の話に耳を傾けた。
「理由としては、まあ俺の家族でも同じなんだが、日本が動いて組織を潰しにきた場合、あいつらは大企業『メビウス』の裏組織だ。 表のメビウスが日本に反抗して他国にでもいってみろ。 今の日本であの企業が消えたら大打撃だ。 」
「だけど大河のその考えって、日本と企業が仲直りすればいいんじゃないの?」
裕希は不思議そうに言ってきた。 その考えは一般的だが、あのビジョンの映像を見たならこの考えを理解できるだろ、と思いながらも大河は説明した。
「確かにそれが普通な考えだよな。でもそれは企業が日本の力を借りないといけない場合の話だ。 あいつらは裏でわざわざ手を組まなくても自力でなんとかできるくらいにまで成長している大企業。 でないとあそこまで大きく動けていない。 それに今、日本が『やっととある家族を捕まえていた組織を見つけたので、判決で裁きます』なんてことを言ったら、表では日本よくやった! だが、それと同時にメビウスは潰れるのを余儀なくされる。 それはさっきも言ったが日本にとって大打撃だ。 だから、捕まえることは無理。 更に、ただただ仲直りをしました。 なんてことで終わらせたら、日本はデモに等しい行為を行った組織に対してそれだけなのか!ということで人々の信頼を失ってしまう。 まあそんな理由から、日本はあいつらと敵対関係にある、って状態を続けなきゃいけないんだ。 当然裏で日本とあいつらが話し合い、なんてこともあるんだろうが、日本はあいつらを企業としては素晴らしいと見てるが、当然そんなデモまがいなことをした企業に完全な信頼を寄せられない、と思ってるだろうな。」
大河は少し長々と考えていることを説明した。裕希は少し考えたあと、少しは理解したような顔を見せた。
「そういうこと……………………………でも、私があいつらを思い通りに動かせるとは思えないよ?」
「別に構わない。 もしそれで駄目だったら……………………そうなった場合難しいが…………。 とりあえず俺が言った通り報告してほしい。」
「分かった………………あのさ、大河。」
「ん? どうしたよ。」
裕希は言われたことを理解したのと同時に、大河に問いかけた。
「なんで大河は、友達である自分を殺しにきた私をすぐに許して、味方に引き入れよう、なんていう風に考えがまわるの?」
そんな裕希の質問に、大河はひとつ軽く笑って裕希の目をしっかりと見た。 それから、ゆっくりと話始めた。
「そうだな……………まあ簡単に言えば、友達だから、だな。」
「友達?」
「ああ。 それに今回は、桜も裕希も俺らを襲いにきたのは仕方のない理由からだったろ? 裕希は自分に負い目を感じてるみたいだが、そんな風に感じる必要なんてまるでない。 そりゃ裕希が特になんの理由もないのに襲ってきたらそりゃ怒るさ。 でも、今回の場合は俺が裕希の立場だったら、申し訳ないけど俺も相手を殺しにかかる。 まあそんなもんだろ。 だから、今回の裕希はまるで悪いとは思わないし、むしろ家族を助けるためにそこまで動けたのは本当に凄いことだと思ったよ。 今の状況となれば、それだけ他の人のために動けるってことは、一緒に戦ってくれるならかなり頼りになる。 とも思えるしな。」
「なるほどね………………………………………完敗だ、大河には。」
裕希は大河の話を聞いて、自分では敵わないという事を理解したのか、すぐにその意向に賛成した。
「桜はどうだ? 一緒にきてくれるか?」
大河が桜に話を振り、意見を聞くと、少し大河の顔を見てから頷いた。
「ええ。 私は家族をつれてかれてる訳じゃないし、私自身が強いわけでもないけど、それでも、ずっと一緒にいてくれた裕希が困ってて、いつも学校で仲良くしてくれる大河や大地の助けに少しでもなれるなら……………………私もついていきます。」
「これで全員の意見が一致したか………………………俺の家族を助け、あいつらの思惑を潰し、おこるであろう戦争を回避する。 四人でも心細いと思うかもしれないが、元は俺一人だった。そう考えると、今の状況は少しは気が楽になるものだ。 ここからはもっと大変になるけど、四人で協力してあいつらをなくそう。」
「ああ」
「うん」
「ええ」
大河の呼び掛けに、三人は同時に頷いた。これで大河一人から大地が加わり二人、そして桜、裕希が入って四人に……………………………
「私を忘れないでよね。」
その声は少し遠くから聞こえてきた。
「凛、特になにもなかったか。」
「うん。 私とおじいちゃんはあのあとすぐに施設に入ってたからね。 ところで…………………話から察するに、決着どころか和解済みってところだね。」
凛がその場の状況からおこったことを素早く理解していた。 そして初対面の桜と裕希をみて挨拶した。 大河としてもなにかと気にかけてはいたが、やはり女子同士の方が話せることも多いと思い、気持ちも少しは楽になった気がした。
「そうだ、凛。 宗次郎さんは?」
大地がずっと気になっていたのか、桜たちと話始めていた凛に声をかける。
「今施設でちょっとした確認をしてるよ。 出発がとんでもない方向にずれてるからね。 でも、出発して少したった後より、施設の前で戦闘になったのはある意味ラッキーだったって言ってた。 あ、当然二人が悪いって訳じゃないからね。」
凛が説明すると同時に二人にフォローをいれる。こういうところはしっかりと気が利く、と大河は端から見て感じていた。
「じゃ、一旦戻るか。」
大河の呼び掛けに皆が賛同し、大河は歩けない桜をおんぶして、大地と凛は負傷した裕希に肩をかして歩きだした。その五人の背中はこれからおこる壮大な現実に立ち向かっていく、とても強く大きなものであった。
24話を読んでいただきありがとうございました。
これにて裕希、桜戦は終了です。




