二人での初陣~VS裕希・桜、5~
「桜……………………………………………まだいけるから……………………………まだ…………………………………」
裕希はよろめきながらも立ち上がった。 先ほどの激しい運動の反動からか、しっかりと歩くこともままならなくなっていた。
「もう無理じゃない!!!そんな体でどうやって二人と戦うっていうの!?」
「なら……………………………桜も手伝ってくれる……………………?」
「それは……………………………」
裕希が桜に問いかけると、桜は自らの負傷している足を見て言葉を濁した。
「それに私、もう操られてないの!だからもう………………………桜も………………………………。」
その言葉を聞き、大河は思い出したかのように大地に言った。
「大地、裕希に機械はついてないのか?」
「ああ、そういえば確認してない……………。 ちょっと見てみるか。」
大地が裕希に近づくと、裕希は軽く微笑んだ。
「へへっ、残念。 私には桜のような機械はついてないよ。」
「!?」
その言葉を聞いた瞬間、大河、大地の二人だけでなく、桜さえも衝撃を受けていた。
「裕希、それはどういうことだ。」
大地が聞き返すと、裕希は黙り込んでしまった。
「………………………桜、反応からしてお前も知らなかったのか?」
「え、ええ。」
「そうだったのか…………………」
敵として送られてきた裕希と桜。しかし操られていたのは桜だけだった。
「おい裕希、じゃあ何故俺らを襲った!!」
「まて大地。」
「だけど!!」
大地はその真実の動機を早く知りたいのか、少し焦り気味に裕希を問いただしていた。それではいけない、ということで大河が制止に入ったのだが。
「…………………………最初に言った方が、同情してくれて勝ててたのかもね…………………………」
裕希は少しの沈黙の後話したしたが、また黙りこんでしまった。
(裕希は操られていなかった……。 つまり自らの意思でここまで強くなることをきめ、俺らを殺しにくるということまでした。 いや、裕希は自らこんなことをするような奴じゃない………。 何があったんだ…………?)
大河が考えていると、小さい声で裕希が言った。
「………………………実は、私も家族を連れてかれちゃったんだ。」
「なんだって!?」
突然の告白に、三人はここまでで一番の衝撃を受けていた。
「マジかよ………………………」
そのなかでも一番心に刺さってたのは、やはり大河だった。 人質にとらわれているのは、自分の家族のみだと思っていたのだった。
「ははっ………………驚いたでしょ。 そう、あの日……………私の家族が連れていかれた日、私はちょうど桜と出かけてたんだ。 夜、家に帰ったら誰もいなくて………………。 普通に出掛けたんだと思ってテレビを見てたら大河のお父さん達が捕まっちゃってて。」
裕希はその日の事を話始めた。 大河も少し落ち着いて話を聞くことができていた。
「私、その時は私の家族も一緒に捕まってるなんて考えなかった。 でも、何の連絡もしてこないから、もしかしたら……………と思ったら、なにかしたいような、でも動けないような感覚になっちゃって。 そしたら外からビジョンを見に行くって声がしてたから、私もついていってみたんだ。 私も周りの人と見たら少しは考えられるかも、と思って。」
大河、大地、桜。三人がただただ裕希の話を聞く。 周りも自然と静かになってきて、裕希の声が響いていた。
「でも結局分かったのは大河の家族が実際に捕まっていることと、その捕まえた相手が凄く大きいってことだけ。 私も考えすぎかなとは思った。 大河には悪いと思ったけど、まさか私の家族も、とは思えなかったから。 だけど、家に戻ったときに、見たことない車が止まってて、そこからビジョンで見た服の人が出てきたから、『あっ、そう言うことなんだ』って………………」
「そんなことがあったのかよ…………………」
大地がつい声を漏らした。 誰もが知らなかった事だったので、そう思うのはある意味当然だが、あまり声を出すのもよくないと感じ、大地はすぐに口を閉じた。
「そこでその人が言った。『ここで私たちに殺られるか、それともこいつと一緒に私の役に立つか。 』って。そこには横たわってる桜がいて……………。 それで聞いたんだ。『どうやったらお父さん達を放してくれるの?』って。 そしたら『やってくる敵を倒したら。』って言ってきた。 その時にむこうは大河が来るのを理解してた。だから私は…………………大河のことも心配だったけど、もし本当に戦うことになっちゃったら、その時にうまく言えば大河を殺さずに済ませられると思って…………………自らの意思でむこうに入ったってことにしたんだ。 だけれど、むこうの圧力は半端じゃなくて、大河を殺らなきゃ私の家族は殺されるって事がすぐに分かって…………………だから殺しにきた。大河を殺して、家族を放してもらおうって………………。 最低だよね、私は…………………………いくら自分の家族の為だからって、友達を殺そうと自分から思ったなんて……………………。 本当にごめん……………………………」
裕希の目から少しずつ涙が見えてきた。それでも大河は何も言わなかった。こちらから問いかけずに、自然と出てきた言葉の方が裕希の心情をより理解できると思ったからだった。
「大河………………………こっちにこない? もしかしたらだけど、大河が組織に貢献して、認めてもらえたら、大河の家族はもしかしたら………………………………。」
「お前っ!なにいってんだよ!!!!」
これには流石に大地が反応した。
「そこまでいっておいて勧誘しだすとか、なに考えてんだ!!」
ところが……………………………………
「いいな…………………」
大地がまだ何か言いたそうなところで、大河のまさかの発言が入った。
23話を読んでいただきありがとうございました。
次話でこの四人の戦いも遂に終わりを迎えます。




