困惑
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
『バンバンバンバンバンッッ!!!!』
バーチャルで浮き出た的に銃弾が飛ぶ。実際にそこにあるわけではないので当たりはしないが、当たった場所はその的に表示される。結果的には練習になるのだ。
「はい、おしまい。」
凛がマイクを通して終了の合図を告げる。
「はぁ……………………ふぅ。ありがとう、凛。」
大地は合図を聞くと銃を撃つのをやめた。大地がここに来てはや二週間。研究所の人たちとも早くから打ち解けた大地は、すっかりここの生活に慣れていた。今いるところは大河の道場のすぐとなりにある部屋。しかし当然ながら防音は完璧で、隣にいる大河はまるで気にしていないだろう。戦闘中の大地の記憶はまるっきり無くなってしまっていたものの、体が動きを覚えているらしく銃を撃つスピードは変わっていなかった。そうなると当然曲がる銃弾は使っていきたい。ということでそこそこの広さのある部屋でより精度を上げる練習中なのだ。
「凛、俺の状態はどう見える?」
「そうだね………。正直大河と戦ったときに既に精度は完璧だったんだよね。だからそれは心配なし。後はまっすぐ飛ばす時と、曲げる時との切り替えがスムーズにいくといいんじゃないかな。」
凛は思ったことを素直に伝えた。そ報告に大地は納得しているらしく、
「やっぱりそこだよね。もっと鍛えなきゃな……。大河は何やってんの?」
大地はドアを開けて練習場から凛のいる部屋に移動して聞いた。
「大河なら道場でバーチャル使って練習してるよ。ここから見えるから見てみれば?」
凛に言われて大地が大河の部屋を見てみると、バーチャルの映像を見ながら動いている大河が見えた。
「おらぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
その様子を見ている大地は、あることに気づいた。
「あれって…………俺かな?」
「そうだね。正確に言えば、大地に似せた人物だけど。大河の見た角度と、おじいちゃんの意見を取り入れて銃弾が曲がってくるバーチャルを作ったの。あれを使えば大河もレベルアップできるし、いちいち身体に傷つけなくていいからね。」
そんな風に二人が話していると、大河の練習時間が終わったため、凛は大河に終了を告げた。
「ふぅ…………お、大地。調子はどうだ?」
部屋から出てきた大河が大地に気づくと、笑顔で話しかけた。
「まあまあだよ。だいぶ速度も上がってきたし、今なら大河に勝てるんじゃないか?」
大地は冗談混じりに言った。
「んだと?ははっ、やってみるか?」
大河も軽く返した。
そんな何気ない話が続いていると、宗次郎が入ってきた。
「よし、皆揃ってるな…………。それじゃ話があるから、聞いてほしい。」
「ん?どうしたんだ宗次郎?」
大河がいち早く気づき、返事をした。
「大河と大地の戦いから二週間。二人ともあの時よりもかなり成長している。大河の太刀もかなり良くなってきてるし、大地の銃もより早く正確になってきてる。まあ簡潔に言うと…………………………。二人とも、明日出るぞ。」
「「……………………え?」」
大地、大河。両者とも同じ反応を示した。
「私の予想では向こうから仕掛けてくることは無いと思った。だが、こうして大地がやってきた。これは確実に私のミスだが、逆に言えばこっちを待ってくれないと言うことを表してくれた。正直一ヶ月くらいは両者の動きなども含めて確認したかったんだが…………。流石にこっちとしても怖い。だから急で申し訳ないが、明日にはここを出る。今日の夜に二人で話しておいてくれるか?練習は今日はもうおしまいにしよう。」
「あ、ああ…………………わかった………………………。」
大河が少し戸惑いながらも返事をした。大地も静かに頷いていた。
その夜、大河と大地は同じ部屋で話していた。
「大地…………………。ここまでやっといてなんだが、ホントに大丈夫か?」
「なにがだよ。」
「いや、やっぱりどこまで行くかも分からないし、何があるかも分からない。なんなら出発してすぐに二人とも死ぬことだって考えられるしさ。」
そう言うと大地は笑って返した。
「はっはっは。今更何を言ってんだよ。俺は何があってもついていくさ。大河と戦って、それで俺を殺さずに助けてくれて、ここまで頑張って特訓して。だからどうなっても構わないよ。逆に大河がそんな風に思いながら戦っていくと、途中でミスったりするんじゃないか?」
「んなわけあるかよ。俺だってここまでやってきたんだ。絶対に死んでたまるか。」
「……………………そっか。」
「…………………………………」
二人の間に流れる沈黙。それが両者の心を表していた。
「……………………まあいいよ。俺も大河もお互いに覚悟が決まってるなら、後はなるようになるだろうからな。よし、じゃあ後は明日に備えて俺はもう寝るぜ。ありがとな。……………………こっから頼むぜ。」
それだけ言うと大地は部屋から出ていった。
「あぁ…………………任せろよ。」
大河はそれだけ呟いて布団に入った。
深夜3時。大河は眠れていなかった。
「大河…………………起きてる?」
「ん?」
大河が声に気づきドアを開けると、そこには凛がいた。
「どうしたんだよこんな時間に。いやまあ俺も起きてたんだけどさ。……………まあ、入ってよ。」
「……………………………うん。」
凛は静かに頷き、部屋に入った。
「それで、結局どうしたんだ?」
「……………………………私って、明日行くべきなのかな。」
「え?」
大河は聞き直した。
「前にも話したと思うけど、私は外に行ったことがない。でも、ここまで二人のことを見てきたのは私だし、二人の様子も分かっているから。だから、私でも着いていく理由があるのかもしれないな、と思って。でも…………………。」
「凛………………………」
大河は予想していなかった質問に驚いた。だがすぐに答えは出せた。
「凛、それは俺が言うことじゃない、それをわかってて来たよな?」
「え?」
「確かに前、凛の過去を聞いた。そのせいで今外に行けてないことも。でも、そうだからって俺がじゃあ外にいけっていったら出て、このまんまここにいろっていったらここにいる。それじゃ凛の考えじゃない。俺の意見をただ受け入れてるだけだ。ということで、これは俺は言えない。」
「…………………………」
「ただ俺個人の気持ちも、前伝えたよな?だからそれを受け入れるのは構わないと思う。でも、出るか出ないか。その決定は俺は出来ない。」
「………………………そっか。そうだよね。ありがと。ごめんね、こんな時間に。」
「いや大丈夫だ。俺も少し話せて楽になったし。」
凛はそのまま部屋を出ていった。
「………………………………はぁ。」
大地、凛。両者の話を聞き、大河はかなり戸惑ってしまっていた。そんな大河を導くかのように、空には多くの星が輝いていた。
第17話を読んで頂き、ありがとうございました。
次話、いよいよ出発となります。




