戦友
「………………うっ……………ここは…………?」
大地が目を覚ますと、目の前には真っ白な天井があった。
「…………やっと目が覚めたか。大地君。」
大地が頭をその方向に向けると、見知らぬ男が座っていた。
「あの、あなたは?」
大地が問いかけると、その男……………宗次郎は話し出した。
「なるほど……………。戦ってた時の記憶は無し、か。」
「あの………………」
「あ、ああ。すまないな。私は宗次郎。大河との戦闘の時に隣の部屋にいたんだが……………まあ、記憶がないんじゃ仕方ないよな。」
ここまで告げられると、大地は更に困惑しているようだった。
「大河?決闘………………?あれ?俺なんでここに…………………」
(ん?つまりここにきた記憶も無し……………と言うことは機械をつけられたときから既に記憶はシャットアウトか。)
宗次郎が考えをまとめていると、大地は質問を投げ掛けた。
「と言うか、なんで大河の名を?」
「そうだな……………。どこから話すべきだろうか………。よし、大地君。君はどこまでの記憶があるんだ?」
「ええと…………………何者かの車に乗せられた所までです………。」
そこまで聞くと逆に宗次郎が疑問を感じた
(ん?何故だ。あいつらは大河以外には手を出さないはずなんだが……………)
「なるほど。車に乗せられた、とは?」
大地は説明を加えた。
「自分が街を歩いてたら、突然街頭ビジョンが暗くなって。それでそこを見ていたら、突然よくわからない奴が映りだして。その後大河のお父さん達が画面に映ったから、自分は大河の家に向かいました。それで大河に会おうとしたら、家の鍵が開いてて…………。
返事もなかったから、何かあったのかもしれないと思って中に入らせてもらったんだけど、そこで電話がかかってきて………。それに出たら、
『お前は誰だ?大河以外の奴が聞いているなら、直ちに殺りにいく。』って言ってきて……………。すごく怖かったです。それからは言った通です。」
「なるほど。つまり君と大河は入れ違いだった、というわけだな。」
「多分そうなると思います。それで、もう一度聞くのですが………」
大地が聞くと、宗次郎はそうだったね。と言うかのような表情で大地を見て言った。
「あ、ああ。私が大河を知ってる理由だね。………………道場に行ってごらん。凛?案内してやってくれ。」
宗次郎が話しかけると凛は顔を向けて、
「うん。分かった。」
とだけ言い大地を呼んだ。
「あの………あなたは?」
二人であるいていても、なにかとぎこちない。そんな空気が嫌で、大地は聞いた。
「私はさっきあなたが話していた人の孫。名前は菊谷凛。凛って呼んで。」
それだけ言うと凛はまた歩いてしまう。大地は妙にいずらかった。
「その…………凛さんは私が戦っていたところを見たのですか?」
「うん。大河と戦っていたところを、ずっとね。本当に心配だった。大河はまだ慣れてきたばっかだったから。」
「………………………」
「大地………………でいいんだよね。
別に大地を責めてるつもりは全くないよ。その時はあなたが誰か分からなかったから。」
「はい。神崎大地というので、大地で大丈夫です。僕は、大河に何かしてしまったのでしょうか?」
「敬語やめて。大河の幼なじみということは歳も近いんでしょ?私も普通にする。
大地が何かしたか、と言うと実際にくらった張本人に聞く方が手っ取り早いよ。」
そして凛はドアを指差した。
「あそこが入り口。入ってみて。」
大地は凛の知らない人と話しているとは思えない平常さに驚きつつも、ドアを開いた。
「ここは……………?」
大地は部屋にはいると、部屋の特徴に目を向けた。今いる部屋と、隣とが一くくりになっ………………
「………………………大河?」
部屋を見渡す流れでガラスを見ると、その奥…………道場でトレーニングをしている大河を見つけた。大地はまた驚きながら凛に聞いた。
「なんで大河があんなことしてるんですか?まさか戦って取り戻そうと?」
「そう。」
その返事に大地はすぐに反応出来なかった。
「大河は本気だよ。本気で自分一人で助けようとしてる。私も大河に助けられた。大河はもう大地が知ってる時の大河じゃない。とにかく家族を助ける、そんな思いの中ひたすら特訓に打ち込む真面目な人になってる。」
それを聞くと、大地は隣の部屋へ走っていき、ドアを開けた。
「大河!!」
大地が話しかけると、それまで太刀を動かしていた手を止め、振り返った。
「はぁ……………………ふぅ。ようやく目が覚めたか大地。正直殺っちまったかと思ったぜ。」
「俺はお前に何をやっちまったんだ?」
「まあそこは気にすんなよ。俺も多少は傷つけちまったしな。お互いにしょうがないだろ。それに、お前一人を倒せないんじゃこっからやっていけないからな。」
「いやいやいや。ちょっと待て。お前はあの組織を一人でやるなんて正気か?」
「ああ。正気だ。」
「記憶になくて申し訳ないが………。
俺みたいなのがごろごろ来るかもしれないぞ?」
「やるしかないだろ。」
「いやだけどよ……………」
「大地。」
そう言うと大河は近寄っていき言った。
「俺だって辛かった。ここまで来るのに、かなり頑張った。お前は…………凛に連れてきてもらったのか。あの凛も親を失ってる。凛の過去、そして今の心境も俺は聞いてる。更にはあいつらに挑む過酷さも。
それら全てを踏まえて俺は太刀を握ってる。そしてお前を助けた。常人じゃ出来ないだろ?お前銃弾曲げてきたんだぜ?それに勝ったんだから、人間、成長は出来るもんだ。」
そこまで聞くと大地は少し考えていた。
(大河は本気だ。本気で助けようとしてる。だがそんなことが可能だろうか?上手くいくだろうか?俺はやめてほしい。幼なじみとして、大河までもが危険になる必要はない。そりゃ家族を助けたいだろうが、出来ることにも限度がある。しかし俺の言葉で引きとめられるとも思わない。なら………………)
「………………やる」
しばらくの静寂の後、大地は言った。
「ん?なんだって?」
「俺もお前の助けになるために、お前の家族を救うためにやる!やってやる!!だからお前は一人じゃない!」
「駄目だ」
「なんで!?」
「家族を助けるために友人を失ってみろ!俺はもう立ち直れない!!俺の心が折れちまったら最後だ。お前も、俺の家族も救えずにゲームオーバーだ。だから俺は受け入れられない。」
「大河。」
次は大地が詰め寄った。
「お前は友人が………って言ったよな?そっくりそのまんまお前に返すよ。」
「え?」
「お前は自分のため……………家族のために戦ってる。だから俺自身の問題だ。そう思ってるかもしれないけど、俺から見たらそうは思えない。家族を勝手に奪われて、何もなす術がなくて唯一の打開策として自分が戦う。その道を選んだ友人を、俺は見殺しには出来ない。もしそれでお前が死んだら、俺こそ立ち直れない。なんであの時無理にでも一緒に戦わなかったんだろ、ってなるからな。当然お前の主張もごもっともだ。俺だって逆の立場なら絶対そういう風にいうだろうさ。でも、お前ももし俺の立場だったら、おんなじことを言うんじゃないか?」
「それは、そうかもしれないけど………」
「だから俺はやる。一緒に戦って、両方とも朽ちたならそれで仕方ないじゃないか?そうなったら純粋に両方とも力不足でした、で終わるし、あの時…………っていう後悔が生まれない。あの時やるって言わなかったら…………なんては思わないから安心しろ。」
「……………………」
黙る大河に大地は更に言った。
「それにお前、最近は人柄がまるっきり変わってるみたいじゃん。真面目で、人のこと考えて。そんな今のお前なら、余計俺の気持ちも分かるんじゃないか?」
「………………………………………」
更に黙る大河。大地も一度黙る。両者に静寂が流れ…………………………………………
「…………………分かった。」
大河は頷いた。
「だが、条件がある。」
「なんだよ。」
「一つ目、お前のあの動きがもし装置によるものだったらどうしようもないから、体が動くこと。
二つ目、俺の家族が生きてるから、という理由で俺の身代わりになることはするな。俺だって死ぬときは死ぬって覚悟してる。お前が無理に庇ってきても両者とも死ぬだけだ。
三つ目、これは両方ともに関わるが……………。片方死んでも自分が悪いって絶対思うな。理由はさっきの通り。心が病むからな。それが守れるなら…………………俺に力を貸してくれ、大地。」
大河は最後に深く頭を下げた。
「大河。」
大地は呼びかけると手を差し出した。
「……………こっからは幼なじみであり、命を預ける戦友だ。宜しくな。」
大河は頭をあげ、強くてを握り返した。
「ありがとな大地……………。こっからは宜しく頼むぜ……………。」
ここまで言ったにも関わらず受け入れてくれた親友の優しさに、大河は目頭が熱くなっていた。
16話を読んでいただき、ありがとうございました
遂にコンビでの出発です。




