打開策
………動画を見てから一週間が経った。今大河はあの日―初めての試験の日―と全く同じ状態になっていた。ひとつ違うものとすれば………大河自身の身体能力だろうか。
「………あー…………あー、大河聞こえてるか?」
ガラスの向こうから宗次郎が話しかけてきた。当然音声は道場側にも聞こえてるので、大河は頷いた。
「よし、それじゃ、始めさせてもらうよ。用意はいいかい?」
「………………あぁ。いける。」
大河は一つ深く息をはき、もう一度しっかりと太刀を構え直した。
(あの方法ならいける…………)
大河は心のなかに一つ策略があった。そしてそれができるかどうか、不安に駆られているのであった。
~三日前~
(どうやったらここまでにならないでもあれを攻略できる………?)
大河は動画を見ながら、未だに試行錯誤していた。絶対にこの画面にいるじいちゃんのようにはならない。であれば何かしら頭を使わなければならない。しかし大河にはその策がなかった。
(どうすれば…………)
様々な太刀筋を実践してみた。体の捻り方、切っ先の入れ方、踏み込みの入り方。ここまでの知識でやれることはやってきた。だが、大河の考えはそううまく受け入れられなかったようだった。
(うーん………なんかいい方法はねえかな………)
大河は自分の悩みと葛藤しながら、その日も1日を終わらせてしまった。
……………その夜、大河は自室で動画を見返していた。今見ている内容は、二人がかりでこられた時の一つの対処法であった。やり方は一人目を斬り、その裏から斬りかかってきた相手の刃を受け流しながら自分の体を回転させ、その回転を利用しながら相手を斬るというもの。当然相手が二人とも縦に並んでいないと使えないが、勿論覚えておいて損はないだろう。
(だけどこんな場面こないだろ………そもそも今の主流は遠距離の武器なんじゃないのか?)
大河はこの場面を見るたびにそんな風に思ってしまっていた。そして今日もそのまんまであった。
………その夜……………
(あの動画の想定された場面、ほとんどないだろ、やっぱり。でもあの形がやっぱりいいんだろうなぁ………あれを生かして、尚且つ自分のものにする…………………………あっ!)
大河は唐突にとある考えに思い当たった。そしてその考えを頭に残したまま、太刀を持って外にでた。ただ大河が空を切る姿を、光り輝く満月が照らしていた。
(………………あれなら、もしかしたらだけれど。というよりも、ここでしか生かせないだろうが…………。逆にここで使えなかったら、俺の考えがただの水の泡になるだろ!)
「それじゃ、始めるぞ。 …………スタート!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
大河は一太刀目を入れた。その時
「…………あれはっ!?」
宗次郎は驚きのあまり声を上げていた。大河の今行っている切り方。それは今まで誰も行ってこなかった動きだった。剣を前で構える、ここまでは普通通りだ。しかしその後の動きが違っていた。剣を自分の前で八の字型に回すのだ。それによりいちいち剣を振りかぶったり、振りおろしてまた前にもってくるという動きをしなくてよくなる。つまり結果的に今までの振り方よりかなり早く竹を斬れるようになっていた。
宗次郎は物凄く興奮していた。
「あの斬り方………なにが一番難しいって手の動かし方だ………。上手いこと両手を使って太刀を回さないと、そのうち手首が回らなくなり落ちてしまうからだ。しかし、あの速度をずっと保っていられるなら…………切れる!大河の祖父、慶治さんでさえ切れなかった、二回目にしての一分を!!」
残り三十秒。大河は更に力を込めた。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
そこで宗次郎は更に新たな発見をした。それは大河の斬る順番であった。
前は適当に近場から斬っていた。だが今回は円を描くように斬って進んでいる。このお陰で更にスムーズな移動ができているのだ。
「いける…………いけるぞ!!」
宗次郎は久しく感じていなかった高揚感に包まれていた。
ラスト十秒。そこで遂におこってしまった。大河の手元が狂ったのだ。
(マジか…………ここでかよっ………!)
しかし、大河は最後まで集中していた。
「くっそ…………これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
狂って上手く回せなくなった太刀の柄の部分をなんとか持ち、残りの三本を思い切り叩き斬った。
「終わりだ!!!!」
大河は大声をあげた。それと同時に宗次郎はタイマーをストップさせていた。
(はぁ………………はぁ………………………どうだ……………?)
無我夢中で斬りかかっていた大河は何秒掛かったのかが分かっていなかった。そして、道場の壁にかかっている掲示板に残りの秒数が映し出された。
そのタイマーを見ると、00:05で止まっていた。
11話を読んでいただき、ありがとうございました。
大河が遂に試練を突破しました。




