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第3話 名前

 ママ……マミ……ミユキ……キョウコ……コハル……ルカ……


 少女の話に出てくる人物の名だ。

最近ふと考える。

“少女の名前はなんだろうか”と——


3……監視区域の生物に名前をつけてはいけない 


 “名前をつけてはいけない”おそらく情が移るからだろう。

だが、元からある名前なら、問題ない。

すでに俺は“マミ”を知っている。

どうでもいいが。


 気づけば俺は一日中、少女のことばかり考えていた。


 少女はいつも、同じ時間帯に現れる。

それまで、地球をひたすら監視する。

今日も争い、奪い、物憂い、そして笑う。

地球人の変わり映えをしない日々を監視し、時間を潰している。


「キョウコがね、水泳の全国大会で賞を取ったんだよ。すごいよね」


 少女は目を輝かせて、楽しそうだ。


「すごいよねーキョウコ。私は……何もない」


 次は悲しそうな表情をしている。

忙しい地球人だ。


「キョウコはね、カエデは絵が上手だよ!って言ってくれてるんだけど、絵はコハルの方が上手なの」


 そうか、コハルの方が絵が上手いんだね。

キョウコは水泳、コハルは絵、マミは睡眠。


「ミユキは将来、客室乗務員になるって言っててさ……頭が良くて、凄く可愛いの」


 ミユキは可愛いのか。

少女の口ぶりからして、相当なのだろう。


「でも……私は何もないんだよ」


カエデ……


 俺は少女にかける言葉を探した。

決して届くことのない言葉を——


 少女は下を向き、黙り込んでしまった。


 カエデは絵が上手。

コハルの方が上手かもしれない。

でも、芸術なんて、比べるものじゃ——


……待て。


カエデ?


 俺は気づいた。

もしかして少女の名前は“カエデ”?

俺は少女の言った言葉をもう一度、思い出そうとした。


“キョウコはね、カエデは絵が上手だよ!って——”


 キョウコ……


 俺は思わずキョウコに感謝していた。


「今日は、もう寝るね。おやすみなさい」


 カエデは、元気のないまま部屋へ戻って行った。

落ち込んでいるのに、何も言えなかった。


 ……なるほど、カエデか。


妙に落ち着かない。


 ママ……マミ……ミユキ……キョウコ……コハル……ルカ……カエデ

カエデ……


 俺は言葉を噛み締めた。


 今日はよく寝られそうだ。

そして、俺は思った。

今の俺、すごく気持ちが悪い——

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