第2話 独り言
あの日から何日かが経った。
相変わらず、地球は退屈だ。
「今日はね、マリが現代文の時間に寝てたの。それで先生に怒られててさ」
マリ何やってるんだよ。
俺はこの少女の話を聞くのが日課になっていった。
2……監視区域に干渉してはいけない
別に、俺から何かしているわけではない。
大丈夫だろう。
バレてない。
それに、少女も俺のことなど認識していないようだ。
地球には“月信仰”というものがあるらしい。
詳しいことはわからないが、月は神だと思われているらしい。
神はマミの話を聞いてどう思っているかはわからないが、
彼女は月に話をするのが好きなようだ。
「でもさー、その前の授業体育なんだよ! それに、現代文の先生、声のトーンが一定なの」
知るか。
「だから、少しマミかわいそう。あんなの拷問だよ!」
彼女は少し頬を膨らませている。
なんて友人思いなんだ、この地球人は——
……とはならない。
“現代文”が何かわからないが、おそらくこの少女たちには必要な教育なのだろう。
宇宙には、教育を受けられない者がたくさんいる。
なのにこの少女は、教育を受けることができる喜びを知らないのか?
全く、最近の地球人は——
1……監視区域の生物に感情を持ってはいけない
……最近、この言葉を思い出す回数が増えた。
いけないことはわかっている。
生きていても退屈なだけだと思っていた。
でも、今は——少し楽しい。
「いつまで起きてるの! 早く寝なさい」
「はーい」
ママのこの言葉でだいたい話が終わる。
彼女は眠気に今気づいたかのように、小さくあくびをした。
「……また明日、話聞いてください」
少女は部屋の中に入っていった。
今日はここで終わりか——
急な静けさ。
俺はこの時間が、一日の中であまり好きじゃない。
心がスッと落ち着く。
だが、寂しい……
少女に会う前は、この静けさが当たり前だった。
月ってのは音がないんだ。
俺が歩く音、俺の飯食う音、俺のおなら——それくらいしか音がない。
なのに——
独り言増えたな、俺……
最近の月は、少しうるさい。




