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月面監視人  作者: 歩夢
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第1話 監視

1……監視区域の生物に感情を持ってはいけない

2……監視区域に干渉してはいけない

3……監視区域の生物に名前をつけてはいけない 


——それが、月にいる僕の全てだ。


 月は地球の衛星だ。

常に地球と共にある。

だが、ただ一緒とは限らない。


 俺たち監視人は惑星の生物を監視するため、各衛星に派遣される。

俺の担当は地球というわけだ。

 

 やること?

ただ、地球を見るだけだ。

地球を見て、報告書を書き、決まった時間に報告。

それだけだ。


 今日も地球人を監視する。

動物の毛皮を着て、動物と散歩をする大人。

同じ服を着て、大人から教育を受ける子供。

同じ地球人なのに、銃で撃ち合う大人。

食事をせず、痩せていっている子供。


退屈だ……

もうこの光景を毎日見続けている。

地球人は変化がない。


地味で、傲慢で、浅はかで——

長く観察するには、あまりにも退屈な生物だ。


——そう思っていた。


「ねぇ、聞いて」


 その声は、誰かに向けられたものがない。

少なくとも“地球人”の誰かには。


「今日、ママと喧嘩しちゃった」


 少女は悲しそうな表情をしている。

どうやら“ママ”という地球人と喧嘩をしたらしい。


「ママがね、私のケーキ食べたの! それでね、なんで食べたの、ひどい!って言ったら、なんて言ったと思う? だったら名前でも書いていきなさいよー!って。私が悪いの?」


 どうでもいい。

どうでもいい怒りだ。

ケーキひとつで騒ぐんじゃない。

地球には、もっと深刻な悲劇がいくらでもある。

この地球人は——いけない、いけない


1……監視区域の生物に感情を持ってはいけない


冷静になれ。


 少女は怒りが収まらず、その後も話し続けてた。


「でも、ママとこのままなの嫌だな。お月様何かいい方法ない?」


 お月様?

この少女、月に話しかけているのか?

もしかして、俺が見えているのか?

俺に、話しかけてるのか?

そんなわけがない、月と地球は約38万kmも離れてるんだぞ。

見えるわけ——こっち見てる……

めちゃくちゃこっち見てる!


 地球の監視人を始めて百年ちょい。

監視人の世界じゃ、まだ新人だ。

……いや、百年だぞ?

普通に長いだろ。

でも、こんなこと……初めてだ。

いや、俺が気づいていないだけで、地球人は他の星と交信ができるのか?しかもすごくフランクに。

実は高次元な文明なのか?


 俺は動揺していた。


1……監視区域の生物に感情を持ってはいけない


 そんなこと、脳みそから消えていた。


 これは一大事ではないか?

監視人が監視対象生物に見られているなんて。

本部に報告するか……

いや。

報告したら、地球に何をするかわからない。


 俺は決心した。


何も見なかった。


 そう思うようにした。

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