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第19話 はじめまして

「おはよう、MOON」

「NIX先輩、おはようございます。お久しぶりです」

「久しぶりだな。朝早くにすまない」

「いえいえ、嬉しいです」


 NIX先輩から久々に連絡が来た。


「どうだ、寝れたか?」

 

 全く寝れてない。

いろんなことが頭の中をぐるぐる駆け回っていた。


「そうですね、少し」

「お前は考えすぎる癖があるからな。寝れていないだろうと思っていた」


 NIX先輩、俺のことわかってる。

きっと親よりもわかってる。


「緊張してるだろ」

「はい」

「俺も緊張した。お前が入社してきた時」

「え、そうなんですか?」

「当たり前だろ。教育担当するの初めてだったからな」

「そうだったんですね」


 NIX先輩が緊張。

何事もそつなくこなす、要領もいいNIX先輩が……


「本当は教育担当、やりたくなかっただろ」

「えっ」


 やりたくなかったです!

そんなこと言えるわけない。


「そ、そんなことないですよ」

「無理するな。やりたいやつなんていない」

「は、はい」

「そうだよな。でも、誰かがやらないといけない」

「はい」

「で、お前を推薦した」


 なぜ?

なぜ、俺を推薦した?

優秀な同僚なんていっぱいいるはずだ。

ARTEM以外で。


「こ、光栄です」

「ごめんな」

「えっ」

「急に話が進んでびっくりしただろう」


 びっくりなんてもんじゃない。


「そうですね、びっくりしました」

「他にも候補はいたんだ。でもお前にやってもらいたいと思ったんだ」

「……」

「お前は仕事ができる。GALAXY部長も評価してたぞ。でもな、このまま一人で淡々と仕事をさせるのはどうなんだろって」

「……」

「お前は若い。今できることをいっぱいして欲しいんだ」

「は、はい」

「……お前、有給取ってないだろ?」

「えっ」

「夏季休暇も取ってないだろう?何年取ってない?」


 十、二十、三十……全然取ってない。


「と、取るの忘れてました」

「忘れることあるのか? 仕事に没頭しすぎだ」

「すみません」

「まー会社も悪い。お前は一人だったからな。取りづらいよな」


 すみません。

取りづらいではなく、本当に忘れていました。


「でも、全然大丈夫ですよ。気にしないでください」

「そういう問題じゃない。実家にも帰ってないだろう」

「まーはい」

「全く。そういう事情もあり、新人をお前に任せることにした」

「なるほど」


 そういう事情なら新人じゃなくて、経験者を派遣してくれればいいのに。


「本当は社内から派遣したかったんだけどな、どこも人手不足だ、すまない」

「なるほど」


 人手不足だで完結しないでほしい……

仕方ないが。


「そういえば、俺も来週から移動なんだ」

「先輩が?」

「そうだ、ARTEMのところにだ」

「ARTEMのところに?」


 ARTEMのところにNIX先輩が?

どうせなら、俺のところにNIX先輩が来てくれればいいのに。


「アイツ、今暇みたいだからな。ARTEMもいつか教育担当をしてもらわないといけない。今からビジバシ、鍛えてやる」

「それはいいですね! ARTEM一人で寂しいって言ってましたし」

「そうか、それは良かった! ちなみにARTEMには今日言う」

「急ですね」


 次はARTEMが寝れない日々を過ごしそうだ。


 ピンポーン


 チャイムが鳴った。


「来たな、頑張れよ」

「はい、頑張ります」


 俺は通信を切った。


 玄関に行き、大きく深呼吸をする。

どんな新人が来るのかわからない。

どうしよう、今のΩ世代はなんでもパワハラですよとか言うんだろ?

そんなやつとこれから何十年、何百年も過ごせねー。

まず、男なのか?女なのか?何星人なんだ?


 ピンポーン


 再度、チャイムが鳴った。


「す、すみません。今開けます」


 俺は震える手で、扉を開けるスイッチを押そうとした。

押したくない!


 ピンポーン


 えーい、どうにでもなれ!


 俺はスイッチを押した。

扉がシュコーと音を出しながら右にスライドしていく。

ちょうど太陽光が真正面に来ている。

逆光だ。

逆光で、人影だけが見える。


「すみません、遅くなってしまって」


 人影がゆっくりと近づいてくる。

一歩一歩ゆっくりと、スローモーションに見える。


「あのーMOON先輩ですか?」

「はいそうです」


近づくにつれ、詳細が見えてくる。

でも、顔が見えない。


「私、VENUSっていいます! 今日からよろしくお願いします!」

「よ、よろし——」


 太陽光がそれた。


「……」

「……」

「……」

「……」

「ど、どうかしましたか?」

「……」

「MOON先輩? おーい」

「……」

「あれ? 少し顔が赤い? 風邪ですか?」

「……カ」

「えっ? カ?」

「カ、カ、カ」

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