第12話 ママ
カエデはそれ以降何も話さなかった。
ただずっと月を見ていた。
カエデがこんなに苦しんでいたなんて、俺は……
俺は後悔した。
カエデが大変な時に、俺はそばにいてやれなかった。
カエデの話しを聞いてあげれなかった。
俺に何かできるわけではない。
監視区域に干渉してはいけない——分かっている。
監視区域の生物に感情を持ってはいけない——分かっている。
全部わかってる!
カエデを冷たい風が包み、カーテンがその姿を包み込む。
「カエデ、風邪ひくでしょ。窓を閉めて寝なさい」
カエデの後ろから優しい女性の声が聞こえた。
ママだ。
「うん、そうするね、ママ」
カエデは窓とカーテンを閉めた。
……俺は動くことができなかった。
ずっと、カエデがいる部屋の窓を眺めていた。
やがて、部屋の明かりが消えた。
カエデ、寝たか。
何も考えれない。
考えたくない。
俺は現実逃避をするかのように、病院の周りを回った。
病院は、ほとんど明かりが消えている。
入り口は明かりがついており、人が出入りしている。
その中に、ママいた。
俺は、なぜかその姿を追っていた。
ママは病院を出ると、車に乗り帰宅した。
俺とカエデは初めて会った場所。
カエデが笑顔で月に話しかけていた場所。
懐かしい……
しばらくして、窓からママの姿が見えた。
「……」
ママはしばらく何も言わなかった。
俺も、何も言えなかった。
すると——
「……うっ……」
ママの肩が、微かに震えた。
「カエデ……」
その声を聞いた瞬間、ママはその場に崩れ落ちた。
「カエデ、ごめんね。カエデ……カエデ……」
俺には、何もできない。
話しを聞くことも、慰めることも——
……俺は、無力だ。




