第10話 日常
GALAXY部長からの信頼を回復するため、俺はさらに仕事に励んだ。
日本も見ている。
あれからだいぶ経ったからか、カエデのことも気にすることなく日本を監視できている。
会うこともない。
気にしすぎだったみたいだ。
それにしても、この区域は平和だ。
子供たちが同じ鞄を背負って歩いている。
石ころなんか蹴って……気をつけろよ。
店が並ぶ通りには、三人の女性が井戸端会議をしている。
手の先を揃え、クイっと何回か上下に振っている。
俺のお袋も「あのね〜」とか言いながらやってたな。
俺は照準を別の所に移した。
そこは大きな白い建物で、周りは木々が生い茂る広場になっている。
病院だ。
平和でも、病気はするからな。
俺は風邪すらひかない。
だから有給の使い道がない。
特になんの変化もない風景に、俺は少し飽きていた。
そうだった。
俺は飽きていたんだ。
退屈だったんだ!
少し嬉しくなった。
カエデと会う前の俺は、いつも退屈だった。
そうだ、これが“本来の俺”なんだ。
俺は安心した。
俺はおかしかったんだ。
1……監視区域の生物に感情を持ってはいけない
2……監視区域に干渉してはいけない
3……監視区域の生物に名前をつけてはいけない
こんな簡単な三原則があるのに、守れているのが微妙なところまでいっていた。
ARTEMのような性格ならともかく、俺は真面目を売りにしている。
“真面目”“孤独”“(自称)優秀”略してMKY!
そうだ、これが俺だ。
俺は自分に言い聞かせた。
こうすると心が落ち着く。
仕事に集中できる。
病院を一周回り、照準を別の所に合わせようとしたその時——
「ねぇ、聞いて」
微かに女性の声が聞こえた。
掠れた声だ。
切なく、喉から搾り出すような声。
でも、俺はこの声を知っている。
膨れっ面で、ママや学校の文句を言っている。
楽しくマミ達の自慢話をする。
頬を染めながら……“先輩”と呟く。
この声を俺は知っている。
カエデ……!




