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光を失った軍勢は、三日で瓦解した。
聖騎士団の長剣から加護が消え、兵士たちの鎧に編み込まれた防護結界が解け、治癒魔法が効かなくなった。夜間の照明は松明に頼るしかなく、食料の保存に使っていた光の浄化も止まった。腐り始めた兵糧の臭気が野営地に充満した。
脱走兵は日を追うごとに増えた。三日目の朝、残存兵力は二百を割った。そのうち戦闘可能な状態にある者は、百に満たない。
オルトが白旗を掲げた。
聖騎士団筆頭が、予備の長剣を鞘に収め、白い布を槍に結びつけて帝国の防壁の前に立った。金茶色の髪は乱れ、白銀の鎧には泥と血が固まっている。しかし背筋は伸びていた。
セレーナが防壁の上に姿を現した。
銀灰色の髪。紫水晶の瞳。素手。
二人は百メートルの距離を挟んで向かい合った。追放された悪役令嬢と、王国の聖騎士。
「降伏の条件を聞きたい」
オルトの声は掠れていた。三日間ほとんど眠っていない。しかし声量は保っていた。部下の前で弱さを見せない——それが、この男の最後の矜持だった。
「殺しません」
セレーナの声は平坦だった。
「労働に参加するか、立ち去るかを選んでください。参加する者には食料と安全を保障します。立ち去る者に、帝国は何も保障しません」
前に難民に突きつけた条件と、同じ構造だった。
オルトの顎が引き締まった。兵士たちの視線が背中に刺さっている。ここで条件を蹴れば、残された兵士たちは飢えと魔物の中に放り出される。受け入れれば——敵の軍門に下ることになる。
長い沈黙の後、オルトは鞘に収めた長剣を地面に置いた。
「……条件を、受け入れる」
背後で、兵士たちが武器を置く音が連鎖した。金属が地面を打つ乾いた音が、いくつも重なって森に消えていった。




