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作戦開始は翌朝。
夜が明ける前に、四人はそれぞれの場所に散った。
ヴェルナーは防壁の外に出た。大剣を背に、黒い鎧の上に朝露が光っている。掌の古傷が微かに疼いた。今日はこの傷口を、限界まで開くことになる。
モルスは拠点の内部で、屍壁の最終点検をしていた。三重の防壁。二十体の屍役。非戦闘員の避難経路は三本確保されている。ダリオが民兵を率いて防壁の上に並んでいた。農業部門長は今日、槍を持っている。
ダリオの隣には、リーネとトーマとメイラの姿はなかった。非戦闘員は拠点の最深部に避難済みだ。ダリオは夜明け前に三人を避難所まで送り、トーマの頭を撫で、メイラの頬を拳で軽く突き、リーネには何も言わずに背を向けた。
言葉は要らなかった。帰ってくる。それだけ伝わればいい。
民兵たちの手は震えている。だが槍を握っている。逃げていない。
カイは——いなかった。
どこにもいなかった。気配を消して、既に森に溶け込んでいた。
セレーナは解析室の中央に座っていた。
目を閉じ、アナライズを起動する。意識を遠くに飛ばし、討伐軍の陣営を「見る」。魔力の波形だけで構成された、モノクロームの風景。兵士たちの体温が揺らぎとして見える。天幕の中で光魔法が微かに灯っている場所がある。そこに——勇者リオンがいる。
星の聖約とリオンを繋ぐ接続回路が、リオンの体内で脈打っている。肩甲骨の内側。四センチの深さ。心臓から七センチ。
セレーナはその位置を、自分の意識に焼き付けた。




