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「次に、私たちの魔法について話します」
セレーナの声は淡々としていた。感情を挟まない。事実を並べる。
「闇魔法は『邪悪な魔法』と教えられてきたはずです。私はその罪で追放されました」
帝国民の中には、セレーナの追放を知っている者と知らない者がいた。知っている者は頷き、知らない者は隣に顔を向けて情報を確認し合った。
「しかし、闇魔法の本質は『破壊』ではありません。『既にあるものを分析し、分解し、再構築する』技術です。無から有を生まない。有から有を作り替える。そこに新しいエネルギーの消費は発生しません」
セレーナは図表の下半分を示した。帝国のエネルギー収支。
「モルスの死霊術は、死んだ有機物を分解して土壌に還元し、新しい生命の材料にしている。私の分解再構築は、既存の魔力を再配置して結界やインフラに転用している。帝国の農業は、モルスの堆肥化技術で循環する土壌の力だけで成り立っている。全て——既にあるものを回しているだけです」
ここでセレーナは、一つの対比を示した。
「勇者が奇跡を使うたびに、足元の草が枯れ、泉が涸れ、土壌が灰色に変わる。それが光魔法の代償です。一方、この帝国では——モルスが死んだ有機物を土壌に還し、その土壌が新しい作物を育て、作物の残滓がまた土壌に戻る。消えるものがない。枯れるものがない。それが私たちの魔法の本質です」
広場に風が吹いた。木々の葉が擦れる音が、セレーナの言葉の余韻を運んだ。
「そして——第三の真実です」
セレーナの声が、ここで初めて、わずかに力を帯びた。
「あなたたちが毎日汗を流して耕している畑は、奇跡に頼っていません。あなたたちが自分の手で守っている防壁は、光魔法を使っていません。あなたたちが食べている食料は、星の命を削って生み出されたものではない」
帝国民が、自分たちの手を見た。泥だらけの手。鍬の柄で硬くなった掌。訓練で傷ついた指。
「あなたたちの泥臭い労働こそが、この世界を食い潰さない唯一の生き方です。——それが、第三の真実です」




