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セレーナの声が変わった。
管理者の報告口調ではなく、研究者の講義の声。学術院で論文を発表する時の声——あの声を最後に使ったのは、何年前のことか。
「勇者の奇跡の正体をお話しします」
広場が静まった。勇者。その名前を、ここにいる大半の人間は畏敬と共に育ってきた。
「私は追放される前、王国の学術院で闇魔法の研究をしていました。その過程で、光魔法——勇者の奇跡の根幹をなす魔法体系——の構造に重大な欠陥を発見しました」
セレーナは壁に掛けた大きな革紙を指し示した。事前に準備した図表。アナライズで記録した魔力波形のデータを、誰にでも読めるように簡略化したもの。
「光魔法は、無から有を生む魔法ではありません。エネルギー源があります。それは——この星の生命力です」
沈黙が深まった。
「勇者が奇跡を行使するたびに、星の命が削られている。大地に宿る力、水を巡らせる力、草木を育てる力。それらを搾り取って一時的に現象を起こす——それが奇跡の正体です。あなたたちが王国で体験した異常気象、水源の枯渇、土壌の不毛化。全ては奇跡の代償です」
広場のあちこちで、息を呑む音が聞こえた。
セレーナは図表の曲線を辿った。
「私のアナライズが記録した星のエネルギー残量の推移です。建国以来の五十日間だけでも、残量は一割以上減少しています。このペースが続けば、十五年以内に星の生命力は完全に枯渇します。草は生えず、水は涸れ、大地は死ぬ。世界の終わりです」
十五年。その時間の短さが、広場に衝撃を広げた。自分たちの子供の世代——メイラやトーマが大人になる頃には、世界が終わっている。




