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ダリオがセレーナの解析室の前に立ったのは、その日の昼過ぎだった。
一人ではなかった。十七人が後ろにいた。二十六人のうちの十七人。残りの九人は——まだキャンプに留まっている。しかしダリオは彼らを無理に連れてくるつもりはなかった。選ぶのは各自だ。
セレーナが出てきた。
左頬に、まだ石の傷跡が残っていた。薄い赤い線。カイの薬で塞がったが、痕は消えていない。
ダリオはその傷を見て、一瞬だけ目を伏せた。あれを投げたのは自分ではない。しかし、自分が煽った結果だ。
「条件を呑む。働く。戦い方を教えてくれ」
ダリオの声は低く、静かだった。六日前の怒号とは別の人間の声だった。
セレーナは表情を変えなかった。
「最初からそう言えば良かったのに」とは言わなかった。「わかりました、許します」とも言わなかった。感情を挟まない。当然だ。これは取引であって、赦しの儀式ではない。
「承知しました。明日からの労働シフトに組み込みます。配給は本日の夕食から再開します。防衛訓練は明後日から」
事務的な処理。
ダリオはそれで十分だった。温かい言葉は要らない。要るのは食料と安全と、自分の手で生きるための手段だ。
残りの九人は、その後三日かけて全員が戻ってきた。
最後の一人——元商人のブルーノ——は、餓死寸前で拠点の防壁の前に倒れているところをカイが発見した。ブルーノは「あの女もすぐ折れる」と言った男だった。セレーナは折れなかった。折れたのはブルーノの方だった。




