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再建が始まった。
ヴェルナーが選んだ窪地に拠点を移し、最初の作業が動き出す。ヴェルナーが大剣で周辺の木を伐り倒し、モルスの屍役がそれを運搬して柵と壁の基礎を組む。カイは周辺の偵察に出発し、セレーナは窪地全体の魔力配置を解析して最適な結界の設計図を引いた。
四人が四つの方向に散り、四つの仕事を同時に進めている。しかし昨日までとは決定的に違う。全員が同じ設計図を共有し、自分の仕事が全体のどこに位置するかを理解している。
歯車が回り始めた音は、斧が木を打つ音と、屍役が丸太を引きずる音と、セレーナが苔の上に結界の図式を描く音の、三つが重なったものだった。
夕方には、簡素だが堅固な防御陣地が形を成していた。
昨日の拠点は夜を徹して一人で作った。今日は、それ以上のものが四時間で完成した。
日が暮れる頃、セレーナは新しい拠点の中心に立ち、空を見上げた。
アナライズの視界で、星の魔力の脈動が見える。微かに、しかし確実に揺れている。その脈動は規則的で、安定しているように見えた。しかしセレーナは知っている。安定しているように見えるのは、変化が遅すぎて人間の時間感覚では捉えられないだけだ。数百年のスケールで見れば——モルスの時間感覚で見れば——星は確実に弱っている。
勇者の奇跡が、あの光を食い潰している。
「いつか、この仮説を証明します」
独り言だった。誰にも聞こえないように。
今はまだ生存が最優先。四人の連携はようやく動き始めたばかりで、実戦での検証はこれからだ。拠点の完成度も、備蓄の量も、まだ不十分。
しかし、設計図はある。
仲間——いや、契約者がいる。
そして仮説が、頭の中にある。
セレーナは視線を星から下ろし、拠点を見渡した。
窪地の北側で、ヴェルナーが黙々と柵の補強をしている。南側では、モルスの屍役が地面を均している。どこかの木の上には、カイがいるはずだ。見えないが、いる。それがカイの仕事だ。
四つの歯車が、それぞれの場所で回っている。
上下ではなく、横で繋がった歯車。どれが欠けても機械は止まるが、どれか一つが支配しているわけではない。
それが——対等の契約の形だった。
セレーナは脱いだ手袋をポケットに仕舞った。
もう、つけ直す気はなかった。素手のままで、この泥の世界を設計していく。過去の肩書も、父の記憶も、いつか——計算が許す日が来れば——取り戻しにいけばいい。しかし今は、この契約だけがセレーナの全てだった。
こうして。
世界で最も合理的で、最も冷酷で、最も正しい「悪の連携」が産声を上げた。




