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閑話 内政官/クレナの日記

 帝国との交渉の間、カルラに一つ任せていた大きな仕事があった。


薪問題。


共同炊事場の開業前に、ヒラルトス以外にも薪を確保する経路が欲しかった。


森林の管理、薪の販売なんかは森林ギルドが行っている。


カルラに任せたのは、一部の森林の購入と、薪の生産。


 ♦︎


ユージとリェレンは帝国からの手紙に応じてギアソ山脈の方へ行ってしまった。


最近は3人での仕事も増えていたから楽しかったのに。


なんだか寂しい。


とはいえ、ユージから任された仕事。


『カルラしかいない。』


なんて、調子いいことを言う。


それに絆される私も私なんだけど…。


とはいえ、これは確かに重大任務。


気を引き締めて、私は森林ギルドの扉を開けた。


 ♦︎


「可愛いお嬢さんですね。本日は、どのようなご用向きで。」


森林ギルドのお爺さんは私を歓迎した。


ユージから渡されたお小遣いは5万ペリル。


一体どこからそんな金を用意したのかと思ったら、いつのまにかトゥラグス商会の商会長と仲良くなっていた。


「いえ、大した用ではございません。ただ少し、あなた方の林を売って欲しくてですね。」


お爺さんはしばらく目をパチクリさせていたが、やがて笑い出した。


「ご冗談を。一体いくらかかるとお思いで?」


あぁ、やっぱり金目当てですか。


「1万ではどうでしょう。」


お爺さんは笑いながら言う。


「それほどの金額でも、我々の林の2%程度しか買えないのではないですか?」


ないですか?っていわれてもねぇ。


2%。


ユージから頼まれたのは、とりあえず林の購入だけ。


「高いですね。では仮に、この街の暮らしを支えようとしたら、皆様の林のどれくらいが必要で?」


10%ならお金足りる。


「ん〜、分かりませんなぁ。半分ほどでしょうかねぇ。」


あぁ。全然たらねぇや。


「5万です。」


私はポケットから金の入った袋を取り出した。


「10%、購入します。」


「…はい?」


「トゥラグス商会と革命軍政府の名義で、購入します。」


これがユージからの伝言。


「はい…?」


それと、ユージからの任命。


「私は革命軍内政官、カルラ=フォンテーヌです。」


 ♦︎


ガタガタガタ。


機織り機の動く音。


これを聴き続けて何週間?


クレナ=コルチョーです。


ヒラルトス公国に生まれて、幼い頃から国のために働けと聞かされ続け、13年。


革命、だなんて頭のおかし騒ぎを起こして、しかも失敗した。


そんな祖国のために働くなんて、そんな気力は起きなかった。


『おい。早く着替えろ。次は奴隷役だ。』


そんな指示を受けたのは1ヶ月と少し前。


革命軍との交渉の時だった。


『製鉄技術を盗んでこちらへ伝えろ。』


この指示は、私にとって1番欲しい指示だった。


なんせヒラルトスから、祖国から抜け出せるのだから。


帰りの馬車の中で、革命軍の偉そうなお兄さんは言った。


『持ち物全部出して?』


…バレてますやん。


もはや抵抗などする気は起きませんでした。


『手紙書くの?』


バレてますやん。


素直に白状しました。


それが逆にお兄さんには不思議だったのでしょう。


ずっと疑いながら、私を技能実習生としてちゃんと扱ってくれた。


手紙の許可も受けた。


この国はすごい。


本当に1から国が始まる瞬間を目撃しているようで、興奮する。


共同炊事場の開業告知があった。


来週に始まるらしい。


楽しみ。


その旨を知らせる手紙を書いた。


祖国も少しは変わればいい。


そう思ってはいるものの、変わったところで帰るか…?


いや、多分帰りません。


この国を、ずっと見ていたい。


それくらい、私はこの国のファンになってしまっている。

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