問題は山積み
一通り農村への調査は終了した。
やはり大きな問題は水と火だ。
だがもうそこはどうさることもできない。
いっそ魔法を一部認めてしまおうか。
いや、ダメだ。それは世界を壊す。
なんのためにここにいるんだ。僕は。
予想外だったのは道路の整備具合だ。
想像よりずっと良い。
農産物は安いが調理を挟むと高くなる。
さてと…。
♦︎
一週間が経った。
鉱山町から送られてきた鉄を見て、商会長は笑った。
「これはなかなか良さそうですね。」
ただの延べ棒だけじゃなく、ナイフや剣なんかも作ってもらった。
「良いでしょう。この優遇を受けられるなら、炊事場には協力しますよ。」
思ったよりすんなり協力を得られたのは良かったが、問題は…。
「公務員?」
パン屋の店主は言った。
食材の優遇、コスト削減、そして。
人件費をこちらが決定したのなら、共同炊事場の採算は確保できる。
「簡単に言えば、共同炊事場で働いた分の給料は、売上に関わらず一定。そもそも皆さんに出費はないので、どれだけいっても黒字というわけです。」
「なるほど…?」
「普段の店では別にそんな扱いはしないので、半公務員って感じですかね。減税はちゃんとしますよ?」
「なるほど…。」
「ちょっと待ってください。」
司祭が声を上げた。
「それでは国が回らなくなるのでは?」
その疑問はもっともだ。
「食材費は抑えられていて、優秀な燃料も開発中、とは言え確かにそれだけだは足りません。」
だが、そもそも。
「国として、この施設に利益はあまり求めていません。イーブンなら万々歳です。」
驚く司祭を無視して、目線を移す。
「商会長。」
「ん?」
「現状、ヒラルトスとエデアランドとの取引は可能ですか?」
「そりゃあもちろん。その2カ国は味方ですしね。ヒラルトスに関しては、ほぼ傀儡でしょう。」
「先ほどお渡しすると言った鉄。2カ国へは売れますか?」
「なるほど。あなたは私に金を返して欲しいらしい。」
「でなきゃ困るもので。」
「私がNOといえばそちらは単独で国交を開いてあの鉄の利益を独占できる。YESと言えば、貿易の利益に応じて税を取るつもりですか。」
「お見事。」
前半の方はぶっちゃけ考えていなかった。
でも確かに、気づけばうまいこと追い込めていたな。
「かぁ〜。やられましたな。それでなくても、あの鉄は欲しい。良いでしょう。応じますよ。」
なんだか運も味方したが、とりあえず共同炊事場の件は実施の方向で固まった。
♦︎
実施するとは言え、問題は山積みである。
土地、宣伝、設備。
まず土地だが、教会前の広場が第一候補だ。
ここはみんなが集まるにもってこいの場所。
しかし窯や井戸を設置することを考えると少し外れる方がいい。
井戸の場所を整理すると伏流がありそうな感じだ。
何ヶ所か候補はピックアップできたが…。
「結構歩くね。」
リェレンは言った。
「ねぇ〜。」
久しぶりの3人行動だが、やはり僕らのやることは変わらない。
ただ歩く。
地図を確認する。
「この辺りだわ。」
30分くらい歩き続けてやっと到着したのは小高い丘の上だった。
「ふぅ〜。結構歩いたね。」
「でも、ここ広いよ。」
本当に、十分広い。
道を整理したとして、近くの小川も使って銭湯を作ればサービス拠点にはなるか。
いやでも。
「一旦保留で。もっといいとこあるかもだし。」
しかし、その後の候補地はどれも…
「ガタつきすぎ!」
「狭い!」
「林は、壊せないよな…。」
結局、最初の候補地に戻ることになった。
♦︎
「この土地に炊事場と教会を建設すればいいんですね。」
「はい。お願いします。」
建設は教会と建築家ギルドが共同で行う。
僕の名義でギルドへ依頼を出す。
建築家ギルドはその依頼を受けて、材料各種を扱うギルドにまた依頼を出す。
そのおかげで依頼料がバカみたいにかさむ。
このシステムもどうにかしたい。
私怨ですよはい。
炊事場のデザインや井戸掘りなんかは僕らも共同で行った。
教会を建設するのも大切だ。
まだ市民の中には熱心にエテルネス信仰を行う者もいる。
それは素晴らしいことだ。
魔法を目的としない信仰を許可しないわけにはいかない。
そうでなくても今回建設する教会に、主神はいない。
皆がそれぞれの神を信仰するための教会になる。
信仰も言論も、なるべく自由にしていきたい。
法律の整備もしていかないとな…。
問題は山積み、か。
また小さな一歩。
これを繰り返せば、きっとどうにかできる。




