会議
久しぶりにトゥラグスに帰ってきた。
流石にまだ不便はあるだろうが、少し活気が戻ってきた。
「ユージ。」
街を歩いていたところ、カルラの声がした。
「どう?なんか問題は?」
「一応井戸掘りとかは上手くいって、本当に最低限はなんとかって感じ。」
なるほど。
マッチとかあれば便利になるか。
だが、あれの仕組みはわからん。
火打ち石は一応鍛治師の町にはあったが、まだ高価だった。
「食事は?」
「パンを焼くのも一苦労。生で食べられる何かがないかな〜って調査中。」
そうだよなぁ。
「カルラ。」
「ん?」
「司祭と商会長、市民代表と何人か店を出してる人を教会に呼んで欲しい。」
ここは、多少強引に動くことにする。
♦︎
「一体なんでしょうか。神の御使い様。」
嫌味な態度は商会長だ。
「手短にお願いしたい。調理に時間がかかってしまうんです。」
パン屋の店主も不満げだ。
思ったより人気ないなぁ。
「昨今の食料問題。原因は?」
司祭に目で問う。
「魔法を使えないので、調理にかかる人為的コストが増えたことです。」
物怖じせずにそう言い切った。
僕は別に独裁者じゃないので、そう言う意見もバンバン欲しいが、勇気の要ることだろう。
「その通り。どっかのお偉いさんのミスですわな。」
店主はやはり僕が嫌いらしい。
少し傷つく。
「まぁ、否定しません。ここまでの影響が出るとは思いませんでました。」
顎をあげて舐め腐った態度の商会長と店長も、僕の提案は予想できていないだろう。
「共同炊事場を作りましょう。」
僕の提案に、2人は次々反論を繰り出した。
「何を言っているんだか。」
「そんなことになんの効果があるんですか。」
「一つ。」
そんな彼らを黙らせるように僕は言った。
「水汲みが楽になる。」
今では店から井戸まで歩いて水を汲んでいる。
井戸の近くに炊事場を作ればその問題は解決する。
「一つ。火おこしのコストが下がる。」
共同炊事場なら、店の数だけ火おこしの回数が減る。
「利益は?」
「共同炊事場は、僕らで管理。通常の4分の1くらいの価格が理想です。代わりに出店したなら減税、加えて何か褒美。でどうです?」
パン屋の店主はそれで大人しくなった。
「商会長。」
「うん?」
先ほどまでの舐めた態度は消え、真剣な商人の眼差しの彼に、一つ提案をした。
「共同炊事場へ、食材の優遇をお願いしたい。」
「断る。それで私に利益が?」
「ゼロです。」
「では何も手出しはすまい。」
流石に硬い。
しかしこの交渉は不利だ。
これ以上商人を優先すれば国家の危機。
「鉄に、ご興味は?」
ならば、諸刃の刃さえ使う。
「ほう?」
「現在より良質な鉄を現在から値引きして売らせましょう。」
コークスの利益を振り翳せば、あの町は僕のものだ。多分。
「良質ねぇ?」
「これは極秘なので、また後ほどでどうでしょうか。」
「まぁ、構わん。結論は先延ばしにしよう。」
♦︎
結局、共同炊事場の方の話はまとまらなかった。
むしろまとまらなくてよかっただろう。
流石に採算が取れない。見通しが甘かったな。
商会長との鉄の件だが、向こうの町の教会に早馬を出した。
1週間ほどで到着するだろう。
それまでにすべきことは、
①共同炊事場の採算手段確保。
②食材調達手段の整理。
①の方は、ぶっちゃけ交渉の席を迎えないとわからない。
②の方が今からでも動けそうだ。
全く、国家経営はこんなに大変なのか。
ため息を飲み込んで、トゥラグスの街の外に広がる農地に向かった。




