方針
国際平和会議ーー
元いた世界で言う国連。
80年前のヒラルトス公国の成立時に、エデアランド北東の大都市シラプに設置されたその議会は国際的に重要な決定をおこなってきた。
今の国境も全て平和会議の決定だ。
3大国と呼ばれるエデアランド、エテロネア、ヒラルトスは常任理事国的な権力を持ち、僕らの革命軍領が正式な国になるためにはその3国の承認が必要となる。
エデアランドとヒラルトスに関しては大きな問題もないと思うが...。
「問題は帝国だよねぇ...。」
カルラは机に突っ伏す。
僕らの革命とほぼ同時進行で帝国南部では教会本部が蜂起を起こしたが、あっけなく鎮圧されてしまっていたらしい。
かなり領土を削ったとはいえ帝国の力は健在。
帝国がNOと言えば、僕らの領土は国として認められない。
おや…?
「今気づいたけど、ヒラルトスに下って自治権をもらえれば、僕らのやりたいことはできちゃうんだよね。」
そうだ。何も国として承認されなくちゃいけないなんて事はない。
実際のところ、ヒラルトスは公国だ。
ヒラルトス国王はペレトという国の公爵に過ぎない。
まぁもうペレトなんてあってないような国だが…。
自治権を持っただけの土地が国として認められる場合もあるわけで、そこを焦る必要なんてどこにも。
「今回の革命に関してですが。」
1人で思考を巡らせていたところに、ヒラルトスの役人が口を挟んだ。
「ヒラルトスとしては8割と言ったところです。あなた方のおかしな演説さえなければ100点だったというのに。それで傘下に入って自治権を獲れると?」
…確かに。
革命でせっかく取った優位を易々と手放す事はしたくない。
「ならやっぱり帝国に頼むしかないんじゃん。」
今まで黙って話を聞いていたリェレンも入ってきた。
ーなんだ。理解できたんだ。
そんな傷付けるような発言は、多分カルラが許さない。
「そうだね。でも頭を下げるのはなぁ。」
依然として、帝国と僕らの拮抗は続いている。
山脈を越えることが禁止されているのが、向こうの警戒心の現れだ。
こうなったら。
「向こうから頭を下げさせるしかないね。」
幸いエデアランドとヒラルトスは僕らを認めている状態だ。
この2カ国や他にも一応ペレトなんかとも交渉しながら徐々に国力を高め、外堀も埋める。
そうすれば帝国も僕らを認めざるを得ない。
国として認定されるより先に、国力の増強が課題だ。
♦︎
「これを、どうしろと?」
日が燦々と照りつける真昼間。
僕は司祭たちを呼び出した。
彼らに手渡したのは、木の棒。
その辺に落ちてたいた木の棒だ。
「君らは今まで民を騙してたわけだ。それが正しいと信じ込んでね。」
そう言うと、彼らは肩を落としてしまった。
「とりあえず、罪滅ぼしみたいなイメージだよ。この木を使って火を起こす。その方法を民に伝える。」
彼らは敬虔な信徒だった。単にみんなの幸せを祈れる。
そして賢い。
おそらく、魔法文明以前の火おこしくらいなら知っているはずだ。
「それが、神の教えですか…?」
1人が声を出した。
「僕からのお願いです。あなたの信じる神がどう言うかは、あなたにしかわかりません。」
彼は少し黙った後、言った。
「わかりました。」
♦︎
国力の増強、すなわち生活レベルの向上。
軍事力なんてものは整備すればするだけ他国の反感を買う。
貿易競争も、国として認められていない今はできない。
まずは国民。次に産業、最後に外交だ。
今、僕らの国では魔法は禁止。
火を起こせない、水も汲めない、そんな人々が暮らしている。
南方では返り討ちにあったとはいえ、こちらではまだ教会は正義の味方だ。
彼らの指導のもとであれば、国民も安心だろう。
広場の真ん中で火が起きたことに驚く声がする。
誰1人、疑いの目を向けてはいない。
ー良かった。
残りしておくべきことは…かなり多い。
それでも、恐らく1番重要度の高い場所へ僕は向かった。




