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君と伝える物語

 世界には、奇跡が満ちている。


朝になれば日が昇り、草木が茂り、花が咲く。


生き物が生まれ、それが世界を創り出す。


人は、その奇跡を精霊と呼んだ。


そして、聖霊の母を、神と呼んだ。


木を切って、こすり合わせれば火が付いて。


雲が集まって、雨が降れば川ができて。


そんな奇跡を精霊と呼んで形作って、そしてそれを使役した。


そうやって、魔法が生まれた。


人は神に感謝した。


「世界を創ってくれて、どうもありがとう。」


だが神は知らない。


本来世界に、精霊なんていないことを。


それでも神は存在した。


人が神を信じたから。


そのうち、世界の奇跡を使うのにも限界が来た。


世界の奇跡は失われ、歪んだ世界が現れた。


人はそれをダンジョンと呼んだ。


世界の北端。


その場所は、魔法の使用が盛んだった。


やがてその場所から、世界の奇跡は消えた。


その土地ではもう、魔法は使えない。


木は育たない。花も咲かない。


もしかしたら、太陽さえ届かない。


頭のいい人間は、その全てに気がついた。


頭のいい人間は、そうでない人を騙して生きてきた。


だから祈った。


「世界に通じない奇跡をください。」


神は応えた。


それが、治癒魔法。


治癒魔法は、やがて信仰を揺るがす。


神の血や、力は、人間世界には強すぎた。


だから、神も、その血を継ぐ治癒術師も、魔法を嫌った。


時に、才能だけで神を見出すものがある。


自分だけでは理解できない力を、その在処を、神に求めた。


そうやって、勇者は生まれた。


神は勇者を愛した。


揺らぐ世の中、揺るがないのは最早彼女からの信仰だけだった。


神は許した。


彼女に、世界を動かす力を与えることを。


彼女に、世界を壊す仲間を与えることを。


私は、どれだけ伝えられるだろうか。


神のこと。ユージのこと。カルラのこと。


これからの、世界のこと。


青い空。


神様は、いるようでいなくて、それでもやっぱり、私たちを見ている。


だから生きていけるんでしょう?


正面に座る男の子。


ここまで私を連れてきたくれるとは思わなかった。


おかげでやっと、勇者になれるよ。


世界を変えよう。


君と、私で、伝えよう。

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