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革命の終わり

 「魔法を途絶えさせよ。」


交渉の場、僕は一言そう言った。


直後、空気は凍った。


教会関係者も、ヒラルトスの軍部も、目を見開いた。


どうやら思い出したらしい。


自分たちが力を分けたことを。


他でも無い、自分たちのためだけに、他人に力を与えたことを。


「お前が英雄か?」


エデアランドの大男はこちらを向いて言った。


「ええ。そうらしいですよ。」


ここではまだ、四つ巴を崩す理由はない。


もうエデアランドを得たことはほぼ確定している。


あとは条件を整える。


「神からの啓示というのは、お前らが大好きなエテルネスからのものか?」


「どうでしょう。神は人それぞれですから。」


「なるほどなぁ...。」


大男は正面向き直し、教会関係者に質問をぶつけた。


「お前たちの目的は、一体何だった?」


「...腐った帝国を、正すことです。」


教会の関係者は正解をわかっていない。


それだけ混乱しているということ。


「正当な神の血を継ぐものが、エテロネア帝国の王に相応しい。だったよなぁ?」


「えぇ。もちろん。」


「なら、お前はこの場に不要だ。」


教会の関係者の顔は、一瞬で真っ青になった。


しかし、ここで追い出されては困る。


「少々お待ちを。」


大男の目線がまたこちらを向く。


僕の意見というよりも、僕の立ち回りを試すような視線だった。


「エテロネアの国民は、まだ行く先が分からないのです。教会のような心の拠り所は大切です。」


「ほう?」


「私としては、旧帝国領には新たに教会の国家を建てるべきかと。」


「なるほど...。それであれば再び反乱が起こる心配もあるまい。」


教会関係者とヒラルトスの軍部は、もう話についてきていない。


大男は呆れたように言った。


「教会は神の声など聞いていない。それをそこの英雄は示した。それをバラされたくなければ旧帝国領を引き継げ。」


半ば脅迫。


しかし、教会の当初の目標は達成される。


教会関係者は、ただ真っ青な顔で俯くだけだった。


「お待ちください!」


ヒラルトスの軍部が声を上げた。


「英雄の出身は我がヒラルトスです!教会は我々に帰属すべきだ。」


そんなことを、今この場で言ったところで...


「好きにしろ。」


大男はそう答えるだけだった。


 ♦︎


教会とヒラルトスを抜いて、エデアランドとの1対1の話し合いが始まった。


「お前たちはどうするつもりだ?」


そう聞く大男には、さきほどの威圧感は感じられない。


「そうですね。とりあえず教会とヒラルトスを黙らせる要素をもう少々持ち合わせていますので、それを使って旧帝国領の市民の懐柔を手伝わせます。」


「心底恐ろしいガキだな。」


少し口角を上げて、男は言った。


「エデアランドとは、是非とも仲良くしていたいと思っていますが、ひとまずは見守っていただければ。」


この男のことも、信用してはいけないのだから外交というのは大変だ。


それでも、エデアランドを手放すバカはどこにもいない。


「あぁ。こぼれ球は拾うがな。」


男は、今度は歯を見せて笑った。


まるで、新しい餌を見つけたかのような顔だった。


 ♦︎


会議を後にして、陣営へ戻る。


「なんてことをしてくれたんだ!」

「誰のおかげだと思ってあのような暴挙を!」


口々の批判も、リェレンが剣を抜き黙らせた。


「皆さんに英雄の始末はできない。始末すれば、革命は失敗する。皆さんに嘘を白状することはできない。革命が失敗するから。」


腰を抜かして地面にへたり込んだ偉そうだった両者に言う。


しかしそもそもーー


「僕らを頼った時点で、皆さんの革命は失敗だったんですよ。この講和の通りにするのが、一番いいと思いませんか?」


みっともなく尻餅をついて、40半ばでこんな格好になって。


それでも権力とお金が欲しい、か...。


子供のような人間に権力などは持たせられない。


「まぁ、あとは僕の指示に従ってください。旧帝国領は皆さんでどうにかしていただいて結構ですから。」


 ♦︎


僕らの交渉のみが大成功した西部戦線から馬車を出してトゥラグスへ戻る。


いよいよ革命も大詰めだ。


「レン。」


馬車の向かいに座る少女。


リェレン=クリスティ。


この革命の主役は彼女だ。


いずれ教科書にこの革命がのったとして、そこにイサゴ=ユージも、カルラ=フォンテーヌも必要ない。


そこに書かれているのは、きっと彼女になる。


「頼むよ。」


気づけば2人に話していた、革命の全貌。


リェレンは笑った。


「任せて!」


この革命の後、僕らは歴史に名を残す。


それは、ある人からは英雄と、ある人からは悪魔と呼ばれる、そんな当たり前の終結。


揺れる馬車の外には、透き通るほどの青空が広がっていた。

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