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出発

 「はい、依頼の達成を確認しました。報酬の450ペリルです。」


ギルドに帰り報酬を受け取る。


流石にこれだけではあと1日くらいしか生きられない。


何かデカい依頼を探す。


ーお。


『ノラムギルド連携依頼 荷馬車の護衛 報酬500ペリル』


ノラムーー


ギアソ山脈の麓の都市。


僕らの次の目的地。


目的地までの護衛をこなせば金をもらって運んでもらえる。


「この依頼ってどう?」


カルラに聞く。


護衛が必要なくらいこの辺りの獣は危ないのか、盗賊でもいるのか。


「ん〜。大変だよ?徒歩だし。」


ん?


徒歩?


「何日かかんのさ。」


「3日くらい?」


3日間歩き続けんの?


「行けるよ!行こう!」


葛藤する僕の後ろから、リェレンが声を上げた。


 ◆


「それでは、本日はどうぞよろしくお願いします。」


商会の男は頭を下げた。


メディオ商会はノラムと首都エテロネオンを結ぶ道を開いたことで莫大な富を得た。


ここから歩く道はノラムと繋がる数少ない道の1つ。


普段なら税を取られるところだったが、今回はそんな商会の依頼なわけで、税関もスルーできた。


歩き始めた道は舗装もされていない、木の根がむき出しになっているようなただの山道だった。


商会の男を先頭に左右をリェレンとカルラ、最後尾を僕が守るかたちになっている。


何から守ればいいのかーー


先程の交通税に良くない感情を持つ人間は、林のなかにひっそりと隠れ、商会の人間を殺している、そんな噂があるそうだ。


つまり、相手するのは悪意に満ちた人間ということ。


ー嫌だなぁ。


人の喉元に刃を突き立てるような経験は、もうしたくない。


 ◆


歩き始めて小一時間。


僕らより大きな荷物を背負った商会の人たちの息が上がり始めた頃ーー


「いった!」


そんな声とともに、誰かが倒れる音がした。


10人ほどの集団が止まる。 


誰かが転んだらしい。


「ユージ!」


リェレンが僕を呼んだ。


人垣をかき分け彼女のもとへたどり着く。


一人の少女が、倒れ込んでいた。


「大丈夫?」


声をかけるが、その少女は痛みに気を取られている。


靴が脱げているのを見ると、足をぐねったのか…。


しかし…。


「治癒魔法はだめだけど、なんとかならない?」


リェレンは僕に言う。


思い出すのは、向こうの世界にいた時の記憶。


痛みも処置も、覚えている。


先頭の男に聞く。


「1時間くらい休めますか?」


 ◆


いったん少女の痛みが落ち着くのを待つ。


顔や腕の傷はカルラの水魔法で洗い流した。


「あの…。」


少女が口を開いた。


「どこが痛いか、教えて。」


彼女が指さしたのは、やはり靴の脱げた方の足首。


靭帯か、最悪骨折…。


山中はそれほど危険だ。


リェレンとカルラには周囲の警戒を任せた。


僕は服の袖をちぎって包帯代わりにして彼女の足首を固定するようにして巻きつけた。


彼女が運んでいたのは木の枝。


野宿する時の必須アイテムだ。


彼女をメディオに帰すかノラムへ連れて行くか…。


帰すとなれば、もう一人付き添いが必要になる。


人数的に考えて、僕たち3人はこっちにいるべきだ。


連れて行くのが賢明か。


「とりあえず、僕が背負ってくよ。」


少女の頭をポンと叩く。


安心したような表情で、少女は言った。


「ありがとう!」


 ◆


はぁ…はぁ…。


疲れた…。


少女を背負って、自分の荷物は前に負う。


多分一番重いのは…


少女の背負っている薪代わりの枝たちだ。


3日間歩き続けるのだから、それだけ必要になるのはわかるが…。


「ごめんね、迷惑かけて。」


少女は言う。


「ん?いやいや。金もらってるからね、こっちも。」


あとで上乗せ請求しようとも、ちょっとは思っていたが…。


「優しいお兄ちゃん、好き。」


そう言って少女は僕の肩に頭をうずめた。


見見た目で言えばまだ10歳にもならなそうな少女が、こんな重い荷物を背負う。


改めてエグい時代だ。


少女は、そのまま眠りについてしまった。


 ◆


「え、娘さんなんですか?」


3時間ほど歩いて、2回目の休憩。


僕が背負っていた少女は先頭の男の娘だったらしい。


ならお前が背負えよ、と言いたくなるところだが、彼の背負う荷物の量は半端じゃない。


それこそ、薪なんか比べものにならないほどだ。


ー歩荷、って言うんだっけ、それみたいだ。


「娘を助けてくれた分だ。受け取れ。」


そう言って男からは300ペリルが手渡された。


追加報酬…。


「どうも、どうも。」


悪い顔をしないように、必死だった。


「そういえばユージ、よく対処法知ってたね。」


隣に腰掛けたカルラが言った。


「僕も前に同じ怪我したんだよ。」


高2に上がったばかりのころ。


まだ部活に本気で、総体予選に向けて練習を重ねていた時だった。


ほんの一瞬、足首がぐねりとまがった。


耳の奥まで、骨の鳴る音が響いた。


「あれは、痛かったなぁ〜。」


左の足首に、もうその傷跡はないけれど、確かに記憶として、こころにそれは残り続けていた。

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