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特別要請

 神聖エテロネア帝国内屈指の大都市、ネペロ。


大きな通りの、両側に数多くの店が軒を連ねる。


人もそこそこに多く活気がある。


「とうちゃ〜く!」


リェレンは元気よく馬車から降りる。


「飛んだら危ないよ。」


彼女の幼馴染、カルラもあとに続く。


「ほら、ユージも。」


差し出されたリェレンの手を取り、僕は馬車を降りる。


職業、冒険者。


目的、魔王討伐。


僕らは、その一歩を踏み出した。


 ◆


「2部屋で1泊1,200ペリルになります。」


ネペロに着いた段階で、僕らの財布には2,800ペリル入っている。


1,200ペリルくらいなら払えそうだ。


「どうする?お金は余裕あるけど。」


リェレンに耳打ちする。


「迷う理由ない。」


彼女はそう言って宿の受付のカウンターに手を置いて、ずいっと乗り出した。


「お願いします!」


広い受付に、彼女の声が響いた。


この世界初めての、宿泊だ。


 ◆


案内された部屋は思っていたよりも広く、ベッドと机が備え付けられていた。


僕はよく入院生活をするからベッドにはそれほどのありがたみは感じないけれどーー


あの二人は違うんだろうなぁ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「フッカフカ。」


案内されたベッドに腰掛けた瞬間、全身の力が抜けてそのまま仰向けに倒れ込んだ。


「レン、せめて防具は外しなよ。」


カルラは荷物を置きながら言う。


ーまぁ、確かに。


私は体を起こして防具を外す。


アームガードは左腕の分しかない。


私は右の腕を撫でる。


確かにあの時、私の右腕は食いちぎられた。


痛みで気を失っている間に、気づけば腕は生えていて、崩れた家に向かってカルラが懸命に叫んでいた。


「痛いの?」


黙ったまま右腕ばかり見ている私に、カルラは声をかける。


「ううん。」


多分、治癒魔法は請け負う魔法なんだ。


私の傷とカルラの傷をユージは請け負った。


一時的に体の機能を失うだけなら、まだいいのだがーー


「もうユージに治癒魔法は使わせたくないね。」


もし代償が彼の寿命であったなら。


そう考えるだけで、言いようのない恐怖を感じた。


「まぁ、ここは特にね。」


カルラは私の意図とは違うように解釈したみたいだったが、彼女の言葉も理解できる。


ネペローー


この都市の管理権を持っているのはほかでもない、エテロネス教会、ユージの治癒魔法を狙う集団だ。


「とにかく、早めにここは出たほうがいいね。」


「そうだね。」


カルラも、ユージも。


私を"勇者"と認めてくれた。


2人のためにも、私はもう止まるわけには行かない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


腹の虫が鳴り始めたので、夕食へ誘おうと思い、2人の部屋をノックする。


「2人とも〜、そろそろご飯どう?」


時刻は20:00。


朝ごはんを食べたのは6:00だからもう14時間も何も食べていない。


1日2食には慣れたけれど、流石に腹ペコだ。


なのにーー


なんで返事しないんだよ。


さっきよりも強い力でノックする。


中で、ゴトッという音が聞こえる。


「は、はい。」


寝癖のまま、カルラがドアを開けた。


 ◆


「全然気づかなくてごめんね。」


カルラもリェレンも2人で昼寝していただけだった。


カルラがリェレンを起こして、2人してわざわざ身支度もしてくれた。


「いやいやこっちこそ。疲れてたんなら寝ててよかったのに。」


彼女たちにとっては久しぶりのベッドのはずだ。


邪魔してしまって申し訳ない。


「それだと私餓死する。」


リェレンが言う。


「私も。」


カルラも同意した。


「じゃあ、美味しいもの探そうか。」


2人の優しさには、まだ頭が上がらなそうだ。


「待ってユージ。」


リェレンが僕の手を引いた。


「どしたの?」


そう答える前に、振り向く間もなく引っ張られる。


「ここは教会の管理する都市だから。一人では絶対に行動しないで。」


ー!!


教会の管理する都市…。


「わかった。」


そう返事すると、彼女は手を離した。


ーなるほど。


おそらく奴らはここでなにかワンアクション起こしてくる。


狙いはもちろん僕の治癒魔法。


この都市からは、早くでたほうがいいな。


「飯食ったら、ギルドにも行ってみよう。依頼は早いうちに決めたほうがいい。」


教会から何か依頼されれば、それが僕らを狙った悪意ある内容であることは今からでも予想できる。


先に手を埋めておけば、向こうからも無理強いはできまい。


さっきまで綺麗だったネペロの街は、気づけば不穏な匂いに満ちていた。


 ◆


「依頼の受諾ですね。冒険者の登録証をお願いします。」


夕飯を済ませギルドで依頼を見つけ、受付に持っていった。


「お願いします。」


身分証サイズの登録証を手渡す。


受付嬢はそれを確認すると、


「あ…。」


と小さくこぼし、一瞬固まる。


そして、


「少々お待ちください。」


そう言って裏手へ行った。


ーまさか。


良くないシナリオが頭をよぎる。


「リェレン=クリスティさん、カルラ=フォンテーヌさん、イサゴ=ユージさん。皆さんへは教会からの特別要請が出ています。」


ーやっぱり…。


「先を越された…。」


リェレンも小さく声をこぼした。


ネペロに到着すれども、世界は変わらない。


『新ダンジョンにおける行方不明者の捜索』


それが、僕らに課せられた新たな依頼だ。

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