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ダンジョン② 崩壊

 「ハァ、ハァ…。」


耳鳴りと、目眩と、吹き出る冷や汗。


「ユージ…。」


驚いたリェレンの声がやけに遠い。


たまらずその場に腰を下ろす。


ー落ち着け。深呼吸だ。


ひとまず頭を落ち着けて、次に呼吸を整える。


段々と目眩はひいていく。


両手を地べたにつけて天井を仰ぐ。


ここはダンジョンの中だ。


今目に見える空が、ダンジョンの天井。


「大丈夫?」


カルラが顔を覗き込みながら聞いてくる。


「うん。落ち着いた。」


そう答えながら立ち上がる。


僕が使った治癒魔法ーー


それは、世界でも限られた人にしか扱えない特別な力。


使える自信はなかった。


それでも、確かにリェレンの腕から傷は消えた。


「それじゃあ、また捜索するけど…。」


リェレンもまだ驚きが消えていないのか、歯切れが悪い。


「前に話したけど、その力は私たちがいないときには使わないでね。」


カルラが耳打ちをする。


世界で限られた人にしか扱えない力は、色々なところから欲しがられる。


現に教会の変なおっさんは絡んできた。


「わかってる。」


とにかく今は、依頼に集中だ。


 ◆


また歩くこと小一時間。


行方不明者は依然として見つからない。


魔物とは2体遭遇したが、いずれもリェレンが潰した。


そのたびに、彼女の反応がおかしかった。


「ねぇレン。さっきから手を見てるけどどうしたの?」


そう、彼女は魔物を倒すたびに自分の手を凝視していたのだ。


「いや、なんとなく時間が変というか。」


彼女にしては珍しくはっきりしない答えだった。


「攻撃まで普段と差があるってこと?」


正直見ているだけではそんな感じはしない。


「うん。遅かったり、逆に早い時もあって。」


彼女はまた、両手を見つめる。


彼女の力の源が分からない限りはどうしようもない。


「とりあえず、攻撃がとどかなくなったときはーー」


逃げればいい、そう言おうとした時だった。


ーパチン。


何かが弾けるような音が響き、建物の影から、血が飛び出した。


ーなんだ?


警戒を強めて、その影を覗く。


ー!!


まるで、リェレンが潰したかのような魔物の死骸が、そこにはあった。


「どういうー」


カルラの言葉は、そこで遮られた。


代わりに聞こえたのは、「ウッ…。」という小さなうめき声。


カルラの方を見ると、横腹を抑えて膝をついていた。


「大丈夫?!」


彼女の防具には傷が見えた。


どういうことだ。


あたりを見渡しても、どこにも魔物の姿はない。


リェレンもただぐるぐる周りを見るしかできない。


ー時間が変。


リェレンの言葉。


もし仮に、ここが時間の狂ったダンジョンならーー


「一旦、出口に向かおう。」


リェレンに提案する。


最悪の場合…僕らはこのダンジョンから出られない。


「…わかった。」


何が何だか分からない。


それはリェレンとて同じ。


彼女と出会ってもうすぐ一ヶ月が経つ。


僕の勘の良さは信頼してもらえているようだった。


カルラを抱えて、僕とリェレンは出口へ向かった。


しかしーー


地を這う、あの音が聞こえてきた。


「クッソ!」


リェレンが唇を噛む。


ーこんなときに!!


1番、今現れてほしくないのは、強い魔物だ。


しかし、地を這うその音は、間違いなく強い魔物のものだった。


「来るぞ。」


リェレンのひと言で、僕は一気に集中を研ぎ澄ます。


長い道のその角から、それは現れた。


ーまさか…。


それは、ただ人を大きくした姿の、巨人だった。


リェレンは手を前にだす。


また潰す気だ。


しかしー


「つぶれない?!」


彼女が驚く間に、巨人はもうすぐそこまで来ていた。


無表情で大きな手を叩きつける。


僕はカルラを連れて物陰に隠れる。


心音が早い。


もしかすれば、このダンジョンで、僕は…。


嫌な考えが頭をよぎる。


リェレンは剣を出して戦っている。


目を閉じて考える。


僕も属性魔法は一度きりなら使える。


カルラを回復させて僕が動けなくなるか、僕が動けなくなってカルラもこのままか。


ーカルラが必要だ。


彼女の腹部に手をかざして、またイメージする。


腹部の傷は、おそらくこの巨人との戦いで彼女が負うはずのダメージが先にやってきたもの。


防具越しにここまでのダメージ。


内側からの攻撃か?握りつぶされたのか?


なにも分からないけれど、彼女の腹の痛みをとる。


そのイメージを膨らませる。


しかしー


いつまで経っても、温もりも耳鳴りも冷や汗もやってこない。


ーなんで…。


ここは、時間が狂っているから、魔法も届かないことがあるのか?


「グハァ!」


リェレンの悲鳴とゴンッという硬い音。


急いで顔を出す。


ー!!


向かいの建物の壁にぐったりと倒れる彼女。


そして、僕の足元にーー


彼女の腕が、千切れていた。


「おい…。」


もう、考えることなどできなかった。

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