7-1 晶人、死の森とアラバス公国の関係について知る
晶人は、なぜ最弱小国家のアラバス公国が維持・存続できているのか、その理由を知ることになります。
晶人は、死の森の空を飛びながら、さらに高度を上げた。
晶人が追放されたアラバス公国が見える。アラバス公国の周囲を見渡すと、東側は全て海だった。西側に目を移すと、公国全てが死の森に囲まれているのが見える。
「なるほどねえ。弱小国家のアラバス公国が滅ばないのは、国の西側や北側、南側が死の森に囲まれているからだな。」
「晶人さん、その通りです。東は全て海。それ以外は死の森で囲まれています。死の森は、帝国軍さえ恐れるほどの魔物や魔人がうろうろしていますからね。だから、アラバス公国の領土を奪い取る旨味がないんですよ。ただし、他の国との交流や貿易ができないため、国自体も発展できないというデメリットを抱えています。」
「へえ、そうなんだな。さすがミニッツだ。」
「それに、アラバス公国の軍事力が弱いのは、元から弱いわけじゃなくて、ときどき死の森から魔物や魔人が国を襲ってきて、暴れまわるからなんです。魔物にもランクがあって、強い順から言うと、3S、2S、S、3A、2A、A、3B、2B、B、というふうに下がって言って最後はFランクになりますね。魔物や魔人の襲来によって、軍事力が削られるんですよ。」
「ミニッツ、アラバス公国を襲うのは、どのランクが多いんだ?」
「Bクラス以下です。」
「人間や亜人たちまで殺されて、食べられてしまうのか?」
「はい。人間や亜人たちの肉は、柔らかいからです。」
「それは聞き捨てならんな。」
「アラバス公国には、規模は小さいですが、ランスを使いこなす精鋭部隊がいるので、城には被害がありませんね。」
「ミニッツ、『ランス』ってどんな武器なんだ?」
「細長い円錐の形をした長い槍だと思えばいいです。アラバス公国は、ランス騎馬隊だけでなく兵隊も中程度の長さをもったランス隊がいますからね。白兵戦では強いですよ。」
「ミニッツ、『天』からの情報では、この惑星『レミラス』で起きている侵略戦争は、地球の第1次世界大戦レベルだと聞いているが、他国と戦争になった場合、ランスじゃどうにもならんだろう?」
「晶人さんのおっしゃる通りです。ただ、敵国の戦闘機が『死の森』の上空を通ると、長さ数百メートルのドラゴンの放つ大火炎放射によって、簡単に爆発されるので、地上でも上空でも攻めて来るのが不可能なんですよ。」
「ミニッツ、ドラゴンって禍々《まがまが》しくて、恐ろしくて、国ごと亡ぼす大魔獣じゃないのか?」
「ええ、数千年前の惑星『レミラス』ではそうでしたが、この国のドラゴンは全て聖獣です。我が父の『天』が数千年前にコスモエナジーで聖獣に変えました。他にも、伝説のゴールデンサーベルタイガーとイエローフェンリルという聖獣がいます。この2匹は、ドラゴンより強いですよ。」
「マジか!ドラゴンは聖獣か!そして、ゴールデンサーベルタイガーとイエローフェンリルっていう聖獣はさらに強いのか。逢ってみたいなあ。」
「ドラゴンたちは3Sランクですが、ゴールデンサーベルタイガーとイエローフェンリルは5Zという規格外の強さですよ。父が、この2頭を聖獣にして、今では天の使徒になっていますから、そのうち晶人さんに逢いにくると思います。」
「ミニッツ、魔物や魔人の強さの尺度に5Zって、なんだそりゃ?反則だろう?」
「まあ、そうですねえ。しかし、『天』である父がそういう規格に位置付けるほど強いっていう意味らしいですよ。」
「ドラゴンたちも聖獣だし、5Zのゴールデンサーベルタイガーとイエローフェンリルがいるのに何で、アラバス公国は魔物や魔獣から攻撃を受けるんだ?納得できんぞ。」
「魔物や魔人の数が多すぎて、対応しきれないのが現状ですね。」
「『死の森』の魔獣や魔人って、どれぐらいいるんだ?」
「約1億ぐらいでしょうか。野生イノシシや野生豚、野性牛、野性鹿を入れると、5億頭は超えますね。」
「はあ?なんだそりゃ?なんだその規模は?」
「晶人さん、だって、この小さなアラバス公国の面積だけでも、日本の2倍はあるんですよ。」
「ああ、そうか。惑星の規模を忘れていたよ。まあ、この惑星『レミラス』の大きさは想像を絶するな。」
「晶人さん、時間はかかりますがそのうち慣れてきますよ。」
「うん。そうだな。今日はとりあえずいい土地を探して、仮住まいを立てよう。」
晶人は、猛スピードで死の森をグルグル回り、やっと最適な場所を見つけた。死の森を一望できる台地であった。広さは9万平方kmはある。周囲の山々から清流が流れ、綺麗な水質の湖があった。大きなニジマスや相当大きなトラウトまで泳いでいる。湧水も出ているため、その場所に仮住まいを建てることにした。
仮住まいは、晶人の好きな地震にも強いスエーデン式ログハウスにした。映像や本で読んだスエーデン式ログハウスをイメージし、コスモサイコキネシスで具現化することにした。
「おお~!イメージした通りの仮住まいだ。ぼっけもんずの仲間たちが来るのを想定して、もっと大きくしておこうかな。よし、大きめの露天風呂までつくっちゃえ。」
晶人は、地下3階建て、地上2階建ての部屋数30部屋、トイレを4箇所、40畳のリビングにダイニングキッチン、コスモエナジーによる超大型の冷蔵庫を5つ準備した。さらに地下1階には、武器庫を準備し、地下2階には、示現ストレージから出した大量の食料を保存する超大型の冷凍庫を設置した。そして、地下3階は、取り敢えず空けておいた。そして、最後に晶人の数種類の好きな飲み物が飲める大型機器を取り付け、完成した。晶人は香りのいいキリマンジャロを飲みながら
「うん。我々ながら良い出来だ。さて、次元収納ストレージから肉と野菜とパンを出して調理でもするか。」
簡単な夕食を済ませると、ミニッツに渡された世界地図を眺めたままソファーで眠りについた。
晶人はその夜、夢を見た。これまで多くの女性と出逢ってきたが、あれほど晶人の琴線に触れる笑顔は初めてだった。それほど眩しく人の心に元気と生きる力を与える笑顔だった。顔を思い出そうとするのだが、霞がかって良く見えなかった。
翌朝、フィンランド製のログハウスのウッドデッキに置いたロッキングチェアに揺れながら、目覚めのブルーマウンテンを飲んでいると、念話が入った。
「晶人様、お目覚めでしょうか。私は『天』によって聖獣になったゴールデンサーベルタイガーと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
「晶人様、お早うございます。私は『天』によって聖獣になったイエローフェンリルと申します。どうぞよろしくお願いいたします。早速で申し訳ありませんが、直接、面会に行って宜しいでしょうか?」
「おお、ゴールデンサーベルタイガーとイエローフェンリルか?俺も逢いたいと思っていたんだ、俺の家に来いよ!逢いたいよ!」
晶人に「ゴールデンサーベルタイガーとイエローフェンリル」から念話が入った。どのような出逢いをするのか。そして、その関係はどうなるのか。お見逃しなく。




