2-3 大爆笑!愉快な仲間たち 1
数学塾で出逢った和田秀吉と中鳥俊二と白部和隆。小学6年生で既に「チャリンコ暴走族『鬼地獄の軍団』を結成していた。彼らは人様の自転車を盗み、暴走族まがいのチョッパーハンドルに改造し、挙句の果てに宮司さんに向かって、
「ばーか、ばーか!ばーか、ばーか!ばーか、ばーか!」
と叫んだりしながら、数百段もある急角度の苔むした神宮の階段を奇声を上げて降りていくメンバーの幹部だった。和田秀吉がヘッド。白部和隆が特攻隊長。中鳥俊二が殿を務める親衛隊長なのだ。私は、なぜこんな極悪人どもが数学塾に通っている理由が分からなかった。私は内心、「もう警察に補導されて、改心したのかな。」とさえ思っていた。
彼らと同じ数学塾で会話をすると、意外なことに、どこにでもいる小学生と変わらない。彼らは面白くて親切な奴らだった。会話をするたびに仲良くなっていき、和田秀吉と中鳥俊二と白部和隆のことを徐々に好きになっていった。もう過去のことだけど3人のしたことは犯罪であり、間違っていると確信していた。私は内心、「こいつらと同じ中学か?気が重いなあ~、同じクラスにだけはなりたくないなあ~。」と思っていた。
暫くして、私は中学生になった。めちゃくちゃ楽しい仲間と出逢えた。その一人が野田溜之介という。彼は普段は優しくて温厚な人柄だったが、会話の内容が人とズレていてとても面白い奴だった。しかも、本人自身がそれを自覚していないため、尚更面白かった。
しかし、野田溜之介は、本人自身が人から馬鹿にされていると気付くと、すぐにキレてしまう厄介なところがあった。野田溜之介は、空手の手刀を使って、相手の喉や背中を手加減せずに思い切り突くのだ。私も何度か野田溜之介の手刀を背中にくらったことがあるが、呼吸が長時間できなくなるほど危険でシャレにならぬほどヤバイ技だった。でも、私が悪かった。なぜなら、興味本位で野田溜之介をわざとからかったのだから。
しかし、彼は次元を超えた天然な面白さをもっていた。では、彼がどれほど面白い奴なのか紹介しよう。中学1年の理科の授業中に先生が、
「小学6年生の復習だ。この青いリトマス紙に塩酸を付けたらどうなる?おい、野田答えてみろ。」
野田溜之介は周りをきょろきょろ見回しながら恐る恐る椅子から立ち上がって、言った。
「ぬ、ぬ、濡れます。」
我々は大爆笑の渦に巻き込まれてしまった。理科の先生はT定規を持って野田の頭を叩いていた。私はこんなにも面白い奴に出逢ったことがなかった。私は絶対に野田を仲間にしようと決めた。なぜなら、こんな面白い奴が傍にいれば、一生笑って過ごせるからだ。理科の先生が、
「おい、野田、先生はそんなことを尋ねているんじゃないだろうが、先生を馬鹿にしているのか!」
と怒鳴ると、本人は意に介さず、皆の笑っている顔を見て本人はニンマリしているではないか。
「じゃあ、野田、質問を変えるぞ、今度はふざけるなよ!この赤いリトマス紙に水酸化ナトリウム水溶液を付けたらどうなる?おい、野田、答えてみろ。」
指名された野田溜之介は、やはり周りをきょろきょろ見回しながら恐る恐る椅子から立ち上がって、言った。
「も、も、燃えます。」
我々はまたもや大爆笑の渦に巻き込まれてしまった。クラス中の生徒が大爆笑していたのだ。理科の先生はまたT定規を持って野田の頭を叩いていた。私はこんなに面白い奴に出逢ったことがなかった。この時、私は野田を仲間にするという決意を強固なものにした。
さらに、英語の授業中に動詞の「have」と名詞の複数形を学んでいたときに英語の先生から犬や猫、ライオン、虎、うさぎ、鷲、鳥、亀などの複数形を教わった。英語の先生は教え方が上手いと評判の先生だった。亀の英語はみんな知らなかったので、英語の先生から「turtle《タートル》」と教わり、ノートに10回書いて覚えるように指示を受けた。
翌日、英語の先生が昨日の復習だと言って、数名の生徒に「have」と名詞の複数形の問題を出し、生徒に答えさせていた。そして、ついに野田溜之介が当てられたのだ。
「おい、野田、『私は3匹の亀を飼っています。』を英語で答えてみろ。」
いつものように野田溜之介は、周りをきょろきょろ見回しながら恐る恐る椅子から立ち上がって、言った。
「ア、ア、アイ、ハブ、ア、スリー、スッポンズ。」
クラスは大爆笑になった。英語の先生はブチ切れた様子で、野田の頭に拳骨を喰らわせた。私は、野田溜之介をさらに気に入った。私はこの天然さが大好きになったのだ。
英語の先生の説教は長かった。野田のことを気の毒だと感じた。
「亀は、turtle《タートル》だと教えたばかりだろうが、なぜ亀が英語で『スッポン』なんだ!しかもスリーの前になぜ『ア』が付くんだ?」
英語の先生は、野田が周囲の女子たちに向かって「亀は、スッポンじゃなかったっけ?」と小声で尋ねている様子を見て、またキレてしまった。
野田の伝説はあまりにも数多く、奥深かった。
我々の世代から学校給食に週に2回、パン給食からご飯給食が出るようになった。
そこでまた野田溜之介がやらかしてしまうのである。ご飯給食の際に自宅から「イカの塩辛」の瓶を持って来て、皆のご飯についで回るのだ。それを嫌がった女子たちが担任の先生に直訴に行き、野田はまたもや拳骨を喰らうのである。反省したと思いきや、その翌週のご飯給食の際も「イカの塩辛」の瓶を持って来て、みんなのご飯についで回るのだ。そして、また担任から拳骨を喰らう。
野田の行為に呆れた担任が、野田になぜこのようなことをするのか皆の前で尋ねたところ、野田は、
「おいしいからです。」
と言って、また拳骨を喰らわされていた。そのような行為が繰り返し行われたため、学級の女子全員が遂に動いた。野田に
「イカ臭いからやめてよ!」
と言われたのである。さすがの野田も自分の行為を反省し、イカの塩辛を持ってこなくなった。この話は、未だにぼっけもんずの間で笑い話として酒の肴にされているのだ。
また、野田は文章を書くことが嫌いで、日記を提出しないことが多く、そのたび先生から叱られていた。
ある日、野田は先生から前に来るように言われ、日記を丸めて思い切り頭を叩かれた。先生の怒りの言葉の後、クラス中が大爆笑になった。
「野田、『今日は朝から夜でした。』ってどういう意味だ?日本語になっていないしおかしいだろうが!ふざけて書くな!何が『今日は朝から夜でした。』だ!今まで教師をしてきて、そんな日記を書く奴はお前が初めてだぞ!」
と言われた野田はニンマリするのだった。この意味不明な微笑みが未だに理解できないぼっけもんずであった。
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