2-2 仲間づくりの始まり 2
そして、俺は5年生の3学期に隣町の小学校へ転校した。私はその小学校で人生が一変したのだ。私が今まで転校してきた学校とは、子供たちの雰囲気や態度がまったく違うのだ。私は、その学校で初めて数々の衝撃を受け、善きにつけ悪しきにつけ人生観ががらっと変わってしまった。
俺が転校した初日、ホームルームが終わると、3,4人の友達が私の傍へ寄ってきて、いきなり私の肩を抱いてくる奴がいた。
「俺はよお~、駅前に住んでいるんだ。今日から俺のことを『駅前のプリンス』と呼んでくれ。晶人、お前も同じ登校ルートだから、一緒に登校するベ!」
「ええっ、駅前のプリン?」
「誰がプリンじゃ!駅前のプリンス、福山智勝だ。晶人、よろしくな。駅前通りを歩けば、呉服屋があるからよお、そこが俺んちだべ。明日から誘いに来いよ。」
こんなにも人懐っこい友達は初めてだった。私は強い衝撃受けた。
次に現れた友達は、やたらと体がでかい。そして、その友達は、な、な、なんと、長い白のタイツを履いていた。
「ぼくは、桑田弘正。晶人君、明日から一緒に学校に行こうよ。」
「うん、いいよ。弘正君の家を教えてね。」
彼は自分の自由帳に自宅の場所を書いて説明してくれた。福山智勝君の近所だった。
そして、最後に私に寄ってきたのは、身長が低く体が弱そうな感じの友達だった。
「俺、嶺長鉄之進。同じ転校生同士だから仲良くしようね。俺のことは、『鉄之進』って呼んでいいよ。」
俺は、転校初日から友達に恵まれた。内心、涙が出そうなほど嬉しかった。俺の父はこの街に新築の家を建てたからもう転校はないと言っていた。俺は、やっと念願の自分の仲間がつくれると思った。
でも、私は少し気がかりになることがあった。桑田弘正がなぜ白いタイツを履いているのか智勝に尋ねてみた。
「晶人、弘正は、寒がりだから3学期になると必ず白のタイツを履くべ。足が冷えたら下痢をするんだってよ、ギャハハハハ。」
後で聞いた話だが、福山智勝も桑田弘正も転校生だったらしい。嶺長鉄之進は私と同じタイミングで転校してきた奴だった。彼らなりに友達関係のことで今まで苦労してきたのだろう。
だからこそ、この俺に親切に接してくれたのだと思ってた。その日の下校も、福山智勝と桑田弘正と嶺長鉄之進と一緒に帰った。帰りながらいろいろな話をしたが、話の内容がなぜかエロいのだ。つい私も調子に乗って、エロ話をしたら、いつの間にか俺は「エロ大王」と呼ばれるようになってしまった。福山智勝はみんなからエテ公と呼ばれ親しまれていた。なぜ、エテ公なのかはよく分からなかった。ただ、胸の大きな女の子だけを好きになる変わった趣味をもったいた。
翌日から、桑田弘正と福山智勝と嶺長鉄之進と一緒に登校することになっていた。
まず、桑田弘正君の家に寄った。5分程度待たされたが、直ぐに家から出てきて、お互いに朝の挨拶をした。次が大問題だった。福山智勝君の呉服屋に呼びに行くと、やたらとトイレの時間が長いのだ。私は遅刻だけはするまいと、20分早く自宅を出たのだが、その20分を福山智勝に奪われてしまったのだ。しかも、トイレの時間で。正直なところ、少しイライラしたが、
「いやあ~っ。すまん、すまん。切れが悪くてよお~。」
罪悪感も何もない無邪気な顔で福山智勝に言われると、肩透かしを食らった気分になった。
「智勝、もう時間がねえぞ、あと、嶺長鉄之進の家に寄らなきゃ、走れ!」
こうして3人で走って、嶺長鉄之進の家に寄ったが、鉄之進もハラハラしていたのか、家の前の道路に出て我々が来るのを待っていた。
「急げ、遅刻になるぞ!」
福山智勝が叫んだ。みんな内心、「お前の責任やろうが」という思いが強かった。
そういうことが3学期の間、ずっと続くのだ。
「いやあ~っ。すまん、すまん。切れが悪くてよお~。」
罪悪感も何もない無邪気な顔で毎回こんなことを言われるのだ。
そして、嶺長鉄之進は家から離れた通学路に座り込むようになっていた。鉄之進も諦めた表情をしていた。
「急げ、遅刻になるぞ!」
福山智勝が叫んだ。みんな
「お前の責任やろうが!」
と福山智勝を責めるようになったのだ。
私は、桑田弘正と嶺長鉄之進と話合い、その結果、桑田弘正は近所だからという理由で、福山智勝と一緒に登校することを選んだ。一方、私と嶺長鉄之進は二人で登校するようになった。おかげで、私は時間にゆとりをもって登校することができた。しかし、福山智勝と桑田弘正は常に遅刻ギリギリで走ってきたり、完全に遅刻したりするありさまだったが、悪びれた様子もなく平然としていた。その図太さに私と嶺長鉄之進は驚愕していた。
そして、6年生の2学期の頃から、私は、智篤と弘正に誘われて一緒に数学塾に通うことになった。その塾で出逢ったのが、小学生の6年生の頃から「自転車暴走族」を名乗り他校の生徒から恐れられていた和田秀吉と中鳥俊二と白部和隆だった。私と福山智勝と桑田弘正と嶺長鉄之進は、この3人組に会う前から、名前を知っていたのだ。
なぜなら、全校朝会の時に、怖い生徒指導の先生が朝礼台に立って、
「〇〇小学校の6年生の子供が人の自転車を盗み、改造して、神宮のお賽銭箱からお金を盗み取り、改造した自転車で数百段ある神宮の階段を自転車で逃げ回っているそうだ。本校の子どもたちは、このようなことを真似をしないように。自転車を盗むことも、お賽銭を盗むことは犯罪だから、警察に捕まります。絶対に真似をしてはなりません。」
という指導を受けていたからだ。
そして、2週間ほど後に、たまたま、神宮の前を流れる深い用水路で私と福山智勝と嶺長鉄之進と桑田弘正の4人で釣りをしていた時、実際に、その現場を目撃したのだ。
和田秀吉と中鳥俊二と白部和隆は他の同級生や子分たちを引き連れて、自転車のハンドルをメチャクチャ曲がっているチョッパーに改造し、お賽銭箱から木の棒の先に鳥もちをつけて、お金を盗んでいたらしい。それが見つかり、盗んだ者を取り押さえるために、宮司さんたちから追いかけられていたのだが、殿を務めていた中鳥俊二は、追いかけてくる宮司さんたちに向かって、あろうことか、
「ばーか、ばーか、ばーか、ばーか、捕まえてみろよ!」
と言い放っていた。
そして、改造した自転車で、『ガタン、ガタン、ガタン』と大きな音を響かせながら和田秀吉が、
「ヘーイ、ヘーイ、ヒュー!ヘーイ、ヘーイ、ワオー!」
という奇声を発しながら一目散に逃げて行ったのだ。
目撃していた我々は、
「こいつら、絶対、罰が当たるよな。小学生で自転車を盗み、暴走族みたいに改造して、神宮のさい銭箱からお金を盗み、数百段ある階段を駆け下りていく?挙句の果てに宮司さんに向かって、『ばーか、ばーか』って言ってたぞ。信じられねえ、連中だべ。あいつらはマジでヤバいから関わらない方がいいべ。」
と福山智勝が言った。
「まったくだ、関わりたくねえ連中だ。」
と私が言った。
「少年院行きでしょう。」
と嶺長鉄之進が言った。
そんな思いで私と福山智勝と桑田弘正と嶺長鉄之進は彼らの姿に呆れていた。それにしても、その極悪3人組と同じ塾に入るとは思いもよらなかった。この時期をさかいにして、我々は中学生になると思いもよらない規格外の友達と出逢っていくのだった。
本章に書かれてある内容に、意義や大切さを感じましたら、お友達やご友人、知人、先輩、後輩の方々にご紹介下されば幸いです。




