19-2 キムジョン帝国の壊滅と戦後処理2
晶人の苦悩の深淵を唯一理解することのできるソフィア。晶人は、これからの戦争においても決して死なずにソフィアを守り抜くと誓うのであった。
翌朝、目が覚めると俺はソフィアの胸にしがみついて寝ていたのに気付き、気恥ずかしい思いをした。
時計を見るとまだ5時だ。戦争に次ぐ戦争で大好きなロッキングチェアーに座りながら、澄んだ湖の魚たちを眺めながら淹れたてのキリマンジャロを飲みながらアイコスを吸う。それが俺にとって至福のひとつだった。
すると、洗顔をして髪をとかしながらスッピンのソフィアがキリマンジャロを持って私の横のロッキングチェアーに腰を下ろした。ソフィアは、ロッキングチェアーをゆっくりと揺らしながら私に話しかけて来た。久しぶりの夫婦の対話だった。
「晶人さん、本当にお疲れさまでした。一時はどうなるものかと案じましたが、見事に挽回しましたね。晶人さんは、日頃からベッドの中で、私にいつもこう話してくれましたね。『戦争に正義はない。特に侵略戦争には正義など微塵もない。そして、正義のための戦争も本当はないのだと。だがしかし、平和な世界は惑星ラミレスにとって悲願であるはずだと。その目的を果たすために、俺とぼっけもんずのメンバーは『天』から転移させられたのだと。自分たちからは、決して戦争をしかけてはならない。されど侵略戦争を一方的に仕掛けられ多くの市民が大量虐殺される悲劇を黙って見過ごすことはできないと。そのためには、戦争を選択するしか道はないと。』私は、いつも隣で晶人さんの苦しんでいる姿を見てきました。晶人さんは正しい選択をしていると私がいちばんよく知っています。大量虐殺される様子を見た家族一人ひとりの思いにまで心を砕き、自分のことのように辛い表情をしていることを知っています。私はどんなことがあっても、晶人さんの味方です。たとえ、あなたが道を外したとしても私だけはどんな時でもあなたを見放したり切り捨てたりすることはありません。私は、あなたが心から安心できる存在でありたいと願って生きています。だから、晶人さんの生きたいように好きなように生きて下さいね。」
「ウゥゥ・・・。すまないソフィア、涙が止まらない。」
するとソフィアは、晶人の顔を抱き寄せ、胸に押し当てると
「晶人さん、私の胸の柔らかさとあたたかさを感じますか?私の母性であなたをずっと愛し続けます。晶人さん、私の心臓の音が聴こえますか?あなたに助けてもらった命ですよ。あなたに一目ぼれした時のドキドキした心臓ですよ。私にだけは素顔を見せて甘えて下さい。」
「ソフィア、ウゥゥ・・・。」
「晶人さんは、以前、私にこう教えてくれました。覚えていますか?『涙には物を見る機能の他に、脳に蓄積した悪玉ストレスホルモンのコルチゾールを洗い流す大切な作用があるから、辛いときは俺の胸で泣いてくれと。声を出して泣いてくれと。ソフィアの涙を吸い取る胸の広さぐらいはあるよと。そして、涙は、ソフィアの血でできているのだと。赤血球の分子が大き過ぎて浸透膜を通過できないから、体液だけが涙として、その綺麗なブルーアイから出るのだと。今まで出逢ったたくさんの人から『綺麗なブルーアイをしていますね。』とか『美しい瞳をしていますね。』と言われたことはあっても、『その瞳に吸い込まれそうだ、いや、吸い込まれてもいい。あなたの瞳は宇宙だ。俺はあなたの瞳の中に吸い込まれて宇宙を旅したい』と言ってくれたのは、晶人さんただ一人だけです。私はとても嬉しかったですよ。恥ずかしかったけどとても嬉しくて泣きましたもの。それにあなたも私を見た瞬間に体に電気のようなものが走り抜け、ビビッとした。一目惚れでしたと聴かされた瞬間のあの喜びは私の生涯の宝物です。両想いだったのがまるで夢のようでした。こんなに幸せ過ぎて、これでいいのだろうかと思ったこともありました。晶人さんは、私に付きっ切りで薩摩示現流を教えてくれましたね。嬉しかったんですよ。私の才能をいち早く見抜き、天下無双の薩摩示現流の免許皆伝目録まで頂きました。涙が止まりませんでしたよ。豊かな思い出と心休まる愛している晶人さんとの思い出は私を強くしてくれました。心の底から感謝しているんですよ。」
「晶人さん、生きてゆく限り、取り返しの付かない失敗や過ちは起きるものなのですね。今回の戦争で、未だに、コリル公国とアラバス公国にサイコキネシス・インフィニティーを用いて、完全防御魔法をしなかった自分を責めているのではありませんか?私にはそれが分かるのですよ。多くの犠牲者がでました。多くの血が流れました。多くの国民が喪失感と衝撃を受けました。でも、あなたなら、きっとその上に立って新しい世界を創ってくれると信じています。私もアンテナを高くして晶人さんのお役に立ちたいです。そのために戦争軍略の本を読み始めましたよ。晶人さんは、私に教えてくれましたね。地球の貨幣に100円玉というコインがあり、表が桜の模様で裏が100と刻まれた数値であると。その表と裏で一つのコインだと。私と晶人さんも分けることのできないひとつのコインです。この惑星に平和が訪れるその日まで二人で力を合わせて励まし合いましょうね。それに、おもしろいぼっけもんずの皆さんがいるじゃありませんか。」
「ソフィア、ウゥゥ・・・。ワァァァァー!ワァァァァー!ワァァァァー!」
「晶人さん、キリマンジャロがすっかり冷めてしまいましたね、晶人さんの涙もたくさん入って冷たくなってしまいました。温かいキリマンジャロを淹れ直しててきますね。」
「ソフィア、これでいい。この冷たくなったしょっぱいキリマンジャロのままでいい。」
「そうですか。涙入りのキリマンジャロを飲みたい気分なのですね。分かりました。では、キリマンジャロを飲みましょう。」
晶人は、しょっぱくて冷たくなったキリマンジャロを飲んだ。しょっぱいとは感じたが、こんな幸せなキリマンジャロを飲むのは初めてだと感じた。
「ソフィア、ちょっとしょっぱいけどこんな幸せなキリマンジャロを飲むのは初めてだよ。ありがとう。本当にありがとう。俺、不器用だけど、絶対にソフィアだけは命をかけて守り通すからね。」
「ほら、また言った。命をかけてはなりません。絶対に死なないと約束してください。私も絶対に死にませんから。」
「うん。絶対に死なないよ。生きて、生きて、生き抜いてやるよ。そして、ずっとソフィアを守り抜くんだ。」
二人はお互いの方に頭をのせ合いながら、深い幸せをかみしめていた。
現在も続く、イスラエルの侵略戦争と無慈悲で残酷な大量虐殺。そして、ロシアによるウクライナへの一方的な侵略戦争と大虐殺。私は、この惨状と悲劇を表現する言葉が見つかりません。ただ一つ言えることは、せめて異世界の小説の中だけは、侵略戦争を食い止め、薩摩武士精神を受け継いだ若者たちの生き様を描きながら、絶対的な「悪」を懲らしめる勧善懲悪を描いていきたいと思います。




