第3話 イルミアさんに会おう!
世界樹の中は階段状になっていて、上へ上へ続いていた。
上の方を見ていると、現在進行形で形が変わっていっている。どうやら僕たちのために、形を変えてくれているみたいだ。
「アナスタシアさん、大丈夫ですか? 足元気をつけてくださいね」
「ええ、大丈夫ですよ」
僕が心配そうに尋ねると、アナスタシアさんは微笑みながらそう返してくる。
なんだかアナスタシアさんと一緒にいると、母上のことを思い出していつもより気を遣っちゃう。
アナスタシアさんもそれを察しているのか、なんだか僕のことを息子のように可愛がってくれる。まるで母上と喋っているみたいで嬉しいけど、やっぱり恥ずかしい。
「あ、階段が終わりそうですよ」
階段の先は開いていて、外に繋がっていた。
全て登り終えるとそこは世界樹の頂上はになっていた。ここまでくることはないから知らなかったけど、世界樹の頂上は広場のようになっていて、死の大地が見渡せるようになっていた。
「凄い。絶景ですね」
「はい。このような景色、初めて見ました」
僕たちはしばらくその景色に目を奪われる。
ルカ村周辺は結構自然が戻ってきているのが、ここからだとよく分かる。
だけど少し離れると地面が黒ずんでいる。瘴気に侵された地はまだ多い。この地を浄化するにはまだ時間がかかりそうだね。
早く広範囲を浄化するためにも、他の村を作る必要がある。急がないと。
『待っていましたよ、二人とも。よくいらっしゃいましたね』
澄んだ声がして、僕たちは振り返る。
するとそこには世界樹の魂とも呼べる存在、イルミアさんがいた。
種になった時は力の多くを失っていたみたいだけど、今はもうほとんど回復しているのか、前にエルフの里で見た時と同じく大人の女性の姿になっている。
ふわふわと宙に浮かんでいるイルミアさんは、僕たちのもとにゆっくりと近づいてくる。
『久しいですねアナスタシア。よくぞ生きて戻りました。私はとても嬉しいですよ』
「イルミア様、帰還が遅くなり申し訳ございません。今まで娘たちを守っていただき、ありがとうございます」
『ふふ、よいのですよ。私にとってはエルフの子たちはみな、娘のようなものなのですから。もちろんアナスタシア、あなたも』
微笑みながらイルミアさんがそう言うと、アナスタシアさんは胸に手を当て深々と頭を下げる。
それを見て気になった僕は質問をする。
「あれ? 二人って面識があるんですか?」
「はい。私は先代の聖樹の巫女なので、イルミア様の声を聞くことができましたから」
『小さい頃のアナスタシアは可愛かったのですよ? お母さんに怒られると泣いて私のところに甘えに来たりしたのです』
「い、イルミア様!? それは二人の秘密という約束では……!」
『ふふ、そうでしたっけ?』
楽しそうに笑うイルミアさん。一方アナスタシアさんは顔を赤くしてうろたえている。
アナスタシアさんがこんな風に表情を崩すなんて初めて見た。きっとアンナさんとエレナさんの前ではよきお母さんとして振る舞おうとしているんだろうね。
だけどイルミアさんは子どもの頃のアナスタシアさんを知っているから、親としての顔を続けることができなかったみたいだ。
「えっと、イルミアさん。実はお願いがあってここに来たのですが……」
『はい。あなた方の話は聞いていたので事情は把握しています。新しい世界樹が欲しいのですよね?』
なんとイルミアさんは僕のお願いを把握していた。
世界樹の近くで話していたから、聞こえてたのかな? イルミアさんに隠し事はできなさそうだ。
「はい、そうなんです。新しく作る村にも世界樹を植えたいと思っているのですが……できますか?」
『はい。可能です』
「え!? できるんですか!?」
あっさりできると言われ、僕は驚く。
凄い。それなら本当に村をたくさん増やせそうだ。
「良かったですね。光明が見えました」
「はい! アナスタシアさんのおかげです、ありがとうございます!」
僕とアナスタシアさんの表情は明るくなる。
だけどイルミアさんはそうではなく、なにか言いづらそうにもじもじとしている。いったいどうしたんだろう?
『えっと……その……可能、ではあるのですが……』
「え? なにか問題があるんですか?」
『問題というか、その、やらなければいけないことがありまして……』
「やらなければいけないこと? 僕たちで手伝えるなら、なんでもしますよ」
『やらなければいけないのは私というか……ふむ、なんといえばよいでしょうか……」
イルミアさんは悩むような素振りを見せる。
いったいどうしたんだろう? なんだか少し顔が赤い気もするし気になる。
『新しい世界樹を作るには、新たに世界樹の「種」を生み出さなければいけません。以前エルフの里からここに移る時にも「種」を使いましたが、あの種は私の生まれ変わりのようなもの。新しい種を生み出すには、まったく違う手段を使わなくてはならないのです』
「違う手段? それってなんですか?」
イルミアさんは僕の質問にしばらく答えるのを迷ったけど、ついにそれを話してくれる。
『新しい種を作るというのは、新しい命を作るということ。つまり私が……子どもを作らないといけないのです』




