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第1話 エルフ急増中

 アナスタシアさんが僕の村にやって来てから、早いものでもう一週間の時が経った。

 元々エルフの知り合いが多かったこともあり、アナスタシアさんはすっかり村に馴染んでいた。


 最初に言っていた通り、表にはあまり出ないけどアンナさんとエレナさんの良き相談相手になっていて、普段は野菜を育てたりエルフの悩み事を聞いたり、いたって平和に、普通の生活を送っている。


「あのアナスタシアというエルフは中々やるな。ま、私の方が強いがな」


 村にやって来ていた海神竜《リヴァイアサン》のナディアさんはアナスタシアさんのことをそう評する。

 ナディアさんはいつも村にいるわけじゃなくて、普段は魚人の海底都市の復興作業を手伝っている。それに飽きるとふらりとこの村にやって来て、たくさん食べて寝て僕に絡んだりした後、また海底都市に戻っていく。


 なんでもルカ村で過ごすとすぐ回復するらしい。

 今は休暇期間中というわけだ。


 ちなみに今僕はナディアさんに抱き枕のように抱き抱えられている。

 体にはナディアさんの立派な尻尾が巻きついていて完全に逃げることができなくなっている。こうしていると回復するから抱かれとけと言っていたけど、本当にこんなので回復するのかな?


「見ない間にエルフも増えてきたな。他からやって来たのか?」

「はい。なんでもアナスタシアさんが各地で暮らしている知り合いのエルフたちに声をかけてくれたみたいです。そのおかげで色々なところからエルフが集まって来てるんですよ。来てくれた人はみんなここでの生活が気に入ってくれているみたいです」

「そうか。領民が増えるのはいいことだな」


 ナディアさんの言葉に僕は「はい」と答える。

 人が増えればできることも増える。この調子でここに住む人をどんどん増やしていきたいな。


「だが人が増えれば当然、トラブルも増える。気をつけることだな」

「はい。それも気をつけます。アドバイスありがとうございます」

「せっかく見つけたいい場所を下らん連中に壊されたくないからな。まあ、ここが壊れてもテオドルフだけは助けてやるぞ? 深海で私たちだけの王国を作るのも楽しそうだ」

「え、えっと……考えておきます」


 おっかなびっくりそう言うと、ナディアさんは「はは、冗談だ」と僕の背中を叩く。

 目が本気に見えたけど、本当に冗談なんだよね……?


 怖いからこの村が滅びないように頑張らないと。


◇ ◇ ◇


「おや、奇遇ですねあなた様。お会いできて嬉しいです」


 ナディアさんと別れて村をぶらぶらしていた僕は、ばったりアナスタシアさんと出会う。

 アナスタシアさんの周りには小鳥が数話飛んでいて、『ピチ、ピチチチ』と声を発している。


「こんにちはアナスタシアさん。なにかしていたんですか」

「この子たちと話していたんです。どうやら他にもエルフの集落があるらしく、そこに文を届けてもらうよう、お願いしておりました」

「そうだったんですか。じゃあもっと村が賑やかになりますね!」


 僕がそう言うと、アナスタシアさんは嬉しそうに微笑む。

 それにしてもまだエルフが増えるなんて……このままじゃこの村はエルフの村になっちゃいそうだ。


「でも鳥とお話しできるなんて凄いですね。他のエルフのみんなはできないんですよね?」

「はい、これは聖樹の巫女の力ですから」

「え? でもアンナさんもエレナさんもそんなことはできなかったような……」

「あの子たちの力はまだ覚醒途中ですから。聖樹の巫女として完全に成長すれば、この程度簡単にできるでしょう」

「へー、そうなんですね」


 アンナさんもエレナさんも、今のままでも凄く頼りになるのに、更に成長するみたいだ。

 とっても心強いね。


「そういえば他にも人間や獣人を受け入れる予定があると聞きましたが」

「はい。ベスティア商会に住む場所に困っている人たちを教えてもらったんです。最初は場所が死の大地って聞いて躊躇したみたいですが、ここの評判を聞いて行ってみようって思ってくれたらしいです。特産品と卸していた甲斐がありました」


 村で採れた野菜や果物などの特産品は今も継続的にベスティア商会に卸している。

 それは大陸中に輸出され、色んな人の手に渡り、食べられている。


 売られる際にそれらは「レガリア領ルカ村産」と付けられている。

 そのおかげでレガリア領、つまり死の大地の評判は徐々に上がっているというわけだ。


 ベスティア商会もこの村のことを良く言い触らしてくれているらしい。入殖希望者が増えてるのはそのおかげも大きいだろうね。


「なるほど、そうでしたか。となるとこの地には想定より多くの方が集いそうですね……」


 アナスタシアさんはそう言くと指を唇に当て、思案する様にする。

 いったいどうしたんだろう?


「あなた様、差し出がましいですが、私の考えを申してもよろしいでしょうか?」

「はい。もちろんいいですよ。アドバイスはなるべくたくさんいただきたいですから」

「ありがとうございます。それでは提案させていただきます。私はレガリア領にルカ村以外の村(・・・・)を作ることを提案いたします。

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