第6話 クモを倒そう!
『キチチ……』
黒いクモたちは僕たちを囲みながら不快な声を出す。
その赤い目からは強い敵意のようなものを感じるけど……いったいなんで僕たちを襲うんだろう。
「アンナさん、あいつらを魔法で追い払え……ん?」
アンナさんの魔法を頼ろうと思って隣の彼女を見ると、アンナさんが震えて動けなくなっていることに気がつく。
顔は青くなり、恐ろしいものを見るような目をして怯えている。
どんな時でも明るくて強いアンナさんがこんな表情をするなんて……どうしたんだろう?
「アンナさん、大丈夫ですか?」
「い、いや……」
アンナさんに話しかけるけど、彼女は怯えたような声を出すだけで会話が成立しない。
今無理に話しかけても混乱させるだけになりそうだ。
エレナさんもアンナさんの様子がおかしいことに気が付き「くっ……そうか」と声を漏らす。アンナさんが今の状態になったことに、心当たりがあるみたいだ。
「テオドルフ、姉上は戦えない。ここは我々だけで片をつけるぞ!」
「は、はい!」
僕は次元収納からオリハルコンのナイフを取り出し、構える。
アンナさんの分も僕が頑張らないとっ。
『ギチィ!!』
クモたちが一斉に襲いかかってくる。
僕たちはそれぞれの武器でクモたちを切り裂き、射抜き、撃退していく。
「くそっ! こいつ!」
「我々の故郷から出ていけ!」
エレナさんはもちろん、他のエルフの戦士たちも弓や剣でクモを次々と倒している。
日頃から厳しい訓練をしているおかげだろうね。みんな元から強かったけど、エレナやガーランの指導のおかげで最近メキメキと強くなっている。凄い心強い。
「僕も頑張らなきゃ……えい!」
オリハルコンナイフを振るい、クモの一体を撃破する。
幸いなことにクモ一体一体はそれほど強くない。僕でも問題なく倒せるレベルだ。でも……
「数が多い!」
クモは地面の中からどんどん沸いて出てくる。
流石に無限に出てくるってことはないだろうけど、これじゃジリ貧だ。
先にこっちの方が消耗しちゃうよ。いつまで続くか分からない戦いにエルフの戦士たちの士気も落ちてきてしまうけど、
「いくらでもかかってこい! たとえ何千匹いようと我が刃で斬り捨ててくれる!」
エレナさんがそう啖呵を切ったおかげで、エルフの戦士たちも「そうだ!」「我らを甘く見るなよ!」と士気が戻る。
流石エレナさんだ。僕もやる気が湧いてきた!
『ギチチ……ギギ!』
僕たちの勢いが戻ったことで、クモは苛立たしげな声を出す。
するとクモの一体がドボッ、という音と共に地面に潜った。
そして地面の中を潜行すると、僕たちの目の前から飛び出てきて、噛みついてくる。
『ギギィ!』
「うわっ!? 来るな!」
僕は咄嗟にナイフを振るい、なんとかクモを撃退する。
はー、びっくりした。なんとか反応できたけど、次やられたら同じように倒せるか分からない。
「大丈夫かテオドルフ!?」
「は、はい。でもびっくりしました。あいつら地面の中に潜れたんですね。地面の中から現れたから考えてみたら当然なんですけど」
「奴らは液体のようになって地中を自在に移動できるというわけだ。いきなり地面から飛び出してきたらこちらも反応できない。厄介だな……」
瘴気は不定形だ。
液体のようになれば、気体のようになることもできる。
このクモは液体のようになって地面の中を移動するのが得意みたいだ、厄介だね。
『ギギィ!』
クモたちはこの戦法が有効なことに気づいたのか、地中から飛び出る攻撃を多用してくる。
僕たちはなんとかそれに対応しているけど、消耗が激しい。このままだとさきにこっちがやられちゃうかもしれない。
「いや……やだ……」
アンナさんはしゃがみこみ、頭を抱えて怯えている。
このままじゃ心が壊れてしまいそうだ。早くクモを追い払って落ち着けてあげないと。
「なにか、いい方法を考えないと……!」
ナイフでクモを斬りながら、僕は考える。
地中を移動するクモ。それをどうにかするにはどうしたらいいんだろう? 地面を攻撃しても、クモに有効じゃないだろうしそもそも地中のどこにいるのか地上からじゃ分からない。
地面からクモを追い出せればいいんだけど…………あっ。
「そうだ! あの方法があった!」
いい方法を思いついた僕は、早速それを実行に移す。
「出てこい! 神の鍬!」
手の中に白金色に輝く鍬が姿を現す。
僕はそれを振りかぶると、思い切り地面に振り下ろす。
「これで……どうだ!」
地面に突き刺さった鍬の先端から、神力が地中に解き放たれる。
神の鍬は地面を浄化する力がある。その力は凄くて、瘴気に侵された大地を一瞬にして浄化してしまうほど。
当然ここら辺の地面も浄化され、とてもじゃないけど瘴気のクモが生きていられる環境ではなくなる。
『ギギィ!?』
地面の中のクモたちは急いで地上に飛び出てくる。その数は二十体ほど、もっといたはずだから出てこないクモたちは地中で死んだんだろうね。
瘴気にとって神力は天敵。それをまともに食らったんだから、かなりダメージを負っただろう。
でもまだ生き残りがいる。アンナさんのためにもこいつらをちゃんと倒さないと。僕は神の鍬をしまうと、今度は神の斧を取り出す。
「神の斧。僕の神力を使って!」
僕の体から神力が抜け、神の斧に吸われていく。
この前女神様に会ってお喋りした時、こんなことを言われていた。
『テオくんの肉体に宿る神力は大きくなってる。神の道具に吸わせたら凄い力が出せるかもよ?』
まだそれを試したことはないけど、やるなら今だ。
僕は神の斧にたっぷりと神力を吸わせた後、瘴気のクモたちめがけてそれを横薙ぎに振るう。
「食らえ! 神の戦斬!」
振るった神の斧から光り輝く巨大な衝撃波が放たれ、瘴気のクモたちを切り裂き、消滅される。
その威力は凄まじく、クモたちの背後にあった巨岩も真っ二つに切り裂くほどだった。
「やっ……た」
力を使い果たす、僕はふらふらになる。
こ、こんなに疲れるなんて。足に力が入らなくて頭もぼーっとしてきた。神力を武器に吸わせるのは奥の手だね。
僕はそのまま後ろに倒れると、それをエレナさんが受け止めてくれる。
「よくやってくれたテオドルフ。ありがとう、今はゆっくり休んでくれ」
「は……い」
エレナさんの胸に抱かれ、僕は目を閉じ眠りに落ちるのだった。




