第3話 エルフの里に行こう!
エルフの里に行くと決めた日の翌日の朝。
準備を終えた僕たちは、高機動型四足ゴーレムの引く馬車に乗り、死の大地西部にあるエルフの里を目指し出発した。
特性の馬車には金属を組み合わせた特製サスペンションを組み込んである。
おかげで揺れが少なくてとても快適だ。新幹線に乗っているようにすら感じる。
そんな感じでとても快適な旅をしているんだけど……
「はい旦那さま♪ あ~ん♡」
「あ、あーん……」
隣に座るアンナさんが差し出してきたメロンを、僕は食べる。
メロンを噛むと口の中に濃厚な甘みがじわっと広がってくる。すっごい甘いのに全然しつこくなくていくらでも食べられるって感じだ。こんなに美味しい果物は、元いた世界でも食べたることはできないだろうね。
「どうですか旦那さま? お口に合いませんでしたか?」
「い、いえ! とっても美味しかったですよ」
「まあ、それは嬉しいです♪」
アンナさんは太陽のように眩しい笑みを僕に至近距離でぶつけてくる。
今僕たちは馬車のシートに座っている。順番は向かって左からアンナさん、僕、エレナさんといった感じで、僕はエルフの姉妹に挟まれている形となっている。
それは別にいいんだけど、二人がけのシートに三人で座っているのでとてもせまい。ぎゅうぎゅうだ。
おかげで二人のやわらかいものが体に押し当たり続けている。うう、恥ずかしすぎる……。
「姉上、やはり席を分けるべきでは? 少しせますぎます」
「いけませんよエレナ。もし揺れたら誰が旦那さまを守るのですか。レイラさんもいないのですから、私たちで守らなければいけないのですよ」
「それは、そうですが……」
今回の旅はレイラは来ていない。例の如くついてこようとはしていたが、エルフの里の問題ですからとアンナさんがガードしていた。
まあでも今回の旅にはアンナさんとエレナさんの他にも、優秀なエルフの戦士が三人同行してくれている。安全対策はバッチリだ。
着いてきてくれたエルフの戦士三人は全員女性で、一人は馬車の御者台、残りの二人は僕の向かいの席に座っていて、アンナさんにからかわれている僕のことをちらちらと見てくる。恥ずかしい……。
「旦那さまとお出かけできることなどほとんどないのですから、あなたも素直になった方がいいですよ。私みたいに」
「姉上は少し素直すぎます……」
僕のことを抱きしめて頬ずりするアンナさんに、エレナさんは呆れたように言う。
自由奔放でつかみどころのないアンナさんと、厳しくて我慢強いエレナさん。二人は双子なのに全然逆の性格をしている。でも二人はとっても仲良しで、なにをするにも二人で行動している。
兄弟の仲が上手くいってない僕からしたら、とても羨ましい。
「まったく。そんなに照れるのでしたら、他の二人に変わってもらいましょうか? ね、あなたたち」
アンナさんはそう言って僕たちの向かいに座る二人のエルフの女性に目を向ける。
すると二人は「あ、じゃあ私が……」「いや、ここは私が」と、なぜか僕の隣の奪い合いが始まってしまう。な、なんで。
「あらあら、旦那さまは相変わらず人気者ですね」
「え、そうなんですか……?」
「もちろんです♪ 村のエルフの女性で旦那さまに好意を持ってない者はおりません。もし姉妹というストッパーがいなければ、旦那さまはとっくに襲われていると思います」
それを聞いた僕はぶるっと身震いする。
エルフの女性はみんなとても綺麗だけど、全員に襲われたらと思うとぞっとする。肉食動物に狙われた小動物になった気分だ。
そんな気分を感じていると、どちらが僕の隣に来るか決まったみたいで、その人がこっちに来ようとする。
「ではエレナ様、席を替わ……」
「なっ、だ、駄目だ! こいつの護衛は私の仕事、他の者に任すわけにはいかん!」
エレナさんは僕を抱きしめ、席を動かない意思を示す。
意外だ。あっさり席を替わるのかと思ったのに。
「いや、ですが……」
「う、うるさい! こいつは私のお、夫になる男なんだ! 他の者には任せられない! ほらテオドルフ、こっちに来い!」
「わっ!?」
エレナさんは僕を引っ張ると、席を替わろうとした人に見せつけるように、僕にキスしてくる。
「ちゅ、んむ……っ、ぷはっ。ほら、テオドルフ。お前も舌を出せ。そうだ……んん……っ」
たっぷりと時間をかけ、情熱的に何度も唇を重ねてくるエレナさん。エレナさんがこんな風に求めてきたのは初めてなので、頭がふわふわする。
「あ、あわわ……」
向かいの席に座ってる二人のエルフはそれを見て赤面し手で目を覆う。
だけど指の隙間から僕たちをガッツリ見てる。恥ずかしい……
「……ぷはっ。ふふ、どうだ。これでテオドルフの隣は誰が相応しいか分かっただろう。諦めてそこに座って……ろ……」
エレナさんは言いながらその場でこてんと意識を失ってしまう。
見ればエレナさんは耳まで真っ赤になってしまっている。お風呂でのぼせたみたいになってる。
「あらあら、恥ずかしいのに無理しちゃって。可愛い子ね。でもま、少し前進かしらね」
アンナさんは気を失ったエレナさんを見ながら笑う。
うう、こんなのが続くといくら心臓があっても足りない。
この後も僕は、到着までエルフのみんなに甘やかされながら過ごしたのだった。




