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第6話:散歩コースの先にトカゲが落ちていたので、とりあえず踏んでおいた

第6話をお読みいただきありがとうございます!

初めての薬草採取(という名の快適ウォーキング)で、気づけばレベルが400を超えていた歩くん。

「今日の目標歩数まであと少し!」と森の奥へ進んだ彼の前で、何やらエリートっぽい人たちが大騒ぎしているようで……?

今回もストレスフリーでお楽しみください!

サク、サク、サク、サク……。


「よし、これで大体2万歩か。あと1万歩で今週のノルマ達成だな」


『迷いの森』の奥深く。本来なら熟練の冒険者でも生きては戻れないと言われる危険地帯を、俺はショップで購入した『筋肉疲労をゼロにする高級ウォーキングシューズ』で軽快に踏みしめていた。

周囲の木々はますます巨大化し、薄暗くなっているが、俺の脳内はレベルアップのファンファーレで相変わらずお祭り騒ぎだ。


ピコン、ピコン、ピコン!

『1歩をカウントしました。1ポイント獲得』

『レベルが上がりました。Lv485 → Lv510』

『スキル【絶対耐性:状態異常無効】を獲得しました』


「おお、なんか毒とか麻痺が効かなくなった。ラッキー」


まさに歩くパワースポット状態。これならどこへ観光に行っても安心だ。

そんなことを考えながら無限の水筒で水分補給をしていると、前方の開けた空間から、すさまじい金属音と爆発音が響いてきた。


強烈な突風が吹き荒れ、巨木が何本もなぎ倒される。


「おいおい、なんだ? 工事でもやってんのか?」


ポイ活ウォーキングのコースを邪魔されては敵わない。俺は様子を見るために、音のする方へとサクサク歩いて向かった。

草むらをかき分けて開けた場所に出ると、そこはさながら戦場だった。


「くっ……! 結界が保たない! 聖騎士団、引き金を引け! 奴を王都へ通すな!」


きらびやかな白銀の鎧をまとった、気の強そうな金髪の美少女――いかにも高貴な身分っぽい女の子が、ボロボロになりながら剣を構えて叫んでいた。

彼女の周囲には、同じような鎧を着た騎士たちが血を流して倒れ伏している。


そして彼女たちの目の前に君臨していたのは、家一軒ぶんほどもある、岩のような皮膚に覆われた巨大なトカゲ――いや、ドラゴンだった。


『警告:危険度災害級(災厄クラス)魔獣『地竜・アースドラゴン』を認識しました。想定レベル:120』

『現在のあなたのレベル:532』


(へぇ、レベル120。この世界にしちゃ結構高いな)


前世の感覚で言えば、ちょっとした隠しボスといったところか。だが、今の俺はレベル500オーバーだ。相手がドラゴンだろうが、俺から見ればただの野生のトカゲと大差ない。


「グオオオオオオオオオッ!!!」


地竜が咆哮を上げ、その巨大な質量を乗せた尻尾を振り下ろす。標的は、すでに満身創痍で動けない金髪の聖騎士長らしき少女だ。


「ここまで、ですか……っ!」


彼女が絶望に目を瞑った、その瞬間。


「すいませーん、そこ、俺のウォーキングコースなんで、ちょっとどいてもらえます?」


俺はいつも通りの等身大の歩幅で、地竜と少女の間にすっと一歩を踏み出した。


サクッ。


ドンッッッ!!!!!!!


ただの「一歩」。しかし、レベル500を超えた俺の足裏が地面を捉えた瞬間、局地的な大質量兵器が着弾したかのような衝撃波が垂直に立ち昇った。

地竜の振り下ろした巨大な尻尾が、俺の踏み込みから生じた目に見えない空気の壁に衝突し、バキバキと音を立てて逆方向にへし折れる。


「ガ、ギャンっ!?」


地竜が悲鳴を上げた。

だが、俺の「歩行」はまだ終わっていない。ウォーキングとは、右足を出したら次は左足を出すものだ。


俺はそのまま、地竜の巨大な頭部がある方向へと、流れるように次の二歩目を踏み出した。


「せいや」


ズガガガガガガドンッ!!!!


俺の左足が地面を踏み抜いた風圧だけで、地竜の巨体がまるで大型トラックに撥ねられたかのように真上へと打ち上げられた。そして、そのまま頭から地面にドシャシャシャッと叩きつけられ、ピクピクと痙攣した後に完全に沈黙した。


ピコン。

『経験値を獲得しました。……が、現在の歩行効率が圧倒的なため破棄されます』


「うん、やっぱりトカゲ一匹じゃポイントにもならないな」


俺は足元の土を軽く払うと、何事もなかったかのようにウォーキングを再開しようとした。


「あ……あ……」


背後から、蚊の鳴くような声が聞こえた。

振り返ると、さっきの金髪の聖騎士長の少女が、地面にへたり込んだまま、信じられないものを見る目で俺を凝視していた。


彼女の視点からすれば、ジャージ姿の不審な男がふらっと現れ、自分たちが全滅しかけた災害級のドラゴンを、ただ「二歩歩いただけで」肉体にも触れずに瞬殺したのだ。脳の処理が追いつかないのも無理はない。


「あ、あの! あなたは一体……!?」


「あ、俺ですか? Fランク冒険者のアユムです。ただの散歩中なんで、お気になさらず」


「さ、散歩……!? 地竜を足踏みだけで屠っておいて、散歩だと……っ!?」


彼女は顔を真っ赤にして驚愕していたが、俺はスマホ(前世の感覚)の体内時計を確認する。


「あ、やべ。もうすぐ夕方の6時じゃん。早く帰って飯食わないと。じゃ、お疲れ様でーす」


「待ちなさい! 私は王属聖騎士長のクラリス・フォン・ローゼンバーグ! あなたの名前を――!」


クラリスとかいう少女の叫びを背中で聞き流しながら、俺はサク、サク、と素晴らしいフォームで街の方向へと歩き去った。

今週の歩数、無事に3万歩達成である。


(トータル歩数:30,005歩 / レベル:560)

第6話をお読みいただきありがとうございました!

聖騎士長クラリスさんと遭遇した歩くんですが、地竜をただの「二歩(散歩)」で片付けてしまいました。レベルもついに500の大台を突破です(笑)。

助けられたクラリスさんは、完全に歩くんの異常な強さに脳を破壊されてしまった様子。

次回、王都の聖騎士団を巻き込んで、ギルドがさらに大騒ぎになることに!?

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