表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/7

第3話:元Sランクのギルドマスターと模擬戦することになったが、ただのステップで完封してしまった件

第3話をお読みいただきありがとうございます!

ギルドの測定水晶を盛大に爆破してしまった歩くん。

静まり返るギルドの奥から、ついにあの「お約束」の人物が登場します。

今回もストレスフリーでお送りしますので、どうぞお楽しみください!

「ひぇっ……!」


真っ二つに割れた受付カウンターの前で、金髪の受付嬢・ミリアさんが短い悲鳴を上げて腰を抜かしていた。

酒場にいた強面の冒険者たちも、全員がジョッキを握ったまま石のように固まっている。


静寂。耳が痛くなるほどの静けさがギルドを支配していた。

国家最高クラスの偽装指輪をつけてなお、俺の体内に満ち満ちる「歩数エネルギー」が溢れ出て測定器を木っ端微塵にしてしまったのだ。完全にやらかした。


「おいおい、昼間から景気の一発が聞こえたと思ったら、なんだこりゃあ?」


ギルドの奥にある重厚な扉が開き、地響きのような低い声が響いた。

現れたのは、全身傷だらけの巨大な大剣を背負った、スキンヘッドの筋骨隆々なオッサンだった。片目には眼帯。威圧感が尋常じゃない。


「ギ、ギルドマスター! この特例登録の少年が、測定水晶を……!」


ミリアさんが震える指で俺を指差す。

ギルドマスターと呼ばれたオッサンは、鋭い眼光で粉々になった水晶と、俺の顔を交互に見つめた。


「ふむ……。小僧、見たところレベル10程度のヒョロガリにしか見えんが……水晶が不良品だったか、あるいは、とんでもない『化け物』か、どちらかだな」


オッサンはニヤリと好戦的な笑みを浮かべ、背中の大剣をワシ掴みにした。


「俺は元Sランク冒険者のガルフだ。小僧、お前の実力、この俺が直々に確かめてやる。裏の訓練場へ来い。一手でも俺に攻撃を当てられたら、即座にAランク冒険者として登録してやるよ」


「いや、俺はただのんびり観光がしたいだけのFランク希望なんですが……」


「問答無用だ!」


拒否権はなかった。というか、ガルフさんの腕力で半ば強引に訓練場へと連行されてしまった。


ギルドの裏手にある、頑丈な石壁に囲まれた広い訓練場。

ギャラリーとして、酒場にいた冒険者たちもゾロゾロと集まってきている。


「おいおい、あの新人、ガルフさんとやるのかよ」

「気の毒にな、ガルフさんの模擬戦は手加減ナシで有名だぞ。病院送りじゃ済まねえぞ」


不穏なヒソヒソ話が聞こえてくる。

だが、対峙する俺の視界には、また別のウィンドウがピコンと跳ね上がっていた。


『ガルフ(元Sランク冒険者)を認識しました。想定レベル:75』

『現在のあなたのレベル:248』


(……あ、俺の方がトリプルスコア以上で強いわ)


前世のゲーム感覚で言えば、レベル75のボスにレベル248で挑むようなものだ。負ける要素がどこにもない。むしろ、手加減を間違えたらガルフさんを消し飛ばしてしまう。


「おい小僧、武器は持たんのか? 武器屋で買った鈍らでもいいぞ」


「いえ、俺は素手で大丈夫です。あと、こちらからは攻撃しません。避けるだけで」


「舐めやがって……! 後悔するなよ!」


ガルフさんが地面を蹴った。大巨体からは想像もつかない爆発的な踏み込み。一瞬で俺の懐に潜り込み、巨大な大剣が真上から振り下ろされる。


ブンッ!!!


空気を切り裂く轟音。普通の人間なら風圧だけで気絶する一撃。

だが、俺の目には、その大剣の軌道が止まっているかのように遅く見えた。


(よし、いつも通り……右へ一歩!)


サッ。


俺はウォーキングの方向転換の要領で、右側へ綺麗に一歩ステップを踏んだ。


ピコン。

『1歩をカウントしました。1ポイント獲得』

『レベルが上がりました。Lv248 → Lv249』


「なっ……!? 消え――」


ガルフさんの大剣が空を切る。驚愕に目を見開くガルフさん。

間髪入れず、彼は大剣を横薙ぎに振り抜いてきた。


(次は左へ一歩!)


サッ。


流れるようなサイドステップ。完璧なフットワークだ。


ピコン。

『1歩をカウントしました。1ポイント獲得』

『レベルが上がりました。Lv249 → Lv250』

『スキル【残像】を獲得しました』


「ば、馬鹿な! 当たらん……! 一度も剣筋がかすりもしないだと!?」


ガルフさんが我を忘れて大剣を振り回す。縦、横、斜め、怒涛の連続攻撃。

しかし、俺はその場からほとんど動かず、ただ右へ左へ、リズム良く「散歩」のステップを踏み続けるだけ。気分は完全に、前世の朝のラジオ体操だ。


サク、サク、サク、サク。

ピコンピコンピコンピコンッ!


『Lv255に上がりました』

『Lv260に上がりました』


「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!」


数分後。ガルフさんは大剣を地面に突き立て、肩で激しく息を荒くしていた。完全にスタミナ切れだ。

対する俺は、息一つ乱れていない。むしろ歩数が稼げてちょっと調子が上がってきたくらいだ。


「おいおい……嘘だろ……?」

「あのガルフの猛攻を、ただのステップだけで完封しやがった……」

「しかもあいつ、一歩動くたびに、なんか背後に残像が見えなかったか!?」


ギャラリーの冒険者たちが、顎が外れんばかりに驚愕している。


ガルフさんはガクガクと震える手で大剣を背中に戻すと、信じられないものを見る目で俺を見つめ、こう呟いた。


「小僧……いや、歩殿。あんた、一体何者だ? 今のステップ……ただの体術じゃねえ。空間そのものを置き去りにするような神速の歩法だ。一体どんな修行を積めばそんな足腰になる?」


「え? いや……毎日1歩、ポイ活のために散歩してただけですが……」


「さんぽ……? 神の領域の修行を『散歩』と呼ぶのか……!」


ガルフさんはガタガタと震えながら、完全に何かを勘違いした目で俺を拝み始めた。

おかしいな、ただ避けてただけなのに、また変な伝説が作られようとしている気がする。


(現在の歩数:2,184歩 / レベル:263)

第3話をお読みいただきありがとうございました!


元Sランクのギルドマスターを、ただのラジオ体操ステップで完全攻略してしまった歩くんです。歩けば歩くだけレベルが上がるので、避けている間にもどんどん強くなっていくという鬼畜仕様(笑)。

ガルフさんの中では、すでに「隠れて血の滲むような修行をしてきた孤高の天才」ということになってしまいました。


次回、ついに冒険者カードが発行されますが、果たしてどのランクになってしまうのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ