第9話 聖女レイナ5歳編 レイナの「えらい」の定義
レイナは王の執務室で、王の膝の上で絵本を読んでもらっていた。
突然、彼女は顔を上げて尋ねた。
「おじいちゃん王様。『えらい』ってなに?」
王は手を止めた。
「『偉い』か……それは、大きな責任を背負い、多くの人を導き、守ることだと思っていたが……」
レイナは首をかしげた。
「じゃあ、パパはえらい? お花さん、いっぱい咲かせるから」
「ママはえらい? みんな、にこにこするから」
「騎士さんたちはえらい? レイナ、おさんぽ、つれてってくれるから」
王はゆっくりと頷いた。
「……そうだな。パパもママも騎士たちも、そしてレイナも、みんな『偉い』のかもしれんな」
レイナの目が輝いた。
王は続けた。
「レイナはみんなを笑顔にする。パパは美しい花を咲かせる。ママは温かい気持ちを運ぶ。騎士たちは安全を見守る。それぞれが、自分にできることで王国を豊かにしている。」
レイナはにっこり笑った。
「じゃあ、レイナも、えらい!」
「ああ、その通りだ。」
王は彼女の頭を優しく撫でた。
「そして、これからも、その小さな肩で、この王国の『幸せ』という重責を背負い続けてくれるとよいが」
レイナは王のひげをそっと触りながら、大きくうなずいた。
「うん! でも、重たいのはいやだなあ。おやつのクッキー、いっぱいあるほうが、いいなあ!」
王は声を上げて笑った。
そう、この国の守護者は、未だに「おやつの量」を「国の安泰」と同じレベルで考えているのだった。
そして、誰もそれを不思議とは思わなかった。
むしろ、そんな純粋な価値観が、硬直しがちな王国に風穴を開け、新しい息吹をもたらしていると感じていた。




