表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】聖女は3歳児でした  〜聖女誕生からレイナ成長記録〜  作者: ぶっくん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/17

第7話 聖女レイナ4歳編 たんぽぽの贈り物

アルドリック三世は3歳の聖女レイナが城に来て間もない頃の事を書斎で思い出していた。



王妃シンシアが亡くなって3年目、城にはまだ寂しさが残っていた。


アルドリック三世の城に、3歳の聖女レイナがやって来た日から、宮廷の空気が変わった。


「おじいちゃん王様、これあげる!」


庭で摘んだふわふわのたんぽぽを、小さな手にしっかり握りしめ、ぎこちない足取りで玉座の間まで歩いて行った。


アルドリック王は、普段なら近づく者もはばかられるほどの威厳を漂わせていた。


レイナがひげの生え際にそっとたんぽぽを挿した時、側近たちは息を呑んだ。

王太子エドワルドは手に持っていた書類を落としそうになった


王は目を丸くした。

一瞬、時間が止まったようだった。


そして、次の瞬間。

「フゥハハハハ!」


城全体を揺るがすような、深く温かい笑い声が響き渡った。


シンシア王妃を亡くしてから、この城で聞かれたことのない音色だった。


ひげに揺れるたんぽぽが、王の笑いでふわふわと揺れる。


「これは……なかなか風流な飾りじゃのう」


王はいたずらっぽく目を細め、レイナの頭をそっと撫でた。


王太子エドワルドと王太子妃アメリアも、この小さな客人を温かく迎え入れた。


その日から、城の空気が変わった。


「レイナちゃん、ぼくがお城の案内するよ!」


8歳のクリス王子は、15歳の兄のウィリアムが剣術の稽古で忙しい隙を完全に狙い、レイナの小さな手を引いて城の中を駆け回った。


彼女はくるくる回るスカートを翻し、まるで蝶のように廊下を舞った。


甲冑の展示室では、クリスが真剣な面持ちでささやいた。

「このおじさん、中身空っぽなんだよ」

レイナは目を輝かせ、「すごーい!」と声を上げ、空の鎧に小さな手をトントンと叩いた。


厨房への「秘密の遠征」は大成功だった。

焼き立てクッキーを2枚こっそり持っていき、1枚はレイナに、1枚は自分の口へ。


「クリスお兄ちゃん、お城って楽しいね!」


「うん!レイナちゃんが来てから、もっと楽しいよ!」


一方、大人たちはもう少し現実的で、しかし同じくらい温かい配慮をしていた。


王太子エドワルドは、父王の書斎で話し合っていた。


「父上、レイナの父親、トーマスのことです。農夫として優秀だと聞きました」


「ああ、レイナがここにいる間、家族も城の敷地内で住めるようにするのがよいだろう」


エドワルドはトーマスを呼び寄せた。


緊張して縮こまったトーマスに、王太子は優しく微笑んだ。

「トーマス、城の南にある王立温室の管理を任せたいと思う。珍しい花や薬草などを育てる計画だ。あなたの豊かな経験がきっと役に立つ」


トーマスは目を見開いた。


「殿下……そんな、私はただの農夫です。こんな光栄な役目……」


「それでいいのです」

エドワルドは優しく微笑んだ。


「給料も住居も保証しよう。レイナがここにいる間、家族で城の敷地内に住むがいい」


トーマスは感激で言葉を失い、深々と頭を下げた。

王太子自らが声をかけてくれるとは、夢にも思わなかった。


王太子妃アメリアもまた、レイナの母親であるエラを気さくに茶会に招き、子育ての話や庭の花の話で盛り上がった。


初めは緊張で硬くなっていたエラも、アメリアの飾らない人柄に次第に打ち解け、笑顔を見せるようになった。


「レイナが皆様にこんなに可愛がっていただいて……本当に夢のようです」

エラは目尻を拭いながら言った。


アメリアは優しく微笑み、エラの手をそっと握った。


「いいえ、この城に明るい笑い声を取り戻してくれたのは、レイナさんですから」


夕暮れ時、アルドリック王はひげに挿したたんぽぽをそっと取り、窓辺の小さな花瓶に挿した。


そこから城庭を見下ろすと、レイナとクリスの2人がキャッキャとはしゃぎながらバラ園を駆け回っているのが見えた。


遠くから、エドワルドとトーマスが温室の設計図を広げて話し合う姿も、アメリアとエラが笑いながらテラスでお茶を飲む姿も見える。


3年ぶりに、城に色が戻った。


たんぽぽのような優しい黄色い色が、石壁の灰色を少しずつ溶かしていくように。


王は深く息を吸い、満足そうに頷いた。


「シンシア……見ているか? また、笑い声が聞こえるようになった」


ひげの生えた口元が、また緩んだ。花瓶のたんぽぽが、夕日を受けてほんのり輝いている。


城の新しい日常は、ほんの小さなたんぽぽ一本から、ふわふわと、確かに始まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もしかして:念願の女孫? 王様が少しでも慰められるといいね。 まあ、愛と笑顔に満ち溢れるのは決定なんだけどね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ