第6話 聖女レイナ4歳編 森の奇跡
レイナが4歳になって数ヶ月が経ったある日、王城に不思議な訪問者が現れた。
森の奥から来たという、背の低い、葉っぱのマントをまとった老人だった。
彼は「森の賢者」を名乗り、レイナに会いたいと申し出た。
「長い間、森は闇の瘴気に苦しめられてきた。しかし最近、森の端から、不思議な光が広がり始めた。調べてみると、その源はこの城にあった」
賢者はレイナの前にひざまずき、こう頼んだ。
「小さき聖女よ、どうか我が森にも、そなたの光を分け与えてくれないか」
レイナは森の賢者のしわだらけの手を見つめ、真剣な顔でうなずいた。
「うん! でも、レイナ、ひとりでいけないよ。おともだちもつれてく」
彼女の言う「おともだち」とは、王城の庭で出会った小鳥やリス、そして侍女たちや衛兵たちまで含まれていた。
次の日、小さな行列が王城を出発した。
先頭には森の賢者、その後にレイナを乗せた馬車、そして彼女の「おともだち」たちが続いた。
森の入口は、まだ暗い瘴気に包まれていた。
木々は灰色がかり、生き物の気配もほとんどなかった。
レイナは馬車から降り、森の奥をじっと見つめた。
彼女は小さなリュックサックから、温室で父親からもらった種を取り出した。
「みんなで、うえようね」
彼女は種を配り始めた。
王にも、衛兵にも、侍女にも、そして小鳥たちにも。みんなで森の中に種を蒔いた。
最後にレイナは森の中心に立ち、両手を広げた。
「おはなが、おきて。きが、のびて。とりが、うたって」
彼女の声は小さなささやきだったが、森全体に響き渡った。
最初は一粒、また一粒と、地面から小さな芽が顔を出した。
そして、あっという間に、芽は成長し、花を咲かせ、木々は新緑に包まれた。
空からは光の雨が降り注ぎ、瘴気は消え去った。
森の賢者は涙を流し、レイナの前にひざまずいた。
「千年の闇を、たった一日で……ありがとう、小さき聖女よ」
レイナは笑顔でうなずき、賢者のしわだらけの手を自分の小さな手で包んだ。
「これからも、おともだちだよ。レイナ、またあそびにくるね」
その夜、王城ではレイナの活躍を祝う宴が開かれた。
しかし主人公のレイナは、宴が始まる前に、エラの膝の上でぐっすり眠っていた。
トーマスとエラは、娘を見つめながら静かに話した。
「この子は、本当に特別なんだね」
「うん。でも、どんなに特別でも、私たちのレイナには変わりない」
エラはレイナの柔らかな髪を撫でながら、そうつぶやいた。
王は少し離れたところからその様子を見守り、静かに微笑んだ。
彼は今、この王国がかつてないほど強く、そして優しい光に包まれていることを感じていた。
その光の源は、たった4歳の、小さな少女の純粋な心から生まれていた。
レイナは眠りの中で、何か楽しい夢を見ているようだった。
時折、にこりと笑い、小さな声でつぶやく。
「みんな……えがお……」
窓の外では、満月が王国を優しく照らし、すべてが平和に包まれていた。




