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【連載版】聖女は3歳児でした  〜聖女誕生からレイナ成長記録〜  作者: ぶっくん


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第35話 聖女レイナ11歳篇 聖女祭

レイナ11歳の冬が訪れた時、王国は初めての「聖女祭」の準備で賑わっていた。


街には色とりどりのランタンが飾られ、人々の笑い声が冷たい空気を温かく包む。


アカデミーの生徒たちは、1年の学びの成果を披露する小さな発表会を開くことになり、子供たちは張り切って練習に励んでいた。


「レイナ先生!見てください、雪の結晶を暖かく保つ方法を考えました!」


今では背が少し伸びたエミリーが、手のひらに乗せた雪の結晶を見せた。

結晶は溶けることなく、微かに虹色に輝いていた。


「わあ、本当だ!どうやったの?」


「マルコム先生に教わった保温の魔法を少し応用して……」エミリーが得意げに説明し始めたその瞬間、結晶がプシュッと音を立て、小さな雪だるまの形に変形した。


「あっ!」


雪だるまはエミリーの手のひらの上でくるっと回り、ちっちゃな雪の腕を振った。


まるで「やあ!」と言っているようだ。


レイナは目を丸くした。

「エミリー、これ……予定通り?」


「ち、違います!」

エミリーが慌てて言った。

「保温だけのはずが、なぜか命が吹き込まれてしまって……」


その時、雪だるまがエミリーの指から飛び降り、庭の雪の上をコロコロと転がり始めた。


「待って!こら!」


エミリーが追いかけると、雪だるまはますます速く転がり、ちょうど庭の掃除をしていたジョンの足元にぶつかった。


「おおっ?なんだこれは?」


ジョンが驚いて見下ろすと、雪だるまは彼の靴の上によじ登り、小さな雪の手で靴ひもをほどき始めた。


「おいおい、やめてくれ!」


ジョンが足を振ろうとするが、雪だるまはしがみついて離れない。

その滑稽な光景に、窓から覗いていたマルコムが吹き出した。


「これはまた……『過剰な命の付与による雪結晶の擬似生命体化現象』か。記録せねば」


マルコムが羊皮紙を取り出すと、インク壺を倒しそうになり、慌てて押さえた。


レイナは笑いながら庭に駆け出し、雪だるまの前にしゃがみ込んだ。


「君、ずいぶん元気だね。でも、エミリーを困らせちゃだめだよ」


雪だるまはレイナを見上げ、小さな雪の頭をかしげた。そして、突然崩れ、普通の雪の山に戻った。


エミリーがほっと息をついた。

「すみません、レイナ先生。まだ制御が完璧じゃなくて……」


「大丈夫だよ」

レイナが立ち上がり、エミリーの頭を優しく撫でた。


「でも、発表会では、命を吹き込む前に、ちゃんと止め方を考えておいた方がいいかもね」


その夜、城の広間で発表会のリハーサルが行われた。


生徒たちはそれぞれがあ学んだ小さな癒しや、光の操り方を披露していた。


最後にエミリーが登場し、慎重に雪の結晶を暖かく保つ実演を始めた。今回は何事もなく成功し、拍手が起こった。


「よかったね、エミリー!」

レイナが小声で言った。


しかし、その時だった。舞台袖で待機していた他の生徒が、緊張のあまりくしゃみをした。


「ハクション!」


その勢いで、隣にいた少年が持っていた「永遠に枯れない花」の実験品にぶつかり、花びらが全部散ってしまった。


一瞬の沈黙の後、少年が泣きそうな顔で言った。


「ぼ、ぼくの花が……」


すると、エミリーが舞台から飛び降り、散った花びらに向かって手を差し伸べた。

優しい光が花びらを包み、ゆっくりと元の花に戻っていった。


「ごめんね、でも大丈夫。レイナ先生が教えてくれたよ。本当の癒しは、失敗した時こそ必要だって」


レイナは思わず胸が熱くなった。マルコムが隣でささやいた。


「見事です。彼女はあなたから最も大切なものを学び取りましたな」


発表会の後、レイナは生徒たちと城のテラスで温かいココアを飲みながら、冬の星空を眺めていた。


「先生、春が来たら、もっとたくさんのことを学びたいです」

エミリーが夢見るような目で言った。


「うん、きっとできるよ」

レイナが微笑んだ。

「だって、あなたたちはもう、私よりもずっと素敵な魔法を見つけているから」


「魔法って言わないでくださいよ、先生」

エミリーがふくれっ面をした。

「先生がいつもおっしゃるように、それはただ…みんなを想う気持ちですから」


レイナは笑いながら、エミリーをぎゅっと抱きしめた。


冬の夜空には星がきらめき、城の下では人々が聖女祭の準備に忙しく動き回っていた。


王国の冬は、今日も平和で、ちょっと可笑しくて、そして心温まる学びに満ちていた。


レイナはココアのカップをそっと握りしめ、思った。


(春が来ても、夏が来ても、この笑顔がずっと続きますように)


そして、彼女の願いは、優しい冬風に乗って、星明りの夜空へと消えていった。

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