第31話 聖女レイナ10歳編 退屈追放作戦
この成功を受けて、レイナは王宮全体に「退屈追放作戦」を実行に移した。
まずは財務省。
書類の山に埋もれ、げっそりしていた財務大臣のデスクに、レイナは小さな鉢植えを持って現れた。
「これ、お日様の花って言うんだ!窓辺に置いて、毎日お話してあげてね。そうしたら、書類仕事も楽しくなるよ!」
大臣は「はあ…」と怪訝そうな顔をしたが、レイナの真剣な瞳に負け、しぶしぶ窓辺に鉢を移動させた。
一週間後、財務省を訪れた王は目を疑った。書類の山は整理され、窓は開け放たれ、「今日の予算報告はどう思う?」と大臣はペンを走らせながら鉢植えに話しかけていた。
効率は驚くほど向上し、財務報告書は史上最速で完成した。大臣は「彼女(花)が一番の相談相手だ」と公言するようになった。
次は厨房。
退屈の霧の影響で創造性を失っていた料理人たちに、レイナは「目隠し食材当てゲーム」を提案した。
彼女が持ち込んだ様々な食材を目隠しで味見し、何かを当てるゲームだ。
最初は渋々参加した料理人たちも、次第に夢中になり、正解を当てた者から次の創作料理を考案する「創造性リレー」が始まった。
その日の夕食には、「星形フルーツのソースをかけたローストビーフ」や「氷香草の香り立つスープ」など、十数年ぶりの新メニューが並び、王族一同の舌を唸らせた。
衛兵たちは、見張り任務中に「雲の形当てゲーム」を始め(もちろん姿勢は崩さず)、注意力が向上。
侍女たちは、掃除しながら「謎解き物語」を創作し合い、宮殿の清掃度が格段に上がった。
書記官は、退屈な記録作業を「速記競争」に変え、処理時間が半減。
国王が最も驚いたのは、月例報告会議が、これまでの沈黙とため息から、笑い声と活発な議論にあふれる場に変わったことだった。
「レイナ、いったい何をした?」
国王が尋ねた。
「ただ、みんなが忘れていたことを思い出させただよ」
レイナは笑った。
「楽しむことを」
退屈の霧は、まだ完全には晴れていない。
しかし、王宮の窓からは明るい光が差し込み、廊下には笑い声が響き渡っていた。




