表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】聖女は3歳児でした  〜聖女誕生からレイナ成長記録〜  作者: ぶっくん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/32

第29話 聖女レイナ10歳編 退屈の霧と遊び心の魔法

レイナが10歳を迎えた頃、王国に新たな問題が発生した。


闇の瘴気は彼女の力でほぼ駆逐されていたが、今度は「退屈の霧」が出現し始めたのだ。


この霧に包まれると、人々は急にやる気を失い、趣味も仕事も「面倒くさい」と感じるようになる。


農民は畑を耕すのを忘れ、兵士は訓練をサボり、宮廷料理人は繰り返し同じスープを作り続けた。


「これは手強い」と老魔術師長マルコムは頭を抱えた。

「瘴気のように命を奪うわけではないが、王国の活力を徐々に蝕んでいく」


王座の間に集まった重臣たちは深刻な顔をしていた。


財務大臣は計算盤を前にため息をつき、騎士団長は鎧の上からあくびを噛み殺そうとしていた。


霧の影響はすでに宮廷にも及んでいた。


その時、ドアが勢いよく開き、レイナが飛び込んできた。

彼女は新しいスカート(緑と金色のしま模様)をひるがえし、少し息を切らせていた。


「おじいちゃん王様!庭の噴水で虹を見つけたよ!7色全部そろってた!」


王は困りながらも微笑んだ。


レイナの金色の巻き毛は腰まで伸び、茶色の瞳は幼い輝きを保ちつつ、どこか深みを増していた。


しかし、彼女の本質は変わらなかった。


王宮の廊下を駆け回り、庭で妖精と会話し、未だに重要な会議の最中に「おやつが食べたい」と宣言するのは、相変わらずのことだった。


「レイナ、今ちょうど『退屈の霧』のことを話しているところだ」


「ああ、あのくすくす雲のこと?」


レイナは玉座の横にある自分の専用椅子(もはや少し小さくなっていた)に座り、ぶらぶらと足を揺らした。

片手にはいつものぬいぐるみのウサギを抱えている。


「あれね、昨日西の森で遊んでたら出てきたよ」


全員が彼女を見つめた。


マルコムの眉間に深い皺が寄った。


「そ、そしてどうした?」と財務大臣が聞いた。

彼の声には、この厄介な問題に対する無力感がにじんでいた。


「うーん」レイナは考えながら、ウサギの耳をねじった。

「最初は確かに『あー、もう遊ぶの面倒だな』って思ったけど、でもね、霧がゆらゆら動くのを見てたら、すごく面白い形に見えてきたの」


「形?」とマルコムが眉をひそめた。

彼の長い白髭が震えた。

「霧に形が?」


「うん!くまさんの形とか、お花の形とか。それでレイナ、霧と遊ぶことにしたの」


レイナは椅子から飛び降り、広間の中央に立った。

重臣たちが交換する心配そうな視線をまったく気にしない様子で。


「こうやって、手をこう動かすとね」


彼女が優雅に手を動かすと、指先から淡い金色の光の糸が現れ、空中で複雑な模様を描いた。


それはこれまで誰も見たことのない魔法だった。儀式的でも学術的でもなく、純粋に遊び心から生まれた動きだった。


「霧がついてくるの!踊りみたいでしょ?」


その瞬間、窓の外から灰色の霧の一団が入り込んできた。


重臣たちが慌てて身構える中、霧はレイナの金色の光の糸に絡みつき、彼女の動きに合わせてゆらめき始めた。


くま、花、そして小さな竜の形へと次々に姿を変えていく。

「見て!霧さん、レイナの真似してる!」


マルコムは目を見開いた。

「そ、それは……霧をコントロールしている?」


「コントロールって難しいことじゃないよ」

レイナはくるりと回り、スカートをふわりと広げた。「霧さんはただ、退屈してただけなんだよ。誰も遊んでくれなくて」


財務大臣が咳払いをした。

「つまり、霧は……寂しかったと?」


「うん!だからレイナが遊んであげたら、とっても楽しそうだったの」


レイナの動きが止まると、霧はゆっくりと窓の外へと流れ出ていった。

その灰色は少し明るくなり、もはや重苦しい感じはなくなっていた。


広間はしばしの沈黙に包まれた。

重臣たちは呆然と窓の外を見つめ、次にレイナの無邪気な笑顔を見た。


マルコムがゆっくりと顔を上げ、白髭をなでながら言った。

「……我々は霧を『脅威』として分析し、排除する方法を考えていた。だが、この子は霧を『友達』として、遊び相手として見ていた」


王が深く頷き、目尻に笑みの皺を寄せた。

「そうだな。退屈の霧は、退屈していただけなのかもしれない」


マルコムはレイナを見つめ、これまでになく柔らかい表情で言った。「レイナ様、あなたは今日、我々に最も重要なことを教えてくれました。時に、最も複雑な問題の解決策は、最も単純な遊び心の中にあるということです」


レイナは首をかしげ、真剣な顔で答えた。

「難しいことわかんないけど……でも、みんなが笑ってるほうが絶対楽しいよね!」


その言葉に、重臣たちの顔から緊張がすっと消え、自然な笑顔が浮かんだ。


窓の外では、明るくなった霧が風に乗って軽やかに舞い、まるで王国全体がほっと息をついたように感じられた。


そしてレイナは、そろそろおやつの時間だと言い出そうとしていた。

王国の新たな危機は、遊び心と笑顔によって、またしても意外な方法で解決へと向かうのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ